インプラントを4項目で比較!形状、構造、治療法の違いとは?
インプラントにはさまざまな種類があるけど、治療を受けてから後悔したくないしどの方法で治療をするのが一番いいの?
患者さんにとって適した方法でインプラント治療を進めるためには、インプラントの種類について知ることが不可欠です。今回は「形状・構造・材料・治療法」という4つの項目に分けて、インプラントの種類の具体例やその内容の比較について紹介していきます。
更新日:2024/10/10
■目次
インプラントの基本的な構造
インプラントは3つの装置によって構成されており、いずれの装置も重要な役割を担っています。この項目では、3つの装置に関する説明や具体的な役割の紹介します。
インプラント体(人工歯根)
インプラント体は歯が抜けた部分の顎骨の中に埋め込まれる装置であり、歯根の代わりとなる部分です。その役割から「人工歯根」とも呼ばれ、インプラントの上部構造(被せ物)を支えるという重要な性質を持っています。
インプラント体の材質としては、チタンやチタン合金が多く使用されています。また、ネジのような構造をしている「スクリュータイプ」と呼ばれる種類が現在の主流であり、それに準じた見た目をしていることが多いのも特徴です。
アバットメント
アバットメントは、骨に埋め込んだインプラント体と人工歯をつなぐ装置です。アバットメントはネジに近い形状の非常に小さな部品であり、インプラント体に取り付けることでインプラントの高さを調整する役割も担っています。
インプラントの高さは、埋入された角度や歯肉の厚みによって変わります。そのため、状況に応じてアバットメントの種類や形状を選択して使用します。
上部構造(人工歯)
上部構造とは、インプラントの一番上に装着される人工歯のことです。天然歯(自分自身の歯)に近い色に仕上げることにより、インプラントであると気づかれないような自然な見た目にすることができるでしょう。被せ物に使用する素材は歯科医院によって様々ですが、オールセラミックやジルコニアであれば、より天然歯に近い仕上がりになるでしょう。
インプラントは奥歯の場合はしっかり噛みしめるためかかる負担が大きく、前歯の場合は見た目が目立つという理由でも、セラミックやジルコニアなどの頑丈で色彩の調整ができる材質が使用されることが多いでしょう。奥歯の場合は、金属の人工歯を採用している歯科医院もあります。
インプラントの種類で比較すると?
インプラントには、装置の形状・構造、装置に使用する素材、治療の方法など、さまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。
インプラントの形状の違いで比較
インプラント体には大きく分けて3つの種類があり、いずれもメリットとデメリットが異なります。それぞれの特徴についてみていきましょう。
スクリュータイプ
スクリュータイプは、インプラント治療において使用される頻度が高い手法です。ネジに近い見た目をしており、回転させながら顎骨に埋め込みます。
ネジのような構造にすることで、従来のものよりも顎骨と強固にくっつくといわれています。
シリンダータイプ
シリンダータイプは円筒形の装置で、ハンマーで打ち込んで埋入します。簡単に骨に埋め込める点がメリットです。
しかし、接着面積が小さく固定が弱くなりがちなことと、2度の手術が必要になることがデメリットであるといわれています。
バスケットタイプ
バスケットタイプはネジの側面に穴が空いており、中心部が空洞になっている装置です。空洞の中に骨の一部を埋入することが可能なため、理論上は結合が非常に強いそうです。
しかし、現在はほぼ採用されていません。
インプラントの構造の違いで比較
インプラント全体の構造には、大きく分けて2つの種類があります。
ワンピースタイプ
ワンピースタイプは、インプラント体とアバットメントが一体化している構造です。手術の回数を1回に抑えられるため、患者さんの負担を軽減できる点が強みです。
しかし、顎骨の厚みや強度に問題がある場合は適用できません。また、アバットメントが故障した場合はインプラント体ごと除去してやり直すことになります。
参考:テーマパーク8020
ツーピースタイプ
ツーピースタイプはインプラント体とアバットメントが分かれており、2つの装置をネジで連結させる構造です。仮にアバットメントが故障してもインプラント体はそのまま使用できる可能性が高いほか、顎骨の状態が多少悪くても適用できる点がメリットです。
