インプラント治療でのセカンドオピニオンのポイント
インプラント治療においては、医療機関によって精密検査の方法や手術方法、使用するインプラントの種類、上部構造(人工歯)の種類などが大きく異なるため、多くの選択肢があります。また、選択した方法や材料によって、治療期間や費用が変わってきますので、提案内容は担当する歯科医師によって様々です。診断や治療方針の説明を受けたうえで、自分の考え方と違いがあったり、迷いや不安がある場合は、セカンドオピニオンを活用してみましょう。
更新日:2021/12/02
■目次
セカンドオピニオンとは?
「セカンドオピニオン」とは、主治医以外の医師の意見を聞くことです。
これは、癌などの大きな治療を受ける場合、治療方法などの選択に迷ったときに、一つの医院だけではなく、他の専門家の意見を聞くことで、患者さんが納得できる治療や医師を選ぶことができるように考え出されたものです。
患者さんは専門的な知識がなく、医師の言う治療法が正しいのか解らないで悩むこともあります。そのため、患者さんが他の医師の意見を聞くことのできるセカンドオピニオンが生まれました。
不安なまま、納得できないまま治療をしてはいけません。後で後悔をする、というのも勿論ですが、ちゃんと信頼できる歯医者さんと良い関係を作らなくては、治療はうまくいかないのです。
主治医がどれだけ高い治療技術を持っていたとしても、患者さんが不安を抱いたままでは、高い治療技術を活かしても意味がありません。
特に、インプラント治療は期間が長く費用も高い治療になります。患者さん毎に治療が異なるため、公式のように正しい治療というものがあるわけではありません。
では実際に、セカンドオピニオンで何を聞いたら良いのでしょう。
セカンドオピニオンを受ける前に
セカンドオピニオンを受けずに、不安が取り除けることも考えられますので、まず初めに担当医から、次のことをしっかりと聞いておきましょう。
・自分の顎の骨の状態に問題があるか
・インプラント治療を受けられる健康状態であるか、全身疾患がある場合にはそれがインプラント治療に及ぼす影響
・適切な治療方法と、そのメリットやデメリット、リスクがあるか
・適切な治療方法以外を受けた場合にどのような影響がみられるか(※)
・それぞれの治療にかかる期間と費用
・インプラントや上部構造が外れた場合の対応、保証制度の有無
・メインテナンスにかかる費用と通院頻度
これらの説明を聞く中ででてきた疑問は、必ず担当医に確認しておきましょう。
セカンドオピニオンをとる場合は、担当医に伝え、書類を用意してもらうことが必要です。
※「適切な治療方法以外を受けた場合にどのような影響がみられるか」について
【例】骨が薄いと診断されたが、骨移植を受けずにインプラント治療を受ける方法を希望している。
<そのまま治療を受けた場合>
骨が少ない分、人工の歯が長く見え、見た目に影響が出てしまうことや、インプラントが早期に抜け落ちる確率が高くなることなどの懸念がありますが、費用を抑えたり、治療期間を短くできたりすることもあります。
<骨移植を選択した場合>
見た目や機能に問題がでることは少なくなるメリットがありますが、骨移植によるリスクが伴うことや、治療期間が長くなり、費用もかかることなどのデメリットがあります。
このようなことをきちんと把握しておくと、後に治療の選択がしやすくなるでしょう。
セカンドオピニオンで聞いておきたいポイント
1.口全体を見た意見
咬み合わせやバランスなど、歯の1本1本だけではなく全体を見た意見
2.専門的な意見
インプラント治療に精通した先生の意見
3.治療の反対意見
インプラント治療はすばらしい治療法ですが、誰にとっても最適の治療法とは限りません。他の治療法の方がよい、という場合もあるかもしれません。その根拠も踏まえているならば、反対意見であっても不振がらず聞いてみて良いと思います。
あらかじめ何を聞きたいかをメモするなどして、話を聞いてみましょう。
セカンドオピニオンで得られること
・提示された診断や治療方針について理解を深められる
・提示された診断や治療方針の妥当性を確認できた場合、担当の歯科医師を信頼して治療が進められる
・新たな治療方法を知り、治療の選択肢が増えることもある
・誤診を防ぐ
ポイント1
言い出しにくいこととは思いますが、勇気を出して担当医にセカンドオピニオンの希望を伝えましょう。紹介状やレントゲン写真を用意することができなかったとしても、相談を受けてくれる歯科医師も中にはいますが、データがないためごく一般的な意見になってしまうことが多いようです。
ポイント2
セカンドオピニオンを拒まれた場合は、患者様自身のことを第一に考えずに治療を進める可能性が高いため、他の施設で治療を受けることを検討されるとよいでしょう。
セカンドオピニオンの注意点
受ける前の注意点
・原則としては治療を受ける本人が対象となります。本人以外の方だけでセカンドオピニオンをとる場合は、その患者様の同意書が必要となることや、受けられないこともあります。
・相談時間に限りがありますので、聞きたいことの要点を事前にまとめておきましょう。
受ける際の注意点
・セカンドオピニオンをとりに行ったところで、相談内容をあまり聞かずに転院を薦めたり、安く治療できることをアピールしたり、治療を早期に行うことをそそのかしたりする歯科医師もいるようです。話をきちんと聞かない歯科医師の下での治療は、後にトラブルが生じやすいことが考えられますので注意しましょう。
・説明を受ける中で分からない専門用語がでてきたら確認し、分かりやすいように補足しながら説明することを求めましょう。
・セカンドオピニオンは医療保険の適用外ですので、医療機関によって金額が異なります。事前にホームページなどで費用がいくらかかるのかを確認することをお勧めします。
セカンドオピニオンを受けたら
セカンドオピニオンで得た情報や自分自身の考え方の変化を、基本的には担当医に報告しに戻ることになります。担当医に相談しながら、自分自身にとってよりよい治療方法を選びましょう。
セカンドオピニオンをとることは、インプラント治療について正しく理解することができ、また、担当医以外の意見を聞くことで自分の考えがまとまりやすくなることが期待できます。上手にセカンドオピニオンを活用して、これからの治療に役立てましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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