インプラント手術で行われる全身麻酔(静脈内鎮静法)?麻酔の種類や費用を解説
失った歯を補うためのインプラントですが、「インプラントを顎の骨に埋め込む手術で使われる麻酔は何なのか」気になる方はいませんか。
外科手術に対する恐怖心は誰にでもあるものです。麻酔の種類は何か、どのように投与されるのか、どれくらい効き目が持続するのかなど、さまざまな疑問や不安について詳しく解説・回答します。
更新日:2024/11/07
■目次
インプラント手術は全身麻酔?
外科手術というと全身麻酔を思い浮かべる方も多いと思いますが、インプラント手術では全身麻酔はほとんどされません。
インプラント手術は歯肉を切開して顎の骨の一部に穴をあける侵襲も少なく短時間で終わる外科手術です。
インプラント手術でも、痛みに非常に敏感な場合やじっとしていることができない場合には全身麻酔が行われることもありますが、手術中の管理や入院が必要となり、治療費用も高額となります。
また、全身麻酔にはリスクも伴うため、積極的に使用されません。
インプラント手術で用いる麻酔の種類
インプラント手術の際にどのような麻酔が使われているのでしょうか。
インプラント手術で使用される「局所麻酔」と「全身麻酔(静脈内鎮静法)」、2種類の麻酔のそれぞれの特徴を解説します。
局所麻酔
外科手術をする部分に注射し、痛みを抑制したり感覚を麻痺させる麻酔を局所麻酔といいます。局所麻酔は「浸潤麻酔法」「伝達麻酔法」「表面麻酔法」があります。
浸潤麻酔法は、歯科では歯肉に麻酔薬を注入する方法が主流です。虫歯の治療でも使用されており、注射器を用いて歯肉に直接麻酔液を注入します。歯科治療で浸潤麻酔法を経験したことがある方も多いのでしょう。
浸潤麻酔法よりも広範囲に麻酔を効かせたい場合に用いられるのが伝達麻酔法です。浸潤麻酔よりも長い注射針を使用し、顎に通っている大きな神経の近くに麻酔液を注入して麻痺させることで、より効率的に麻酔させます。
歯科治療では、下顎の親知らずの抜歯、麻酔が効きにくい時など、しっかり麻酔を効かせたい時に使用されています。
表面麻酔法は、歯肉に麻酔薬を塗って表面だけを麻痺させる方法です。ほかの麻酔と組み合わせて使用することがほとんどで、麻酔をするための注射針を刺す痛みを緩和するといった弱い麻酔です。
インプラント手術では局所麻酔をせずに治療を行うことはしません。局所麻酔の費用はあらかじめ治療費に含まれています。
局所麻酔では手術中の押されるような感覚や振動、器具の音、手術中の意識はなくならないため、治療に対する恐怖を感じることがあります。
静脈内鎮静法
静脈内鎮静を受けると意識がぼんやりし、リラックス効果が期待できます。完全に意識を失うわけではなく、医師の呼びかけには反応できるなどぼんやりとした状態です。
手術の恐怖心を和らげたい場合に適していますが、痛みはなくならないため局所麻酔と併用して使用します。
呼吸管理や入院せずに受けられることが多いでしょう。
手術後は1日中眠気を感じるため、車やバイクを運転して帰ることはできません。
麻酔はどれくらいで切れる?
麻酔の持続時間は代謝スピードなどの個人差が大きいですが、浸潤麻酔法は約2時間~3時間、伝達麻酔法は約4時間~6時間、表面麻酔法は約10分~20分で切れます。
静脈内鎮静法は、麻酔薬の点滴を止めれば意識がはっきりし始めるでしょう。治療後は意識がはっきりするまで少し休憩してから帰宅します。
静脈内鎮静法では意識がはっきりしてからも、治療部位には局所麻酔が効いています。麻酔が切れるまでは会話や口腔内に違和感を感じることがありますが、局所麻酔が切れれば解消されるでしょう。
インプラント手術後の痛みを抑えるポイント5つ
麻酔が切れた後の痛みも気になるところです。そこで、インプラント手術後の痛みをできるだけ抑えるためのポイントを紹介します。
喫煙を控える
タバコに含まれるニコチンは、血流が悪くなり白血球の機能を低下させるため治療した部位が細菌感染しやすくなります。また、タバコの煙に含まれる一酸化炭素は、酸素を運ぶ機能を低下させてしまい、骨や歯に十分な栄養が行き届かなくなります。
喫煙者は非喫煙者よりも歯周病やインプラント周囲炎にかかるリスクが高く、治療部位に痛みが生じやすい傾向がありますインプラント周囲炎では、インプラントを支える顎の骨が脆くなり、インプラントが抜け落ちてしまう恐れもあるのです。
固い食べ物を避ける
インプラント手術をした後に固い物を食べると、出血したり傷口が裂けたりする恐れがあります。また、刺激物やお餅、ガムなども痛みや出血の原因となるため注意が必要です。
インプラント手術の痛みが落ち着くまでは、おかゆ・豆腐・ヨーグルトといった軟らかい物を食べるようにしましょう。
あまり熱い食べ物や飲み物も推奨されていません。
飲酒や入浴を控える
アルコール摂取や入浴によって血流が促進されると、血が固まる働きが阻害され、傷口の治りが遅れてしまいます。
インプラント手術後2日~3日は飲酒や入浴を控えるようにしましょう。同様に、運動などの体温が上がる行為は避けたほうが良いといえます。
また、アルコールを摂取すると脱水症状を起こしやすくなり、自浄作用や抗菌作用がある唾液の分泌量が少なくなります。すると、歯周病やインプラント周囲炎にかかるリスクが高まるため注意が必要です。
歯ブラシで患部を磨かない
抜糸するまでは、治療部位を歯ブラシで傷つけないように注意しましょう。歯ブラシが当たるだけでなく、歯磨き粉や洗口液も傷口に刺激を与えてしまうため、抜糸するまでは何もつけずに歯磨きを行いましょう。
そのほか、うがいによっても出血してしまう恐れがあるため、軽く口をゆすぐ程度に留めると良いです。
痛み止めを飲んでしまう
術後2~3日の痛みは、無理に我慢し続ける必要はありません。服用の間隔を守りつつ、痛み止めを飲んで安静に過ごしてはいかがでしょうか。
ただし、薬が必要な痛みが3日以上にわたって続く場合、痛み止めを飲んでも非常に強い痛みを感じる場合は、担当医師に連絡しましょう。
まとめ
インプラント手術では局所麻酔を行なうため、手術中に痛みを感じることは基本的にありません。ただし、局所麻酔は意識がはっきりとしているため、手術中の音に恐怖心を抱いたり、手術が終わるまでの時間が長く感じたりする場合もあります。
そこで、恐怖心を和らげるために、静脈内鎮静法が登場します。気になる方は担当歯科医師に確認しましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
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