インプラントの上の被せ物を固定する方法は?スクリュー固定とセメント合着について
インプラントは天然歯のように自然な噛み心地を得られるとされています。チタンを主としたネジ(インプラント、人工歯根)を顎骨に埋め込むのでしっかり固定され、硬いものもしっかりと噛むことができます。インプラントの上に被せ物(人工歯)を固定する方法には主に「スクリュー固定」と「セメント合着」の2種類があります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
更新日:2024/04/15
■目次
- インプラントの上の被せ物を固定する方法は?スクリュー固定とセメント合着について
- インプラントの基本的な仕組み
- インプラントの上部構造の固定方法は2種類
- スクリュー固定とは
- セメント合着とは
- スクリュー固定のメリットとは?
- 上部構造の取り外しが可能
- 洗浄・清掃がしやすい
- インプラント体に過度な負荷がかかるのを防げる
- 見た目などを調整しやすい
- スクリュー固定のデメリットとは?
- 穴をふさぐ詰め物が変色する
- 時間が経つとネジがゆるむ
- セメント合着のメリットとは?
- 見た目が綺麗
- 複数の埋め込みに対応しやすい
- ねじが不要でゆるまない
- セメント合着のデメリットとは?
- 上部構造を外せない
- 残ったセメントが感染リスクを高めてしまう
- まとめ
インプラントの上の被せ物を固定する方法は?スクリュー固定とセメント合着について
インプラントは天然歯のように自然な噛み心地を得られるとされています。チタンを主としたネジ(インプラント、人工歯根)を顎骨に埋め込むのでしっかり固定され、硬いものもしっかりと噛むことができます。インプラントの上に被せ物(人工歯)を固定する方法には主に「スクリュー固定」と「セメント合着」の2種類があります。それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
インプラントの基本的な仕組み
インプラントは、人工歯根である「インプラント体」、人工歯にあたる「上部構造」、そしてインプラント体の上に取りつけて上部構造を固定する「アバットメント」の3つのパーツからできています。インプラント体はチタンで作られているものが多く、顎骨に埋入したときに結合しやすいよう設計されています。
インプラントの上部構造の固定方法は2種類
インプラントの上部構造を固定する方法は主に次の2種類があります。具体的な固定方法をチェックしてみましょう。
スクリュー固定とは
スクリュー固定とは、ネジで固定する方法です。上部構造の反対側の歯と当たる面には穴が開けてあり、そこにネジを通してアバットメントに固定します。
セメント合着とは
アバットメントと上部構造を、セメントを使い固定する方法です。セメントはブリッジの装着などにも用いられています。
スクリュー固定のメリットとは?
スクリュー固定とセメント合着はそれぞれ特徴が異なります。スクリュー固定にはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
上部構造の取り外しが可能
大きなメリットのひとつが、上部構造を取り外せる点です。インプラントをつけているときに上部構造が欠けた場合、簡単に取り外して交換することができます。また、インプラント体に問題が起きた場合も、上部構造は壊さずに取り外し、治療後に同じものを利用できます。
洗浄・清掃がしやすい
インプラント周囲炎とよばれる歯周病のような症状にかかった場合も、上部構造を取り外すことで歯肉を清掃しやすくなり、歯科医院でのメンテナンスが容易になります。
インプラント体に過度な負荷がかかるのを防げる
天然歯の歯根と顎骨の間には、歯根膜とよばれる組織があります。歯根膜には噛んだときの衝撃を軽減する役割がありますが、インプラントには歯根膜がなく、衝撃が直接伝わります。スクリュー固定の場合、インプラントに過剰な力が加わったとき、ネジが緩むことでインプラント体への衝撃が和らげられます。その結果、インプラント体の破損を防ぎやすくなります。
見た目などを調整しやすい
上部構造を容易に取り外せるため、接着する際に何度も試しながら見た目や噛み合わせを調整できます。
スクリュー固定のデメリットとは?
スクリュー固定にはさまざまなメリットがありますが、一方でデメリットもあります。
穴をふさぐ詰め物が変色する
スクリューを入れるため、インプラント体に穴(アクセスホール)を開けていますが、目立たないようコンポジットレジンなどの詰め物で隙間を埋めます。コンポジットレジンは歯科治療にも使われる材料ですが、プラスチックの一種なので時間の経過とともに変色するおそれがあります。
時間が経つとネジがゆるむ
時間の経過やインプラント体への負荷により、ネジが緩んでしまうことがあります。緩んだネジを放置しているとインプラントが安定せずぐらついてくるため、歯科医院でネジを締め直す必要があります。
セメント合着のメリットとは?
スクリュー固定と異なり、ネジを使わないセメント合着にもメリットがあります。
見た目が綺麗
セメント合着はネジを使用せずに固定します。そのため、上部構造の噛む面には穴がなく、見た目がきれいに仕上がります。
複数の埋め込みに対応しやすい
スクリュー固定のようにアクセスホールという穴が開いていないため、上部構造がシンプルに作られています。スクリュー固定のように上部構造に穴があると、複数のインプラントを並べて埋入する際には平行な状態を保ちにくくなります。しかし、セメント合着のようなシンプルな上部構造であれば複数のインプラントを埋入する際に対応しやすくなります。
ねじが不要でゆるまない
上部構造をセメントで固定するのでネジは使用されず、ネジのような緩みの心配がありません。
セメント合着のデメリットとは?
セメント合着にはメリットがある一方いくつかのデメリットがあります。
上部構造を外せない
インプラント周囲炎にかかってクリーニングをする、破損した人工歯を交換するといった場合は、上部構造を破壊して取り外すことになります。
ただし、近年はセメントの改良が進んでメンテナンスのときに上部構造を簡単に取り外せるものもあります。その場合、仮着なので外れやすい点に注意が必要です。
残ったセメントが感染リスクを高めてしまう
上部構造を固定させるために使用したセメントが、インプラントの周辺に残る可能性があります。残ったセメントが原因となってインプラント周囲炎という感染症を引き起こすおそれがあります。
まとめ
インプラント治療は上部構造(人工歯)を固定する方法として、ネジで固定するスクリュー固定と、セメントで固定するセメント合着の2種類があります。スクリュー固定は上部構造を簡単に取り外せるという点、セメント合着は見た目がきれいになるという点などがそれぞれの大きな特徴になります。デメリットもあるため、歯科医師から十分な説明を受けて治療を受けるようにしましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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