インプラントの治療期間の平均はどのくらい?短くする方法はある?

「インプラント治療を検討しているが、治療期間が長いという話を聞いて二の足を踏んでいる。インプラント治療にかかる期間って、いったいどれくらいなの?」そんな疑問をお持ちの方はいませんか。

インプラントの治療期間は、治療箇所や本数などに応じて変化します。今回は、インプラント治療にかかる平均的な期間、治療期間を短くするために注意すべきポイント、治療期間の短縮につながる新たなインプラント治療方法、治療の流れについて紹介します。

更新日:2024/12/02

インプラント 治療 期間

■目次

  1. インプラントの治療期間の平均は?
  2. 治療期間を長くしないために気を付けたいポイント
  3. 治療期間の短縮が期待できるインプラントもある
  4. インプラント治療の流れ
  5. ①カウンセリング・精密検査
  6. ②事前治療
  7. ③インプラント埋入手術(一次手術)
  8. ④治癒期間
  9. ⑤インプラントの型取り
  10. インプラントの装着(二次手術)
  11. ⑦メンテナンス
  12. インプラント治療中は歯がない期間が発生する?
  13. まとめ

インプラントの治療期間の平均は?

インプラント 治療 期間

インプラントの一般的な治療期間は、3カ月~1年程度が目安です。また、上顎の治療を行う場合は、下顎よりも治療期間が長くなる傾向にあります。患者さんのお口の中の状況、埋入する本数、治療箇所などによって、治療期間は大きく変化します。

インプラント治療ではインプラントと骨の結合を待たなくてはならず、治療期間も長くなりがちです。さらに、土台となる人工歯根と、結合部となるアバットメントを設置してから人工歯を装着するという手順を踏むため、手術を完了させるまでに多くの手間が必要になるという点も、治療が長期化する要因の一つとなっています。


参考:北海道医療
大学病院

治療期間を長くしないために気を付けたいポイント

インプラントの治療期間は、手術後の行動に応じて長くなります。激しい運動、傷口に触れる、飲酒、夜ふかし、長風呂、喫煙といった行為は、骨の結合や傷口の治り具合などに悪影響を及ぼす可能性があるため、手術を受けてからしばらくは避けることが推奨されます。

喫煙はインプラント治療にとっての大敵です。タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素が血流や酸素の運搬を阻害し、インプラント体が歯周組織と結合する可能性を大きく低下させるからです。インプラント治療を行う際には、あらかじめ禁煙を成功させることが望ましいと考えられています。

治療期間の短縮が期待できるインプラントもある

近年に入ってから、親水性加工がなされた新しいタイプのインプラントが導入されています。親水性の高さは骨との結合を早めるため、インプラントが早期に抜け落ちるリスクを低下させることに加えて、被せ物(人工歯)の取り付けを早めることも可能です。

親水性加工されたインプラントを用いることで、治癒期間の短縮も期待できます。従来のインプラントであれば、埋入後の骨結合にはおよそ3~6ヶ月必要です。しかし、親水性インプラントを使用すれば、場合によっては3~4週間ほどで治療が終了するケースもあります。

インプラント治療の流れ

インプラントは治療期間が長いこともあり、治療の際には多くのステップが必要です。具体的な治療の流れとしては、状況に応じ以下の7つのステップを踏みます。

①カウンセリング・精密検査

インプラントの治療に先立ちカウンセリングをします。インプラント治療の基礎的な説明を患者さんに行い予算などをお伝えし、質問に回答します。

続いて、パノラマやCT検査によって、顎の中の血管・神経の状態や、残存する自然歯の状況に関する精密検査を受けます。この段階における通院回数は1~3回程度です。通院にかかる期間は早ければ1日、長い場合は2週間程度です。

②事前治療

患者さんが虫歯や歯周病を患っている場合、インプラントの治療前に治してコントロールする必要があります。糖尿病などの全身疾患を持っている人の場合も、状態を改善せずにインプラントの治療を受けることは一般的にできません。

