妊娠中は歯医者に行ける?避けた方が良い治療や赤ちゃんへの影響も解説
妊娠しているのに、歯の痛みが気になり始めた。
歯医者に行きたいけど妊娠中に歯医者に行って 大丈夫なの?
そんな風にお悩みの方も、多いのではないでしょうか。
妊娠時期や治療内容にもよりますが、妊娠中でも歯科治療は受けられますよ。
今回は、妊娠期間ごとの対処法の違いや妊娠中に受けられる治療と避けた方がいい治療、治療の際に気をつけるべきポイントなどについて、詳しく紹介していきます。
更新日:2024/02/05
■目次
妊娠中でも歯医者での治療は可能
一般的に、妊娠が安定期(16週~)に入った後であれば、歯医者での治療はできるといわれています。
安定期以外においても、母親の体調や治療内容によっては問題なく治療ができます。
歯の痛みで辛い思いをしたりストレスが溜まることは母親だけでなく、お腹の赤ちゃんにとっても良くありません。
安定期になっていなくても、痛みに耐えられない場合は妊娠期間や現在の症状などを担当医に伝え、治療可否を確認しましょう。本格的な治療は無理でも、応急処置を受けられる可能性もあります。
意外と治療できることも多いので、ひとりで悩まずにまずは相談してみてくださいね。
妊娠中は避けた方が良い治療もある
妊娠中も歯科治療は受けられますが、できれば避けた方が良い治療もあります。
まず、歯のホワイトニングは安全であるといわれていますが、実は母体や赤ちゃんへの影響がはっきりしていません。そのため、わざわざ妊娠中にホワイトニングをすることは避けるべきと考えられています。
また、治療としては問題なくても、強く緊張してしまう場合などは推奨されていません。
治療に対して強い不安感や緊張感を持つ治療(例えば埋まっている親知らずの抜歯やインプラントなどの外科手術を伴う治療)は避けることがあります。
【妊娠時期別】歯医者での治療内容
歯医者での治療に伴うリスクは、妊娠時期によって大きく異なります。
妊娠初期、妊娠中期、妊娠後期、それぞれの時期に可能な治療や治療に伴うリスクについてみていきましょう。
妊娠初期
妊娠初期(妊娠1~4カ月)は、妊娠期間の中でも母体が不安定な時期です。
そのため、長時間の治療や過度な緊張を生じさせる状況はできる限り避けるようにしましょう。
歯の痛みが強いなど緊急を要する場合は応急処置を受けて、最終的な治療は安定期に入ってから行います。
無理に歯医者に通院せず、治療できるようになってから改めて通院しましょう。
妊娠中期
妊娠中期(妊娠4~7カ月)は、母体と赤ちゃんにとって最も安定している時期です。
妊娠中に歯科治療を受ける場合は、できるだけこの時期に受けましょう。
妊娠中期であれば、抜歯など少し侵襲の大きな歯科治療を受けることも基本的に問題ないといわれています。妊娠が発覚して中断していた治療があれば、この時期に再開しましょう。
また、この期間に歯のクリーニングを受けることがおすすめ。
妊娠初期はつわり等で歯磨きが疎かになりがちで、汚れが溜まって小さな虫歯ができてしまうこともあるので、チェックも兼ねて歯医者を受診しておきましょう!
妊娠後期
妊娠後期(妊娠7~10カ月)は、過度の緊張や痛みが早産を引き起こす恐れがあります。
この時期も妊娠初期と同じく、治療は応急処置のみにとどめることが多くなります。
また、お腹が大きくなり仰向けに寝ていることも身体の負担になります。この時期までに計画的に治療を進め、残りの治療は出産後に行いましょう。
赤ちゃんに影響を与える可能性のある歯科治療
歯医者での治療が、赤ちゃんに対して悪影響を与えることがないか心配ですよね。赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性がある歯科治療についてみていきましょう。
レントゲン撮影
放射線は赤ちゃんに悪影響を及ぼすことはよく知られています。歯科でのレントゲン撮影でも放射線が出ますが、量はごくわずかです。
日常生活で自然に被ばくする量と比べても少なく(0.01msV程度)、普通に海外に行くために飛行機に乗って被ばくする量の1/100以下なので妊娠中であってもお腹の赤ちゃんに与える影響はほとんどないといわれています。
また、撮影の際に放射線を防ぐための防護エプロンをつけることで、赤ちゃんの被ばく量はさらに少なくなります。
どうしても不安な場合はレントゲン撮影を拒否することもできますが、ストレスの少ないスムーズな歯科治療のためにも必要性に納得できればレントゲン撮影をしても良いのではないでしょうか。
麻酔
通常の歯科治療で用いる麻酔は局所麻酔(部分的に感覚をにぶらせる麻酔)であり、使用量は数mLと少ないです。
少量の麻酔であれば、お腹の赤ちゃんへの影響はほぼないといわれています。
また、妊娠している患者さんへの麻酔の使用は、「赤ちゃんや母体へ考えられるデメリットよりも麻酔を使用するメリットが大きい場合にのみ使用をする」ことになっており、むやみやたらと使用するわけではありません。
母親が治療で強い痛みやストレスを感じる際の赤ちゃんへの悪影響を考えると、安定期なら麻酔を使用した方が良いでしょう。
どうしても不安な場合は麻酔を使用する治療は出産後に受けることもできますが、出産前に悪化したり痛みを強く感じて出産前に治療を受けないといけない可能性があることを納得して治療をどうするかを選択してくださいね。
薬の服用
妊娠中は風邪をひいても薬が飲めないというのはよく耳にしますよね。実際、妊娠中に飲むと赤ちゃんに悪影響を及ぼす薬もあり、飲めない薬も少なくありません。
妊娠中の患者さんには、赤ちゃんへの影響が少ないといわれる薬を処方していきます。ただし「最も安全に使用できるとされている」ものであり、全く影響がないとは限らないのが現状です。緊急時以外は薬を飲まずに済むほうがよいでしょう。
特に、妊娠初期の服薬は赤ちゃんぬい奇形などの異常が生じるリスクが高いため、できる限り服薬を避ける傾向にあります。そのため、抜歯などの外科手術の際に痛み止めなどの薬が必要になる可能性が高い治療は、妊娠中は避ける歯科医院が多いです。
もしも歯科医師から処方された薬に対し「この薬は妊娠中に飲んでも大丈夫なの?」と不安を感じたら、薬局の薬剤師にも相談してよいでしょう。問題があった場合は、薬剤師から歯科医師へ連絡して処方を変えてもらうことができますよ。
妊娠中は虫歯や歯周病になりやすい?
