顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)の手術費用について|インプラントのメリットも紹介
顎骨骨髄炎は歯と一緒に顎骨を除去する手術が必要になるケースがある病気です。歯がなくなるので、人工歯を入れることになります。
顎骨骨髄炎によって骨や歯を失った場合、どのような治療方法があるのでしょうか。手術の費用、歯がなくなったあとに入れる人工歯について紹介します。
更新日:2024/10/31
■目次
顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)とは
細菌の感染により顎骨が炎症を起こしている状態を「顎骨骨髄炎」といいます。炎症を起こしている部位や周囲の歯が動揺し、痛みや発熱などの症状があらわれ、顎にしびれや麻痺が起きるケースがあります。虫歯や歯周病の悪化によるものが最も多いため、普段からお口の中を清潔にすることが大切です。
炎症が広範囲にわたり骨が壊死した場合は、患部となる顎骨の部分切除を行い、金属プレートでの再建することが検討されます。
→顎骨骨髄炎の症状や詳しい原因については「顎骨骨髄炎はどんな症状?3つ原因」をご覧ください。
顎骨骨髄炎の手術にかかる費用
顎骨骨髄炎を治療する際に壊死した骨を切除することがあります。手術のため金額は決して安くなく、約1,000,000円以上かかることがあります。
2024年6月 株式会社メディカルネット調べ
顎骨骨髄炎の人はインプラント治療が公的医療保険適用となる
顎骨骨髄炎によって顎骨や歯を失うと、噛み合わせが悪くなり食べ物を噛めなくなってしまいます。何らかの治療によって代わりの歯を補う必要があります。
顎の欠損については公的医療保険治療の範囲で入れ歯などで補っていましたが、入れ歯が安定しにくいのが大きな欠点でした。一般的に自費診療であるインプラント治療が、こうしたケースには公的医療保険が適用され、費用を抑えた形で噛み合わせを整えることができます。
顎骨骨髄炎による歯と顎骨の喪失によるインプラント治療で公的医療保険を受けられる条件は、次のとおりです。
・顎骨や歯槽骨が広範囲にわたり欠損している。
・これらが骨移植などにより再建された症例である。欠損範囲は、上顎は連続した3分の1程度以上の顎骨の欠損または上顎洞、鼻腔への交通が見られる欠損である。下顎は連続した3分の1程度以上の歯槽骨の欠損、下顎区域切除以上の欠損である。
次のような症例もインプラント治療を保険診療で受けられる条件です。
・外胚葉異形成症や唇顎口蓋裂などの先天性疾患であり、顎堤形成不全である。
・外胚葉異形成症などの先天性疾患であり、連続した3分の1顎程度以上の多数歯欠損である。
・6歯以上の先天性部分無歯症または3歯以上の前歯永久歯萌出不全であり、連続した3分の1顎程度以上の多数歯欠損である。
東北大学病院
公的医療保険適用でインプラント治療を受けられる医療機関は限られている
インプラント治療を公的医療保険診療で受けられる条件が揃っていたとしても、受け入れられる医療機関は限られています。
医療機関の条件は、次のとおりです。
・歯科、または歯科口腔外科を取り扱っている公的医療保険医療機関である。
・当直体制が整備されている。
・2名以上の歯科医師(歯科もしくは口腔外科の経験が5年以上ある、またはインプラント治療の経験を3年以上もっている)が配置されている。
・医療機器や医薬品などが適切な体制で管理されている。
・病院である。
インプラント治療とは
歯を喪失した場合の治療方法のひとつで、人工歯根を顎骨に埋入して人工歯を固定する治療です。インプラントは、基本的に上部構造(人工歯)、アバットメント(支台部)、インプラント体(歯根部)の3つで構成されています。インプラント体は多くの場合、チタンとよばれる金属が材料になっています。チタンは体になじみ、骨と結合しやすい素材です。上部構造はセラミックやジルコニアを入れることが多く、見た目が自然になります。
自分の歯と同じような感覚で噛める
取り外しができる入れ歯と違い、人工歯根でしっかり歯が固定される治療です。まるで自分の歯のように強く噛めるようになります。慣れるまでに少々時間がかかるものの、なじんでくると硬いものも自然に噛むことができます。
審美性に優れている
公的医療保険適応の部分入れ歯は金属の針金(クラスプ)を使うので、装着したときに目立ってしまいます。インプラント治療はこうした部品を使用せず、人工歯根で固定するため見た目が自然になります。また、上部構造をセラミックのような白く透明感のある素材で作った場合は、天然歯の色合いに寄せて調整できます。
周囲の歯にかかる負担が少ない
部分入れ歯はクラスプを引っ掛ける歯に負担がかかり、ブリッジも固定源となる健康な歯を大きく削らなければなりません。インプラント治療は人工歯根で固定するので、周りの天然歯に負担をかけず、削る必要もありません。
インプラント治療のデメリット
さまざまなメリットがあるインプラント治療ですが、デメリットもあります。メリットとデメリットの両方を理解することで、治療をしっかり検討できます。
インプラント周囲炎のリスクがある
インプラントの周りの組織は、細菌によって炎症が広がりやすいやすいです。炎症が進行するとインプラントを支えている骨にも拡大し、インプラントが動揺してしまう可能性があります。しっかり清掃をしていなければ歯周病と同じような症状が急速に進行してしまうため、日頃からのケアや定期検診を受けることが大切です。
手術が必要になる
インプラント体を顎骨に埋入するための手術が必須です。歯肉の切開を行うので、体への負担がある程度かかります。
治療期間が長い
入れ歯やブリッジに比べると、インプラント治療は3ヵ月~1年と長い期間が必要です。インプラント体を埋入したあとに治癒期間を設定するなど、ほかの治療に比べると長い時間がかかります。顎骨が足りない場合には骨造成の治療を検討することもあるので、さらに長引く可能性があります。
インプラント治療は医療費控除の対象になる
一般的には自費診療となるインプラント治療ですが、医療費控除の対象になります。1年間の医療費が100,000円(その年の総所得が2,000,000円未満の方は総所得の5%)を超えた場合に控除を受けられるシステムです。
ただし、保険金から補てんされる金額がある場合は、医療費から差し引いて申請します。インプラント治療は高額な治療ではありますが、確定申告により負担を軽減できます。
参考:オーラルヘルスオンライン
まとめ
顎骨骨髄炎により骨が壊死した場合、手術には1,000,000円以上かかることが考えられます。歯がない状態を人工歯で補う治療も必要です。このとき、保険診療で受けられるのがインプラント治療です。
インプラント治療は残っている歯への影響がなく、しっかり固定できるなど、さまざまなメリットがあります。顎骨骨髄炎やインプラント治療についてもっと詳しく知りたい方は、歯科医院で相談してみましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
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