インプラントにしなければよかった! 老後に起こり得るデメリットは?
インプラント治療では、失った歯の箇所にインプラントというネジを顎の骨に埋め込み、人工歯を上に装着することで自分の歯の代用にできます。しかし、インプラントにはデメリットがあります。
インプラント治療に満足しても、老後に介護が必要になって寝たきりになったときなどにデメリットが出てきます。
インプラントをお口の中に入れたことで老後に起こり得る知られていないデメリットを紹介します。
更新日:2025/03/17

■目次
この記事のポイント

・お口の中の状態や持病によってはインプラント治療自体が適応外となる
・インプラントの清掃は天然歯の歯磨きと同じように歯ブラシで介助者がケアできるなどのメリットがある
インプラント治療後(老後)に潜むデメリットとは?
2005年の厚労省の調査によると、後期高齢者の残存歯数は平均で約16本です。28から32本ある歯のうち、半数近くが失われている計算になります。
歯を失った場合、放置というわけにはいきません。食事や会話など日常生活のあらゆる面で不便が生まれます。
公的医療保険治療の場合、失った歯の本数が少ない場合はブリッジや小さな部分入れ歯、失った本数が多い場合は大きな部分入れ歯、すべての歯を失ってしまった場合は総入れ歯など様々な方法で失った歯を補います。
中でも、自分自身の歯のような噛み心地が得られ、物が食べやすく、見た目が自然な治療方法がインプラント治療です。
しっかり噛めることがボケ(認知症)防止になるという報告もあり、歯を失った際に先を見据えてインプラントを選択する患者さんもいるでしょう。
しかし、先を見据えて入れたはずのインプラントが、老後に思わぬデメリットを招くことがあります。
どのようなトラブル・デメリットが起こるのでしょうか。
参考:厚生労働省
インプラント治療の老後に潜むデメリット①要介護(寝たきり)になった場合

老後に寝たきりなどで要介護になると歯科医院通院が難しくなるため、歯科医院でのお口のメンテナンスが難しくなってしまいます。
お口の中の衛生状態が悪化してしまうとインプラントの部分が「インプラント周囲炎」になります。
インプラント周囲炎とは歯周病と似た症状がインプラントの周囲に起こる疾患で、顎の骨が溶けて、インプラントがぐらつきます。
早めの発見・治療ができればインプラントを失う可能性が低くなります。歯科医院の通院が難しいと、インプラント周囲炎が発見されたときに既にインプラントがグラついて機能しておらず、インプラントの撤去がすでに必要な状態に進行していることもあります。
また、インプラントの撤去には専用の器具が必要です。
要介護になり、かかりつけの歯科医院の通院から訪問歯科に変更した場合にインプラント除去に対応しておらず処置が受けられないこともあります。
→インプラント周囲炎の詳しい症状については『インプラントにしなければよかった! 老後起こり得るデメリット』をご覧ください。
老後のインプラント治療に潜むデメリット②認知症患者が直面するリスクとは?
認知症の方は日々の口腔ケアの必要性が理解できなくなったり、うまく口腔ケアできないケースも多く、要介護状態の場合と同様にインプラント周囲炎を引き起こす可能性が高くなります。
また、認知症になってしまった場合、日々のケアだけでなく歯科治療の必要性を理解できなくなる方も少なくありません。
インプラントに不具合があったり除去が必要な際に、必要性を理解できず歯科治療を拒否する行動をとる可能性があります。
さらに、認知症の方は痛みがあるのに我慢し続けたりすることがあります。
認知症により何が痛みの原因か分からなくなっている場合、どこがどのように痛い、どうして痛いのかということを訴えることができなくなります。
インプラント治療の老後に潜むデメリット③外科手術を受ける健康状態か
インプラント治療は外科手術であり、健康状態が良好なことが重要でsy。老後は、一般的に体力や免疫力が低下し、持病を抱える方も多いです。これにより、手術に対するリスクが増すことがあります。
また、インプラント治療後はメンテナンスのための通院が必要です。通院の必要性がストレスになることがあるでしょう。特に移動が困難な方にとっては、大きなデメリットです。自分の健康状態やライフスタイルを十分考慮し、歯科医師としっかり相談することが大切です。
老後に受けるインプラント治療の注意点やデメリット

高齢になってからもインプラント治療は可能ですが、患者さんの身体状態によっては治療を受けられないことがあります。
具体的には、重い高血圧であったり骨粗鬆症などの持病による服用薬の問題でインプラント治療が適用できないケースなどです。
また、身体機能が低下しているため、インプラントを埋め込んだ箇所のインプラントが骨とうまく結合しなかったり、高齢になるにつれて免疫力も低下するため、外科手術を受けた場所の治りが悪く感染によるインプラント周囲炎を引き起こすこともあります。
加齢や歯周疾患の影響で、骨が痩せて薄くなると、インプラントを埋め込む手術自体が難しくなります。
その場合は、事前に骨を増やす手術をしてからインプラント治療を受ける流れとなります。
「高齢になって介護や寝たきりになった場合のためにインプラント治療を受けておきたい」とインプラント治療を検討する場合は、デメリットもよく知ってから決めることをおすすめします。
インプラントは介護(寝たきり)の時にメリットが多くある!
寝たきりなどにより介護状態になった場合、認知症になった場合のインプラントのデメリットを沢山紹介しましたが、インプラント治療にはメリットも多くあります。
例えば、介護者のお口のケアを介助する場合、インプラントであれば介助者は自分自身の歯の歯磨きと同じように、歯ブラシで磨くことでケア自体は可能です。
入れ歯の場合は、入れ歯を取り外してのケアが必要です。しかし、入れ歯は装着時の痛みや違和感が出やすく、入れ歯のケアに対して拒否反応が出ることも少なくありません。
特に、入れ歯の取り外しに拒否が出ると、ケアをすることも難しくなるでしょう。
取り外しのいらないインプラントは介助者がまだケアしやすいといえるかもしれません。取り外しをしないため、本人がどこかへ置いてきたり、介助施設でうっかり紛失してしまうなどのトラブルも回避できます。
まとめ
加齢により歯を失う本数が増え、インプラント治療を選択する患者さんの数も多くなります。
インプラントは入れ歯に比べてしっかりとものを噛むことができるため、脳への噛む刺激が十分伝わり認知症のリスクを下げられるかもしれません。
一方で、認知症などで寝たきり(要介護)になるとインプラントにトラブルが起きた際に除去ができないなどのリスクが生じる可能性があります。
インプラント治療は高齢者にとっても有効な選択肢ですが、老後のライフスタイルや健康状態も考慮して検討することが重要です。インプラント治療を検討する際には、10年後の将来、特に老後のことも視野に入れて検討しましょう。
記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
【PR】フィリップス ソニッケアー
歯科専門家使用率NO.1

あわせて読みたい記事
メディア運用会社について

株式会社メディカルネット(東証グロース上場)は、より良い歯科医療環境の実現を目指し、インターネットを活用したサービスの提供にとどまらず、歯科医療を取り巻く全ての需要に対して課題解決を行っています。
当サイト「インプラントネット」を通して生活者に有益な医療情報を歯科治療の「理解」と「普及」をテーマに、自分に最適な歯科医院についての情報や、歯の基礎知識、インプラントなどの専門治療の説明など、生活者にとって有益な情報の提供を目指しています。
インプラント歯科医院を探すなら「インプラントネット」
インプラント治療を行なっている歯科医院を、全国から簡単に検索できます。お近くのインプラント歯科医院をお探しの場合にもぜひご活用ください。