インプラントにしなければよかった! 老後起こり得るデメリット

インプラント治療では歯を失った箇所にインプラントというネジを顎の骨に埋め入れて人工歯を装着することで自分自身の歯を取り戻せます。。
ただ、インプラントも決して万能な治療法というわけではありません。

インプラント治療後にとても満足していても、老後に介護が必要になったときに大きなデメリットがあらわれる可能性があるのです。

インプラントを入れたことで老後に起こり得る、あまり知られていないデメリットをご紹介します。

更新日:2023/07/10

インプラント デメリット 老後

■目次

  1. 老後に歯を失ったときに受ける治療
  2. 要介護や寝たきりになってしまった場合
  3. 認知症になってしまった場合
  4. 老後に受けるインプラント治療の注意点
  5. インプラントは介護や寝たきりの時にメリットが多くある
  6. まとめ
  7. 記事監修

老後に歯を失ったときに受ける治療

インプラント デメリット 老後

2005年の厚労省の調査によると、後期高齢者の残存歯数は平均で約16本といわれています
(参考:e-ヘルスネット「歯の喪失の実態」)。

本来28本ある歯のうち、およそ半数近くが失われている計算になりますね。

歯を失ってしまった場合、そのまま放置というわけにはいきません。食事や会話、日常生活のあらゆる面で不便が生まれてしまいます。
失った本数が少ない場合はブリッジや小さな部分入れ歯、失った本数が多い場合は大きな部分入れ歯、すべての歯を失ってしまった場合は総入れ歯など様々な方法で失った歯を補います。

中でも、自分自身の歯のような噛み心地でより食べやすく、より自然な状態で補える方法がインプラント治療です。

しっかり噛めることがボケ(認知症)防止になるという報告もあり、歯を失った際に先を見据えてインプラントを選択する患者さんもいるでしょう。

しかし、先を見据えて入れたはずのインプラントが、老後に思わぬデメリットを招くことがあるのです。
どのようなトラブル・デメリットが起こり得るのかをみていきましょう。

要介護や寝たきりになってしまった場合

インプラント デメリット 老後

老後に要介護や寝たきりの状態になると歯科医院へ通院することが難しくなるため、インプラントを含めたお口の中のメンテナンスが歯科医院で行いにくくなってしまいます。
お口の中の衛生状態が悪化してしまうとインプラントの部分では「インプラント周囲炎」になる可能性が高まります。

インプラント周囲炎は歯周病と似た症状がインプラントの周囲に起こる疾患であり、発症すると顎の骨が溶けて、インプラントがぐらついてきます。
早めの発見と治療ができればインプラントを失う可能性が低くなりますが、歯科医院への通院が難しいと、インプラント周囲炎が発見されたときに既にインプラントがグラついてほとんど機能しておらず、インプラントの撤去が必要な状態にまで進行していることもあり得ます。

また、インプラントの撤去には専用の器具が必要です。
要介護や寝たきりになり、以前のかかりつけの歯科医院から訪問歯科を行っている歯科医院に変更した場合や、入居したホームに訪問する歯科医院によってはインプラントの除去に対応しておらず処置が受けられないこともあるのです。

認知症になってしまった場合

インプラント デメリット 老後

インプラント治療を受けていた患者さんが認知症になってしまった場合も思わぬデメリットがあります。

認知症の方は日々の口腔ケアの必要性が理解できなくなったり、うまく口腔ケアを受けられないケースも多く、その場合は要介護や寝たきりの場合と同様にインプラント周囲炎を引き起こす可能性が高くなります。

また、認知症になってしまった場合、日々のケアだけでなく歯科治療の必要性を理解できなくなる方も少なくありません。
すると、インプラントに不具合があったり除去が必要な際に、必要性を理解できず歯科治療を拒否する行動をとる可能性があります。

さらに、認知症の方は痛みがあるのに我慢し続けたりすることがあります。
認知症により何が痛みの原因か分からなくなっている場合、どこがどのように痛い、どうして痛いのかということを訴えることができなくなるのです。

そのため、歯科医院で診てもらった時にはインプラントはぐらついているが治療を拒否する、といった状態になりかねません。

老後に受けるインプラント治療の注意点

インプラント デメリット 老後

インプラントは外科手術を伴います。
高齢になってからもインプラント治療は可能ですが、患者さんの身体状態によっては治療を受けられないことがあります。

具体的には、高血圧や骨粗鬆症などの持病により服用している薬が原因でインプラント治療が適用できないケースや、外科手術に耐えられる体力がないので断念せざるを得ないなどです。

また、身体の代謝が落ちているため、インプラントを埋め込んだ箇所の顎の骨がインプラントとうまく結合しなかったり、高齢になるにつれて免疫も低下するため、外科手術を受けた場所の治りが悪く感染による悪化を引き起こしてしまうこともあります。

さらに、加齢や歯科疾患の影響で、骨が弱くなったり痩せて薄くなったりしていると、インプラントを埋め込むこと自体が難しくなります。
その場合は、事前に骨を増やす手術を行ってからインプラントを行う流れとなるので、手術に耐えられる体力が前提として必要です。

「高齢になって介護や寝たきりになった場合のためにインプラント治療を受けておきたい」とインプラント治療を検討する場合は、デメリットもよく知ってから決めることをおすすめします。

インプラントは介護や寝たきりの時にメリットが多くある

インプラント デメリット 老後

介護や寝たきりになった場合、認知症になった場合のインプラントのデメリットについて紹介してきましたが、もちろんメリットも多くあります。

例えば、お口のケアを周囲が介助する場合、インプラントであれば介助者は自分自身の歯の歯磨きと同じように、歯ブラシで磨くことでケアを行うことができます。

本来であればフロスによるケアも行いたいところですが、通常の歯磨きだけでも、何もケアできないよりはお口の中のトラブルをぐっと減らすことができるでしょう。

入れ歯の場合は、入れ歯を取り外してのケアが必要です。
しかし、入れ歯はインプラントに比べて痛みや違和感が出やすく、入れ歯のケアに対して拒否反応が出ることも少なくありません。

特に、入れ歯の取り外しに拒否が出ると、ケアをすることも難しくなりますよね。
その点、取り外しのいらないインプラントは介助者がまだケアしやすいといえるかもしれません。

また、取り外しをしないため、本人がどこかへ置いてきてしまったり、介助施設でうっかり紛失してしまうなどのトラブルを回避することにもつながります。

まとめ

60~70代になると歯を失う本数が増え、インプラント治療を選択する患者さんの数は多くなります。
インプラントは入れ歯に比べてしっかりとものを味わって噛むことができるため、脳への噛む刺激が十分伝わり認知症のリスクを下げられるかもしれません。

一方で、認知症などで要介護になるとインプラントにトラブルが起きた際に除去ができないなどのリスクが生じる可能性があり、デメリットもあります。
インプラント治療を検討する際には、10年後の将来、特に老後のことも視野に入れて検討してみてくださいね。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。