喫煙習慣もインプラント治療の成功率を大きく低下させてしまうため、治療前の段階で禁煙を成功させることも求められます。そして、顎骨の量や厚みが不足している場合は、手術で骨の量を補うことが必要になってきます。

③インプラント埋入手術(一次手術)

手術によって歯肉を切開して顎の骨にインプラントを埋め込み、歯肉を縫合します。インプラントの手術には「1回法」と「2回法」という2つの種類があり、1回法では、人工歯根と接続部(アバットメント)が一体となった装置を一度の手術で埋入します。1回法の通院回数は1~2回、通院期間は1日~2週間程度が目安となります。

2回法は、足りない顎骨を足して待機する期間を設けたり細菌感染などのリスクが懸念される場合に行われます。1回目の手術で人工歯根を埋め込んで、お口の中に人工歯根が定着した後に、2回目の手術で接続部を取り付けていきます。2回法の通院回数はおよそ4~6回、通院期間は3~7カ月と、1回法に比べて治療期間が長くなりやすい傾向にあります。

参考:昭和大学歯科病院

④治癒期間

インプラント手術後は、インプラント体が顎の骨と接合するまでの治癒期間を設けます。期間の長さには、インプラントを埋めた部位や顎骨の質などによって個人差が生じます。一般的に、上顎であれば6カ月、下顎では3カ月ほどが治癒期間の目安となってきます。

⑤インプラントの型取り

インプラントが骨と結合し、歯肉の状態も回復したら、人工歯を製作するために必要なインプラントの型取りを、特殊な装置を用いて行っていきます。型取りに必要な通院回数は基本的に1回だけで、型取りから人工歯の完成までに必要な期間は1~3週間ほどです。

インプラントの装着(二次手術)

人工歯が完成したら、いったん仮歯を入れて噛み合わせなどの状態を確認したうえで、最終的な被せ物を装着します。最初に歯肉に埋まったインプラントのヘッドになる部分を露出させて、人工歯を接続できる状態にしてから、被せ物を装着して完了です。

一般的に、手術にかかる通院回数は1回のみで、手術からインプラントでものを噛むことができるようになるまではおよそ2~3週間程度になります。ただし、インプラントを埋め込む本数によって治療期間がさらに増加する可能性も出てきます。

⑦メンテナンス

インプラントを埋め込んだ後はメンテナンスが必要です。メンテナンスやセルフケアが不十分だと、インプラントの周囲にある歯肉が炎症を起こし、「インプラント周囲炎」の症状が生じて、装着したインプラントの破損や脱落を招いてしまう可能性があるからです。

個人差がありますが、1か月~半年に1回ほどのペースで定期検診を受けることによって、インプラントの寿命を大きく延ばすことが可能です。また、担当医からブラッシングの指導を受けて日頃から正しい歯磨きをして、お口の中を清潔に保つことも重要です。

インプラント治療中は歯がない期間が発生する?

インプラントの手術後には、歯肉の回復を待つための期間が必要です。埋め込んだ人工歯根の上に被せ物を装着することはできません。代わりに仮の歯を入れることができるため、歯がない状態で過ごす期間は基本的にほとんど発生しないことになります。

ただし、仮歯はプラスチックで作られているため、セラミックを用いた人工歯に比べて耐久性が大きく低下します。仮歯を使って日常生活を送る際には、歯応えがあったり、粘着力が強い食べ物を摂るのは控えたほうがよいでしょう。また、お口の中の状態に合わせて仮歯に修正を施す必要がある点も、治癒期間中に留意すべきポイントです。

まとめ

インプラントの平均的な治療期間は、およそ3~6ヶ月とされています。治療期間を短くするためには、激しい運動、飲酒、喫煙といった行為を避けることも大事です。また、親水性加工がなされた新しいタイプのインプラントを用いることで、治療期間を短縮できる可能性があります。

そして、インプラントは治療期間が過ぎたらそれで終わりではない点にも注意が必要です。インプラントを長く使うためにはメンテナンスが重要です。せっかく埋め込んだインプラントの寿命を保つためにも、定期検診とブラッシングによるセルフケアによって、お口の中の状態を清潔に保つことを心がけていきましょう。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。