インプラント治療の骨移植|メリットやデメリット、種類、費用を解説

歯科医院でインプラント治療について相談した際に、「骨移植が必要」といわれて驚いた方はいらっしゃいますか。歯科医師から説明を受けたものの、急なことでよく理解できなかったという方も多いです。

この記事では、インプラント治療における骨移植について詳しく解説します。メリット・デメリットや骨移植にかかる費用なども紹介しますので、ぜひ参考になさってください。

更新日:2024/08/26

インプラント 骨移植

■目次

  1. インプラント治療における骨移植とは
  2. 骨移植をしないとどうなる?
  3. インプラント治療における骨移植のメリット
  4. インプラント治療における骨移植のデメリット
  5. 追加費用が発生する
  6. 治療期間が長くなる
  7. インプラント治療における骨移植の種類
  8. GBR法(骨再生誘導法)
  9. ソケットリフト
  10. サイナスリフト
  11. ベニアグラフト
  12. オンレーグラフト
  13. インプラント治療の骨移植に用いられる骨の種類
  14. 自家骨
  15. 人工骨
  16. 異種骨
  17. インプラント治療の骨移植にかかる費用
  18. インプラント治療・骨移植が公的医療保険適用となるケース
  19. まとめ

インプラント治療における骨移植とは

インプラント 骨移植

インプラント治療では、顎の骨にインプラント体(人工歯根)を埋め込む手術が行なわれます。しかし、歯を失ったまま長期間放置していたり、歯周病が進行していたりすると、顎の骨の吸収も起こっています。顎の骨が足りないとインプラント体を埋め込めないため、インプラント治療ができません。

顎の骨が足りない方も、骨移植によりインプラント治療が可能になる場合があります。

骨移植をしないとどうなる?

インプラント治療では、インプラント体と顎の骨が結合することで快適な噛み心地を得られます。顎の骨が足りない状態でインプラント体を埋め込むと、結合が不十分となり、インプラント体がぐらついたり抜け落ちたりする可能性があります。

また、顎の骨が足りないと、インプラント埋入手術の際に「上顎洞」という空洞の粘膜に穴をあけてしまったり、上顎洞内にインプラント体が迷入してしまうリスクがあるのです。

インプラント治療における骨移植のメリット

骨移植によって顎の骨の量を増やすことができれば、インプラント体を埋め込める可能性が高まります。また、骨移植で口元の審美性が向上する点もメリットです。

インプラント治療における骨移植のデメリット

インプラント治療で骨移植をする際は、以下のようなデメリットも事前に把握しておくことが大切です。

追加費用が発生する

骨移植はインプラント治療とは別で、治療が必要な方にのみ適応されます。そのため、インプラント治療の費用とは別に、目安として100,000~300,000円ほどの追加費用が発生します。

2024年4月 株式会社メディカルネット調べ

治療期間が長くなる

骨移植はインプラント治療の前に受けることが多く、移植した骨が定着するまで3~6ヶ月ほどの待機期間が発生します。定着後にインプラント治療を開始するのが一般的であるため、治療期間が長くなります。

インプラント治療における骨移植の種類

骨移植には以下のような種類があり、患者さんのお口の状態に合った治療法が適応されます。

GBR法(骨再生誘導法)

骨を増やしたい部分に自家骨などを入れ、メンブレン(膜)で覆うことで、骨が作られるのを促します。

ソケットリフト

上顎奥歯の上顎洞付近の顎骨の量を増やす治療法です。上顎洞の底の粘膜を持ち上げ、空いたスペースに自家骨などを入れます。打ち込むのが上顎の奥歯でインプラント体1本分の骨移植であれば、ソケットリフトが適しています。

サイナスリフト

ソケットリフトと同様に、上顎洞の底の粘膜を持ち上げて、空いたスペースに自家骨などを入れます。顎の骨を多く増やしたい場合には、ソケットリフトよりもサイナスリフトが適しています。

ベニアグラフト

骨を増やしたい部分に、他の部位から採取したブロック状の自家骨を移植する治療法です。上顎の前歯の骨を増やす場合などに適しています。

オンレーグラフト

他の部位から自家骨をブロックで採取し、骨を増やしたい部分に移植します。奥歯の骨が広範囲にわたって足りない場合によく用いられる治療法です。

インプラント治療の骨移植に用いられる骨の種類

インプラント 骨移植

骨移植を行う際には、さまざまな骨が用いられます。主な骨の種類を紹介します。

自家骨

患者さん自身の骨のことです。口腔内から採取します。自分の骨のため、拒否反応が起きにくく、感染リスクも低いことが特徴です。ただし、手術で身体的な負担がかかり、採取できる量には限りがあります。

人工骨

人工的に作られた骨で、感染リスクが低く、多くの量を確保することも可能です。しかし、骨移植を行なっても骨の置換が十分に行なわれない可能性があります。

異種骨

牛など、人間以外の動物から採取した骨のことです。自家骨を採取するような手術の身体的負担がありません。動物の骨を化学処理したうえで使用しますが、拒否反応や感染リスクが高い点は否めません。

インプラント治療の骨移植にかかる費用

インプラント 骨移植

骨移植にかかる費用の目安としては、GBR法(骨再生誘導法)は100,000~150,000円ほど、ソケットリフトは50,000~100,000円ほど、サイナスリフトは150,000~300,000円ほど、ベニアグラフト・オンレーグラフトは100,000~300,000円ほどです。

また、インプラント治療・骨移植は、原則として公的医療保険適用外となります。費用は高額になりますが医療費控除の対象となるため、確定申告を行なえば所得税が還付されます。

2024年4月 株式会社メディカルネット調べ

インプラント治療・骨移植が公的医療保険適用となるケース

外傷や腫瘍などによって顎の骨を大きく失った場合や、先天的に歯や顎の骨を大きく欠損している場合などは、インプラント治療・骨移植が公的医療保険適用となります。ご自身の治療が公的医療保険適用となるかどうかは、歯科医院にてご確認ください。

公的医療保険適用で治療ができる医療機関の条件

以下のような条件を満たしている医療機関でないと、公的医療保険適用でインプラント治療を行うことができません。

・入院用ベッドが20床以上ある病院の歯科または歯科口腔外科
・当直体制が整備されている
・歯科または歯科口腔外科において5年以上の治療経験、または3年以上のインプラント治療経験のある常勤医師が2名以上配置されている
・安全確保のために、医療機器や医薬品の管理体制が整備されている

参考:女子医科大学歯科口腔外科

まとめ

顎の骨が足りない場合、インプラント治療を開始できません。骨移植は顎の骨の不足を解消し、インプラントを埋め込めるようにするための治療法です。

骨移植にはメリットもある一方で、追加費用の発生や治療期間の長期化といったデメリットもあります。また、治療にかかる費用は基本的に全額自己負担となる点にも注意が必要です。

この記事で、インプラント治療の骨移植に対する疑問や不安が少しでも解消されれば幸いです。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。