結合組織移植術(CTG)とは?遊離歯肉移植術との違いも
インプラント治療を希望しているものの、虫歯や歯周病の影響で歯肉が下がってしまい、すぐには治療を受けられないというケースがあります。
歯肉の状態が悪い場合に歯肉の厚みや高さを出すための治療法として「結合組織移植術(CTG)」があります。
結合組織移植術の治療方法やメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。
更新日:2023/12/18
■目次
結合組織移植術(CTG)とは?
歯が抜けてしまいインプラント治療を受けようと思っても、歯肉の健康状態が良くないと治療を受けられない場合があります。
このような歯肉の状態を改善してインプラント治療を受けられるようにするのが、結合組織移植術(CTG)です。抜歯や歯周病で歯肉が痩せたりしている場合に、上顎の口蓋から皮膚の下にある結合組織(歯肉を結合している組織)を切り取って、歯肉が足りないところに移植し、厚みや高さを出す治療方法です。
結合組織移植術(CTG)の対象になるケース
結合組織移植術(CTG)の対象になるケースとなります。
・歯肉が下がっていて、歯肉の量が足りずインプラント治療やブリッジ治療を受けられない
・抜歯後、放置してしまい歯肉が痩せてしまった
・歯周病や歯肉退縮などで歯の根っこが露出し知覚過敏になってしまった
上記のようなケースが対象になります。まずはお口の中の状態が結合組織移植術(CTG)できるのかを検査・診断を行います。
結合組織移植術(CTG)の3つのメリット
組織の移植によって痩せた歯肉を回復させることにより、さまざまなメリットがあります。結合組織移植術(CTG)を行うことによる3つのメリットを紹介します。
インプラント治療が可能になる
歯肉の量が足りずにインプラント治療が受けられないという方も、結合組織移植術(CTG)を受けることで歯肉の厚みや高さを回復させることによりインプラント治療を受けられる可能性があります。
見た目が良くなる
抜歯や歯周病で歯肉が下がったりすると、口元の見た目が悪くなり不自然に見えてしまいます。結合組織移植術(CTG)によって歯肉の高さや厚みが回復し、見た目が自然になります。歯肉が下がっていると老けた印象を周囲に与えるので、CTGで若々しく見られるかもしれません。
ブラッシングがしやすくなる
歯肉のボリュームが回復して歯と歯の間の隙間が小さくなると汚れが溜まりにくくなり、歯ブラシも届きやすくなります。ブラッシングで汚れを取り除きやすくなることで、虫歯や歯周病の予防につながり、歯を長期的に健康な状態で維持できます。
結合組織移植術(CTG)の2つのデメリット
結合組織移植術(CTG)にはメリットだけでなく、いくつかのデメリットもあります。結合組織移植術(CTG)を検討するにあたり、メリットだけではなくデメリットもしっかりと確認しておきましょう。
高い技術が要求される
結合組織移植術(CTG)は治療そのものが難しく高い技術を要するとされています。
口蓋から上皮を切り取って移植する遊離歯肉移植術(FGG)と違い、上皮の内側の組織(結合組織)のみを切り取って歯肉のボリュームが足りていない部分に移植します。
CTGの治療実績や治療計画などについて歯科医師によく確認すると良いかもしれません。
手術後に痛みや腫れが生じる場合がある
手術後、移植した部分に腫れや痛みが出ることがあります。また、感染症が起こるリスクもあります。腫れや痛みについては個人差がありますが、基本的には一時的なもので2~3日程度で治まります。痛み止めや抗生物質が処方されますので指示通り服用しましょう。
結合組織移植術(CTG)の流れ
治療は結合組織の採取から始まり、歯肉が下がった部分に組織を移植します。縫合し歯肉が整うのを待ち、1~2週間後に問題なければ抜糸することになります。
結合組織移植術(CTG)の流れ
治療は結合組織の採取から始まり、歯肉が下がった部分に組織を移植します。縫合し歯肉が整うのを待ち、1~2週間後に問題なければ抜糸することになります。
1. 歯肉を採取する
