インプラントの骨造成とは?メリット・デメリット、費用
「インプラント治療に骨を増やす治療(骨造成)が必要だと言われたけれど、どういう治療法?どのくらい費用が高くなる?」など気になりますよね。
骨造成とは歯の周りの骨を増やす治療法です。インプラントを埋め込むための顎の骨量が足りなくても、骨造成でインプラント治療ができる可能性が高まります。
今回は、骨造成の基礎知識、具体的なメリット・デメリット、骨造成の種類と治療の流れ、治療費について詳しく解説します。
更新日:2024/06/10
■目次
インプラント治療における骨造成とは
骨造成とは、骨の量を増やす治療のことです。骨造成によって骨の量を増やし、インプラント治療のために必要な骨量・厚みを確保することでインプラント治療が受けられる患者さんも多いです。
顎骨の十分な量がないと、インプラント治療が難しいと断られてしまうこともあります。骨造成が可能な歯科医院であれば、骨造成をすればインプラント治療が可能である、と診断されることもあります。
顎骨の厚みや量の問題で治療を断られた方は、骨造成の処置が受けられる歯科医院で相談してみるのもよいでしょう。
インプラント治療時に骨造成を行うメリット
インプラント治療を可能にする骨造成ですが、ほかにどのようなメリットがあるか紹介します。
インプラント体の埋入が可能になる
先にも記載した通り、骨造成で骨の量を補うことによってインプラント治療が可能になることがあります。
骨の厚み、高さ、密度などでインプラント治療ができないと診断された方が、骨造成の対象となります。
インプラントの長期的な安定が見込める
骨造成で骨の厚み、高さ、密度が改善され、インプラントを埋め込んだ後に安定する可能性が高まります。
骨の厚み、高さ、密度が不足しているとインプラントと骨が十分に結合せず、ぐらつきや痛みなどの問題が生じることがあります。
*インプラント治療が受けられる程度に骨があっても、より安定させるために骨造成を受けるケースもあります。
審美的な改善が期待できる
骨の量が不足していると歯茎も下がり見た目の影響もあります。
骨の高さが足りない場合はインプラント体が露出したり、被せ物を大きく作ることで見た目を改善することもあります。骨造成を行うことで、インプラント治療周りの見た目の改善にもつながります。
インプラント治療時に骨造成を行うデメリット
骨造成には多くのメリットがありますが、デメリットも当然あります。
骨造成のデメリットについても詳しく確認してから決めるようにしましょう。
治療期間が長くなる
骨造成で移植した骨や人工骨が定着するまでに1~2ヶ月以上の時間ががかかります。インプラント治療の前に骨造成を受けた場合、通常のインプラントに比べて骨が定着するまでの期間が長くなります。
骨造成をインプラントを埋め込むと同時に受けることもありますが、治療期間はあまり変わりません。インプラントが骨と結合する間に、骨造成により足された骨も安定することがほとんどです。
手術回数が複数回になる場合がある
骨誘導再生法(GBR法)という骨造成では、患者さん自身の骨を採取し、移植します。骨の採取と骨造成で最低1回、そしてインプラント治療で最低2回は手術が必要となります。
自分自身の骨を使わず、人工代用骨や骨の生成を促す材料を使用する場合はインプラントを埋めいれる処置と一緒にGBRが行われ、トータルの手術回数が増えないこともあります。手術回数を増やすことに不安がある方は、骨造成について事前に担当医とよく相談するようにしましょう。
治療ができないケースもある
インプラント治療ができないといわれる理由はさまざまで、骨造成は顎の骨の厚み、高さ、量などが足りていない場合に検討される治療です。
骨造成の結果、造成した骨が安定しなかったり、思うように厚みや高さ、量を増やせなかった場合は、インプラント治療はできません。
また、歯周病などによりお口の状態が非常に悪い場合や糖尿病、高血圧など全身疾患が理由でインプラント治療が難しい・できないといわれている場合、骨造成はもちろんのこと、インプラント治療自体ができません。
お口の状態を改善したり、全身疾患の状態の改善をすることでインプラント治療がいつかできるようにしましょう。
骨造成の種類と治療の流れ
骨造成にはいくつかの種類があり、特徴や治療方法、治療の回数などが異なります。
サイナスリフト
サイナスリフトは上の奥歯の歯茎を切開して骨を露出させ粘膜(シュナイダー膜)を剥がし、上顎洞(副鼻腔)の底に人工骨や人工代用骨をいれることで骨の増加を期待する方法です。
上顎の奥歯の上から鼻の横にある上顎洞(副鼻腔)という空洞までの骨の厚みが不足している場合に行われます。
ソケットリフト
サイナスリフトは、抜歯時・インプラント埋入時に同時に受けることがほとんどです。
歯を抜いた後の穴、またはインプラントを埋入するためにドリルで開けた穴から膜(シュナイダー膜)を押し上げて骨を入れるスペースをあらかじめ作り、骨や人工代用骨を入れる方法です。
手術が1度で済むこと、骨造成のために別途歯茎の切開等が不要なことから、患者さんの身体の負担が比較的少なくてすむことが特徴です。
GBR
GBRは、インプラントを埋め込んだ後に、インプラントの周囲で骨が足りない部分に自分の骨や人工代用骨などを補填し、メンブレンという特殊な膜で覆うことで顎の骨の再生を期待する治療方法です。
インプラントを埋め込んだ時に一部の骨が薄くなってしまう、インプラントの側面が骨から露出してしまうなどの場合に適用されます。
インプラント治療時の骨造成にかかる費用
骨造成の主な手法のソケットリフトを30,000円~100,000円と比較的安価に行われている歯科医院が多いです。
GBR法の治療費の相場は30,000~150,000円とソケットリフトと大きな差はなく、サイナスリフトの治療費の相場は150,000~300,000円とやや高額な傾向です。
骨造成は公的医療保険が適用されず、全額自費診療となります。歯科医院によって費用が大きく変わるため、治療を受ける前に費用をよく確認するようにしましょう。
2023年12月 株式会社メディカルネット調べ
まとめ
顎の骨が不足していると、インプラント体を埋め込めない可能性が出てきます。そのようなケースでは骨造成によって不足している骨を補う必要が出てきます。骨造成は、インプラントを適用できる患者さんの幅を広げるだけでなく、装置の長期的な安定を見越したうえでも役立つ治療法となり得るでしょう。
骨の量が不足していてインプラント治療ができないと言われた場合は、骨造成が有力な解決策となり得るでしょう。現時点でインプラントを受けられないからといって諦めるのではなく、骨造成という治療の選択を検討してみてはいかがでしょうか。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
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