インプラント治療ができない?治療に不適応な疾患とは?禁忌について紹介!

インプラント治療ができない状況はなぜ起こるのでしょうか?インプラント治療は、すべての人が受けられるわけではありません。

インプラント治療前に患者さんのお口の中の状態と全身の健康状態が診査されます。治療を受けることができないインプラントに不適応な禁忌(きんき)ケースを紹介します。

更新日:2024/12/27

インプラント 禁忌

■目次

  1. この記事のポイント
  2. インプラント治療に適さない絶対的禁忌症とは?相対的禁忌症も解説!
  3. 1型糖尿病
  4. 免疫不全
  5. 放射線治療を受けている
  6. 血液疾患
  7. チタンアレルギー
  8. 子供
  9. 妊娠中
  10. インプラント治療ができる余地のある相対的禁忌症は?
  11. 2型糖尿病
  12. 顎の骨が少ない
  13. 骨粗鬆症
  14. 骨粗鬆症
  15. 薬剤関連顎骨壊死の症状とは?
  16. 注意喚起されている薬の種類
  17. 喫煙者
  18. 歯ぎしりの癖がある
  19. 「インプラント治療ができる」「インプラント治療ができない」まずは診断を
  20. まとめ

この記事のポイント

・インプラント治療はお口や身体の状態によって不適応の場合がある
・専門医の判断により治療可否が変わることがなある
・インプラント治療を受ける前に服用薬がある場合は必ず歯科医師に報告する

インプラント治療に適さない絶対的禁忌症とは?相対的禁忌症も解説!

インプラント 禁忌

絶対的禁忌症(ぜったいてききんきしょう)とは、インプラント治療が難しい(できない)疾患のことです。

また、成長中の子供や妊娠中の方もインプラント治療は避けるべきです。

本記事では、インプラント治療に適さない禁忌症例を紹介します。

1型糖尿病

1型糖尿病は基本的にインプラント治療の絶対的禁忌症です。糖尿病による免疫機能の低下で傷の治りが悪くなるためです。

細菌感染のリスクが高くなるだけではなく、術後の骨の治癒やインプラント体と骨との結合にも悪影響を及ぼす可能性があります。

インプラント治療後にインプラント周囲炎というインプラントの周りの組織に炎症が起こる疾患のリスクが高くなり、最悪の場合はインプラントが抜け落ちてしまう可能性があります。

免疫不全

免疫不全も絶対的禁忌症とされています。リウマチ、天疱瘡、膠原病などにかかっている方が服用しているステロイド薬が、骨の治癒やインプラント体と骨との結合に影響を及ぼすとされています。

放射線治療を受けている

放射線治療を受けている方(特に顎骨に放射線を照射している場合)は禁忌です。インプラント治療により顎骨骨髄炎を起こす可能性があるためです。

また、放射線治療後には唾液の分泌量の減少が起きることが多々あります。唾液の分泌が少なくなると、虫歯や歯周病が起こりやすくなり、放射線治療後にはお口の中の管理に十分注意が必要です。

血液疾患

白血病や血友病などの血液疾患も禁忌です。出血が手術時に止まらないなどのリスクが高いです。

チタンアレルギー

インプラント体にはチタンが主に使われているため金属アレルギーを引き起こす可能性があります。チタンは身体に優しい金属といわれているものの、必ずアレルギーを引き起こさないとは言い切れません。

金属アレルギーがある場合は、事前にパッチテストや血液検査を受けておくと良いでしょう。

*ジルコニア製のインプラント体の選択もできます。金属アレルギーが心配な場合は歯科医師に相談すると良いでしょう。

子供

インプラント治療は子供は対象外です。子供は顎の骨が成長して歯も動く時期にインプラントを埋め込んでしまうと、顎骨の成長に影響が出たり、インプラントの位置がズレるかもしれません。

妊娠中

妊娠中は基本的にインプラント治療を避けましょう。レントゲン撮影や麻酔、出血を伴う外科手術、術後に処方される抗生物質、痛み止めの薬などにより子供への悪影響が起こる可能性があります。

インプラント治療ができる余地のある相対的禁忌症は?

相対的禁忌症(そうたいてききんきしょう)とは、全身疾患に罹患している場合でも、専門医によって手術できると判断されればインプラント治療が可能になるケースです。

2型糖尿病

2型糖尿病は相対的禁忌症とされています。インプラント体を埋め込む手術を行う際、糖尿病がコントロールされていることが前提です。インプラント治療後も糖尿病がコントロールされていることが重要です。

顎の骨が少ない

インプラント治療では顎の骨が少ない場合「骨造成(こつぞうせい)」という骨を増やす手術が行われることがあります。顎の骨が少ない方がインプラント治療を受けると、インプラントと骨が結合しづらく、治療後に抜け落ちるリスクが高いためです。