一方で、手術が2回必要になる影響で負担や治療期間が増大し、治療費も高額になることがデメリットとなります。
インプラントの材料の種類で比較
インプラント体、アバットメント、上部構造はそれぞれ、さまざまな素材を使用して作成されています(素材はインプラントのメーカーや歯科医院などによって異なります)。
インプラント体の材料の種類
インプラント体の材料には、主にチタンとチタン合金の2種類が使われています。チタンは金属アレルギーが起こりにくい特性があり、親和性が高いことが特徴です。親和性が高ければ高いほど顎の骨と結合がスムーズに進む(身体の拒否が起こらない)と考えられており、インプラント体に向いた材質であるとされています。
金属アレルギーの心配が強くチタンが使用できない患者さんに対しては、ジルコニア製のインプラントを使用することもあります。ジルコニアであれば金属アレルギーの可能性を気にせずに治療することが可能ですが、対応している歯科医院の数は少ないといわれています。
アバットメントの材料の種類
アバットメントは主にチタン、チタン合金、ジルコニが使われており、稀に金合金やセラミックも使用されることがあります。
アバットメントは埋め込んだインプラント体と同じメーカー・同じ規格であることが必須です。チタンや金属製のアバットメントはセラミックの被せ物から透けて見えることもあり、被せ物にとにかく透明感が欲しい場合はジルコニアを選ぶ、などインプラント体と同じメーカー・同じ規格の中で選択していきます。
上部構造の材料の種類
上部構造(被せ物)は天然歯の被せ物同様、さまざまな素材が使用されています。オールセラミックやジルコニアセラミック、ジルコニアが多く使用されていますが、メタルボンドやレジン、金属など患者さんのお口の状態や費用によって選択します。
オールセラミックやジルコニアセラミック、ジルコニアは色の調整がしやすかったり透明感を得られるなど、より天然歯に近い見た目にすることができるでしょう。噛む力が強い場合は、壊れにくいよう強度を重視し、ジルコニアやメタルボンド(内側が金属で外側がセラミックの被せ物)などを選ぶことが多いでしょう。
それぞれの素材により費用が異なるケースもあるので、見た目と機能、そして費用を合わせて歯科医師に相談するとよいでしょう。
インプラントの治療法の種類で比較
インプラントの治療法は、どの患者さんでも同じ手順で行われるわけではありません。使用するインプラントや患者さんのお口の状態に合わせて、それぞれに合わせた手順で行います。
人工歯の直接接続
人工歯の直接接続とは、歯科用セメントやスクリューを使って、インプラント体と上部構造を一体化させる方法です。
アバットメントを使用せず人工歯とインプラントだけで構成されるため、後からトラブルが起こっても取り外すことができないことが懸念点だといわれています。
即時荷重法
即時荷重法とは、インプラント手術と同時か、もしくは1週間以内に上部構造を装着する方法です。
顎骨が硬く、厚みや量も十分に存在していてインプラント体の初期固定が十分であると判断された場合は、即時荷重法を用いることで治療期間を短縮できます。
All-on-4(オールオンフォー)
All-on-4(オールオンフォー)は、片顎に4本のインプラント体を埋め込み、その上に前歯から奥歯までを補う入れ歯のような被せ物を装着する方法です。4本のインプラントだけで12本の歯を作り出すことができるため、多くの歯を失った場合に効果的です。
1本ずつ埋入すれば12本のところを4本で治療できるため、手術の負担や費用を抑えることができるのがメリットです。ただし、治療の難易度が高く対応している歯科医院が限られています。
まとめ
インプラントと一口に言っても、形状や構造、材料などによって、その種類は変化します。形状・構造・材料・治療法といったように、相違点は非常に多岐にわたるため、さまざまな手法があることを踏まえたうえで、患者さんにとって適した選択肢を見つけていく必要があります。
また、必ずしも患者さんの希望を聞くだけでなく、お口の中の状態を確認したうえで、客観的に見て適切と考えられるものを選ぶ必要がある点にも注意が必要です。そのため、インプラント治療をお考えの方は、歯科医院に足を運んで専門医と相談したうえで、自分に最も適したアプローチを取れるようにしていきましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
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