妊娠中は、ホルモンバランスの変化によって食事や間食が増えたり、つわりによって歯磨きが難しくなったり、女性ホルモンの増加によって唾液の粘性が高まることでお口の中の自浄作用が低下するなどします。
お口の中の環境が悪くなると、虫歯や歯周病のリスクは高まります。
妊娠期に歯周病になると早産や低体重児出産の確率が高くなるという報告もあり、妊娠中は特にお口の中の状態に気を配ることが大切です。
つわりの時に歯磨きをすることは非常に難しいでしょう。
そこで、妊娠初期は
・できる時にできる限り歯磨きをする
・歯磨きができないときは口をゆすぐ
ようにしましょう。できる時にできることをすることが大切です。
そして、妊娠中期など安定してきたら一度歯医者へ通院してみてください。
溜まった汚れや妊娠初期にできてしまった虫歯を治療してお口の中を整えることで、その後の妊娠中の歯周病や虫歯を予防することにつながりますよ。
また、お口の中を整えておくことで、生まれた子供とのスキンシップで虫歯菌を移してしまうリスクを減らすことができます。
お母さんのためにも子供のためにも、妊娠中はお口の中を意識してみてください。
妊娠中に起きやすいお口のトラブル
妊娠中には、さまざまなお口のトラブルが発生しやすくなっています。妊娠中に起きやすい問題について紹介していきます。
妊娠性歯周炎
妊娠中は食事や間食の増加、つわり、食べられるものの変化や女性ホルモンの増加などの影響で、口腔内環境が悪化しやすく歯肉炎や歯周病の発生リスクが高まります。
妊娠性歯周炎は産後にホルモンバランスや食生活が落ち着いてくると治る傾向にありますが、放っておくと歯周病が悪化することがあります。
妊娠中の歯周病は早産や低体重児に繋がるという報告もあるため、日々のクリーニングなど注意したいポイントです。
親知らず
妊娠に伴う口腔内環境が悪化すると、妊娠前には問題なかった親知らずが痛み出したり、親知らずの周りの歯肉が腫れることがあります。
妊娠中の歯磨きのポイント
妊娠中はつわりが酷くなり、歯磨きをすることが苦痛になる方も少なくありません。つわりの影響で歯磨きができそうにない時は、うがいで食べかすなどを取り除いておきましょう。
ただし、うがいでは全部の食べかすを取り切ることは難しく、歯垢(プラーク)も取り除くことができないので、体調が落ち着いているときは食後ではなくても歯磨きをするように意識しましょう。
また、無香料の歯磨き粉を使用したり、ブラシ部分が小さい歯ブラシを選ぶ、顔を下に向けて歯磨きをすると歯磨きの辛さを軽減できることがあるので試してみてください。
授乳中の治療は大丈夫?
授乳中の歯科治療は、ほぼ問題ないといわれています。
治療の際に局所麻酔が必要な場合もありますが、通常の量であれば赤ちゃんに与える影響は少ないとされているため、大きな心配をする必要はないと考えられます。
授乳中の薬の服用は問題ない?
授乳期に母親が薬を飲んだ場合、飲んだ薬が母乳の中に移行する量は1~2%未満とされており、赤ちゃんに与える影響はかなり少ないでしょう。
ただし、生後一週間以内の新生児は薬を代謝する能力が十分ではないためごく少量の薬の影響も受ける可能性があり、薬を飲んだ後の母乳は避けたほうが安心とされています。
1度痛み止めを飲むだけであれば、薬を飲む前に搾乳して保存しておけば問題ありません。薬が代謝された後は授乳を再開できます。
数日から数週間程度継続して薬を飲む場合は、ミルクで対応することになります。
そのため、服薬が必要な歯科治療は出産後数週間経ってから開始することがおすすめされます。
まとめ
妊娠中の歯科治療にはさまざまな注意が必要ですが、妊娠中期(妊娠4~7カ月)のタイミングであれば妊娠中でも歯科治療が受けやすいです。痛みを我慢すると早産を引き起こすなど赤ちゃんに悪影響が及ぶ可能性もあるため、歯医者さんに相談して必要な治療を受けるようにしましょう。
出産後から子育てが始まりますが、歯医者に行く時間を捻出することが難しくなる方も少なくありません。できれば日頃から歯医者に通院し、歯磨きもしっかりとしましょう。
妊娠中期(安定期)の時に、歯科を積極的に受診しておくことも、妊娠中や出産後のお口の中の健康のために役立ちます。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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