→骨が足りていない場合に行われる骨造成治療については「インプラントの骨造成とは?メリット・デメリット、費用」の記事をご覧ください。

骨粗鬆症

骨粗鬆症の方も相対的禁忌症といわれており、必ず歯科医師に相談する必要があります。骨粗鬆症の治療薬の種類によっては「薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)」のリスクがあるためです。薬剤関連顎骨壊死とは、薬剤により顎の骨が腐って死んでしまうことです。

骨吸収抑制薬を長期服用することによって、古い骨が新しい骨に置き換わる働きが阻害されます。骨粗鬆症の治療薬の種類によっては、MRONJのリスクがある点は頭に入れましょう。

顎骨壊死は難治性のことが多いため、骨粗鬆症で服薬している方は注意しましょう。

→骨粗鬆症の方がインプラント治療に伴う副作用について詳しくは「骨粗鬆症の方がインプラント治療で注意したい副作用が起こるリスクとは?」の記事をご覧ください。

骨粗鬆症

骨粗鬆症の方も相対的禁忌症といわれており、必ず歯科医師に相談する必要があります。骨粗鬆症の治療薬の種類によっては「薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)」のリスクがあるためです。薬剤関連顎骨壊死とは、薬剤により顎の骨が腐って死んでしまうことです。

骨吸収抑制薬を長期服用することによって、古い骨が新しい骨に置き換わる働きが阻害されます。骨粗鬆症の治療薬の種類によっては、MRONJのリスクがある点は頭に入れましょう。

顎骨壊死は難治性のことが多いため、骨粗鬆症で服薬している方は注意しましょう。

→骨粗鬆症の方がインプラント治療に伴う副作用について詳しくは「骨粗鬆症の方がインプラント治療で注意したい副作用が起こるリスクとは?」の記事をご覧ください。

薬剤関連顎骨壊死の症状とは?

薬剤関連顎骨壊死の症状は、歯や顎の痛み、歯のぐらつき、顎のしびれ、歯肉の腫れや膿などです。重症化すると、お口の中に顎の骨が露出し、顎の骨が折れやすく、顎の外にある皮膚に穴が開いて膿が出るなどの深刻な症状が出る恐れもあります。

注意喚起されている薬の種類

2023年に顎骨壊死検討委員会が発表したポジションペーパーによると、骨粗鬆症の治療に用いる薬の中でも、「ビスホスホネート製剤」と「抗RANKLモノクローナル抗体」という2種類の骨吸収抑制薬については、顎骨壊死の注意喚起がなされています。

それに加えて、ヒト化抗スクレロスチンモノクローナル抗体、抗VEGF抗体、VEGF阻害薬、マルチキナーゼ阻害薬、チロシンキナーゼ阻害薬といった医薬品に関しても、顎骨壊死に関する注意喚起が行われています。

骨粗鬆症の治療薬を飲んでいる方はもちろんこと、上記の薬を処方される予定のある方も必ず歯科医師に相談しましょう。

参考:薬剤関連顎骨壊死の病態と管理: 顎骨壊死検討委員会ポジションペーパー2023

喫煙者

喫煙者でもインプラント治療を受けることは可能です。しかし、喫煙により血流が悪くなり、傷が治りにくく骨との結合にも影響が出るため禁煙が推奨されます。

→喫煙してもインプラント治療が問題なく受けられるのか心配な方は、「喫煙者もインプラント治療はできる?リスクや喫煙を止める方法も解説」の記事をご覧ください。

歯ぎしりの癖がある

歯ぎしりの癖がある方がインプラント治療を受けると、インプラント自体の破損やインプラント周囲炎というインプラントの歯周病を悪化させる可能性があります。

天然歯と顎の骨の間にはクッションの役割をする歯根膜という組織があります。しかし、インプラントにはクッションの役割をする歯根膜がないため歯ぎしりや食いしばりをした際、過大な力が加わりインプラントが抜け落ちてしまう可能性があります。マウスピースを用いた治療や生活習慣の改善が必要です。

「インプラント治療ができる」「インプラント治療ができない」まずは診断を

インプラント治療の前には、絶対的禁忌症・相対的禁忌症のそれぞれに該当するかを判断するため、必ず検査・診断が行われます。上記で挙げた以外の全身疾患にも注意を払い、インプラント治療に対するリスクの有無を確認し、治療が可能かを判断します。

何らかの疾患にかかっている、かかったことがある場合、必ず担当の歯科医師に相談しましょう。

また、服用薬の種類によっては治療前に服用を中止しなければいけない場合もあります。特に、ビスホスホネート(BP)製剤・抗RANKLモノクローナル抗体等はMRONJを起こすリスクが高い)ので、必ず報告しましょう。

まとめ

インプラント治療は失った歯を天然歯のような噛み心地で補うことができる治療です。

インプラント治療は外科手術が必要で、お口の中や全身の健康状態によっては受けることができない場合があります。

インプラント治療を受けたい場合、必ず歯科医師・医師に健康状態を相談し、服用薬や治療中の疾患を必ず伝えましょう。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。