阪神・淡路大震災の教訓 ― 誤嚥性(ごえんせい)肺炎を防ぐために

口腔ケア

避難所で口腔ケアの呼びかけ

阪神・淡路大震災では、口内に増殖した細菌が肺に入って引き起こす誤嚥性(ごえんせい)肺炎が原因で、避難所で生活する多くの高齢者が亡くなった。
誤嚥性肺炎は、細菌やウイルスが外部から体内に侵入して生じる一般の肺炎と異なり、口の中の細菌が原因となる肺炎である。
水や歯磨き粉が不足する生活の中で後回しにされがちだが、怠ると口の中に細菌が発生し、肺炎以外にも呼吸器感染症に陥る可能性が高くなる。ライフラインが断絶された避難所生活でも口腔の衛生状態を保つことが重要だ。

東日本大震災では、阪神・淡路大震災時を上回る約25万人が避難所生活を送っている。岩手県では、歯科医師会所属の歯科医師らが、被災者が身を寄せる避難所を回り、高齢者らを対象とした「口内衛生運動」に取り組んでいる。
災害時では、水の不足が考えられるが、できるだけ歯磨きやうがいなどの口腔ケアの実施が望まれる。


【災害時の口腔ケア】

◆うがいする水が不足している場合

チューブ入りの歯みがき剤で研磨剤を含むものは吸湿作用が強く、口の中に残ると乾燥を助長するため、うがいをしにくい状況では使わないようにする。歯ブラシを少量の水で濡らして磨く。また、液体ハミガキ(デンタルリンス)や洗口液が入手可能なら水だけよりも歯垢の除去に効果的。

◆歯ブラシを入手できない場合は

歯ブラシを入手できなければ、タオルやティッシュペーパーなどで歯の表面を擦って、できる限り歯垢を除去するようにする。液体ハミガキ(デンタルリンス)や洗口液を併用すると歯垢を除去しやすくなる。ただし、洗口だけでは、歯垢を除去することはできない。

◆入れ歯を使用している場合のケア

人前で入れ歯を外すのが恥ずかしい、水が不足しているなどの状況が考えられるが、毎食後、少なくとも1日に1度は外して洗うことが望ましい。
水が不足している場合の入れ歯の清掃法としては、食器洗い用のスポンジや使い捨ておしぼりのようなもので拭うのが良い。
部分入れ歯では、針金の部分など、複雑な構造をしていることが多いため、その部分は、歯ブラシや耳掃除用の細い綿棒などで清掃する。
入れ歯を浸けておく義歯洗浄剤を入手できれば、使用する。ただし、義歯洗浄剤を充分に洗い流してから、入れ歯を口に戻すようにする。
食器洗い用の中性洗剤で代用が可能。

(【災害時の口腔ケア】参考:日本口腔ケア学会


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