上顎の口蓋という上の歯の裏側から結合組織を採取します。結合組織を採取するところには事前に麻酔をし、結合組織の大きさをチェックします。上皮をメスで切開し、結合組織だけを慎重に採取します。
2. 採取した歯肉を移植する
採取した結合組織を移せるよう、移植先の歯肉の上皮を麻酔後に切開してめくります。採取した組織は上皮と骨の間に挟み込むようにして移植します。
3. 傷口を保護する
移植後に縫合し、組織がずれないように固定します。併せて結合組織を採取した上顎の口蓋も縫合します。
結合組織を採取した上顎の口蓋の傷口については、マウスピースのようなプラスチックカバーを装着し傷口を保護することもあります。そのまま1~2週間ほど経過観察し、傷口が治ってきたら抜糸します。
結合組織移植術(CTG)と遊離歯肉移植術(FGG)の違い
遊離歯肉移植術(FGG)とは、歯やインプラントの周囲に角化歯肉を増やす目的で上顎の口蓋から歯肉を中心とした上皮組織を移植する治療です。結合組織移植術(CTG)とはどのような点で違いがあるのか見ていきましょう。
治療法の違い
まず、採取する組織が異なるため治療方法そのものが違います。結合組織移植術(CTG)は、口蓋から上皮をめくり、結合組織だけを切り取って移植します。
一方、遊離歯肉移植術(FGG)は上皮組織だけでなく結合組織をセットで切り出し、移植します。そのため、遊離歯肉移植術(FGG)の方が手術の難易度は低いとされています。
見た目の違い
遊離歯肉移植術(FGG)は簡便に組織を採取して移植できますが、上皮組織と結合組織を一緒に移植することになるので周囲の歯肉と色合いが違って見えることがあります。
一方、結合組織移植術(CTG)は歯肉の内部にある結合組織だけを移植先の上皮と骨の間に挟み込むように移植するため、見た目に大きな変化がありません。このため、結合組織移植術(CTG)は目立ちやすい前歯への移植で行われるケースが多いです。
費用の違い
どちらの治療方法も自費診療となるので公的医療保険が適用されません。現在の歯肉の状態や治療する箇所などによっても費用は違ってきます。相場としてはどちらも1本あたり数万円~数十万円かかるとされていますが、手術の難易度が高い結合組織移植術(CTG)の方が価格が高い傾向にあります。
このほか、治療前の検査・診断にかかる費用や麻酔にかかる費用、治療後の処置、お薬の費用などもかかるので、詳しい金額は歯科医師に確認しましょう。
2023年7月 株式会社メディカルネット調べ
まとめ
結合組織移植術(CTG)は、歯肉の厚みや高さが不足しているケースに適応される治療です。インプラント治療ができない状態の歯肉を改善させたり、歯磨きしやすくなるなどの効果が期待できます。
歯肉を回復させるほかの方法としては、遊離歯肉移植術(FGG)もあります。しかし、遊離歯肉移植術(FGG)は移植した箇所の見た目が不自然になる可能性があり、前歯部のように審美性が重要視される部位ではあまり適応されません。
検査結果や組織の移植を必要とする箇所、治療方針などによって選択される術式は異なりますので、歯科医師と相談しながら治療方法を選択しましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
【PR】フィリップス ソニッケアー
歯科専門家使用率NO.1
あわせて読みたい記事
メディア運用会社について
株式会社メディカルネット(東証グロース上場)は、より良い歯科医療環境の実現を目指し、インターネットを活用したサービスの提供にとどまらず、歯科医療を取り巻く全ての需要に対して課題解決を行っています。
当サイト「インプラントネット」を通して生活者に有益な医療情報を歯科治療の「理解」と「普及」をテーマに、自分に最適な歯科医院についての情報や、歯の基礎知識、インプラントなどの専門治療の説明など、生活者にとって有益な情報の提供を目指しています。
インプラント歯科医院を探すなら「インプラントネット」
インプラント治療を行なっている歯科医院を、全国から簡単に検索できます。お近くのインプラント歯科医院をお探しの場合にもぜひご活用ください。