インプラント治療のカウンセリングで行われること・伝えるべきこととは?
「インプラント治療の治療内容や費用が知りたいからカウンセリングを受けてみたいけど、カウンセリングだけで詳しいことがわかるの?」
そう思う方もいるかもしれません。
インプラント治療の前に行うカウンセリングは治療の方向性を決めたり、手術に際する不安を和らげたりと大きな意味を持つのです。今回はカウンセリングの具体的な内容や、患者さんの側から医師に伝えることなどについて、詳しく解説していきます。
更新日:2023/10/30
■目次
インプラント治療の前にカウンセリングが必要な理由
口腔内の状態や身体の状態は、患者さんによって異なるでしょう。また、口元や歯に関する具体的な悩みや術後の希望についても、患者さんごとに事情は変化してきます。
最適な治療を提供するためには、医師側が患者さんそれぞれの状態や悩みをカウンセリングで把握しなければなりません。しかし、カウンセリング費用は歯科医院によって無料のところと有料のところが存在するので、その点は事前に確認しておきましょう。
インプラント治療のカウンセリングで行われる4つのこと
インプラント治療のカウンセリングは、主に以下の4項目の確認と説明が行われ、患者さんごとに適した治療計画が作成されます。
1. 現在の口腔内の確認
問診や検査で、口腔内の状況を確認します。虫歯や歯周病の有無、噛み合わせの状態、歯並びなどです。
虫歯や歯周病がある場合は、インプラント治療をすぐに始めることができません。その場合はインプラントの前に虫歯や歯周病の治療を行うため、事前に口腔内の確認は必須です。
2. 治療の選択肢の説明
何らかの理由で歯がなくなったときには、インプラントの他にも、ブリッジや入れ歯があります。どれが適しているかは患者さんによって異なります。
インプラント治療を受けようとカウンセリングを受けた場合でも検査の結果、インプラントよりも適した治療法があると診断されることがあります。その場合はブリッジや入れ歯をお勧めされる可能性があることを覚えておきましょう。
3. インプラント治療を選んだ場合のメリット・デメリットの説明
どのような治療法であっても、メリット・デメリットはどちらも存在するもの。歯科医師には、インプラント治療について正しく理解してもらい、納得したうえで患者さんに治療を受けてもらうためにメリット・デメリットの両方について詳細に説明する義務があります。
インプラント治療のメリットはブリッジなどと異なり、健康な歯を削る必要がないことです。また、入れ歯よりも噛む力が優れており、食事などにおける違和感が小さくなります。
また、インプラントは審美性の高い素材を使用できるため、天然歯のような自然な見た目が実現可能。さらに、虫歯になる危険性がなく取り外しの手間がかからないため、治療後は快適に日常生活が送れるようになります。
インプラント治療のデメリットは自由診療となり、健康保険が適用できないことです。治療費は高額となります。インプラントの埋入には外科手術が必要になり、金銭面だけでなく身体への負担も大きくなってしまいます。
さらに、インプラント周囲の組織に感染が起こる可能性があるので、防ぐために施術後も定期的なメンテナンスが必要。治療期間自体も比較的長くなり、カウンセリングなどで事前に身体の状態を確認するのが大切です。
4. おおよその費用や治療期間の説明
歯科医院によってインプラントの治療費は異なりますが、インプラント1本につき、30~40万円が相場です。カウンセリングに関しても、基本的には問診や簡単な検査、診断のみであれば無料で受けられますが、精密検査を受けると3~5万円程度の費用がかかる場合があります。
治療期間としては、顎の骨にインプラント体が定着するまでおよそ3~6カ月ほどが必要です。定着の待機期間中やその後も定期的にメンテナンスを受ける必要があるため、手術が終わったからといって油断できません。
2023年10月 株式会社メディカルネット調べ
カウンセリングのときに伝えるべき4つのこと
治療前に受けるカウンセリングでは口腔内や顎骨(がっこつ)の状態だけでなく、患者さんが治療で重視すべきことを主治医が把握する必要があります。患者さんの側としても、以下の4項目に当てはまるものがあれば、早めに医師へ伝えておくことが望ましいです。
1. 持病やアレルギー
インプラント治療は一般的な歯科治療とは異なり、手術が必要です。そのため、特定の持病やアレルギーがある場合は、インプラント治療の適用が難しいと判断される可能性があります。
具体的には、以下のような疾患があれば注意しましょう。
・糖尿病
・心臓病
・高血圧
・肝臓病
・腎疾患
・骨粗鬆症
・癌の治療中
・金属アレルギー
また、患者さんが歯周病にかかっていたり、喫煙の習慣があったりする場合は、インプラントの寿命が短くなる傾向にあります。そのため、先に歯周病の治療を行ったり、禁煙を成功させたりしたうえでインプラントの治療を受けるのがいいでしょう。
2.服用している薬
持病に加えて、病気などの治療のために服用している薬によっては、インプラント治療が難しい場合があります。
具体的には、以下のような薬を服用している場合です。
・骨粗鬆症やガンの骨転移を抑制する薬
・血液の流れを良くする薬
・ステロイド薬
これらの薬の副作用により、歯の根元や顎の骨の修復がみられない、出血が止まりにくい、炎症や感染などの合併症を起こす恐れがあります。いずれもインプラント治療のリスクが大きく高まるため、医師への事前の相談が必須です。
3. すでに決まっている予定
旅行や出張といった事前に決まっている予定があるなら、あらかじめ医師に伝えておくとよいでしょう。インプラントの手術後は腫れや痛みが続きやすいので、手術前後の予定を踏まえたうえで、治療計画を立てていく必要があります。
カウンセリングであらかじめ大事な予定を把握できれば、担当医も極力予定に支障が出ないように手術の日程を設定します。腫れや痛みの症状は1~2週間ほどで落ち着いていくので、患者さんの予定に極力影響しないように日程を設定することは可能です。
4. インプラント治療についての悩みや不安
「手術の痛みが心配」「どのくらい腫れるのか?」といった、インプラント治療についての疑問や心配がある場合は、事前のカウンセリングで伝えておきましょう。
そうすることで、不安な気持ちを解消できる治療法や、手術中にリラックスして手術を受けられる麻酔が提案されるなどあるでしょう。外科手術への恐怖がある場合、正直に申告しておくと安心して手術を受けられるでしょう。
カウンセリング前に把握しておきたいインプラント手術の種類
インプラント治療には「1回法」と「2回法」が存在。それぞれの特徴や具体的なメリット・デメリットについて紹介していきます。
1回法とは
1回法はインプラントの外科手術を1回行う治療法です。インプラントを埋める部位の粘膜を切開し、顎の骨にインプラントを埋めていきます。その際に、インプラント体と人工歯をつなぐ「アバットメント」という部品も一緒に取りつけます。
その後はインプラントと顎骨の結合と粘膜の治癒が確認できたら、人工歯を装着します。
1回法のメリットは身体への負担が少ないことです。外科手術の回数が1回で済むため、2回法と比べ術後の腫れや痛みが大きくなりにくいです。また、二次手術が不要なことから、治療期間も大きく短縮できます。手術回数が減ることにより手術にかかる費用も抑えやすくなるのです。
1回法のデメリットですが、症例によって対応できないケースが存在すること。具体的には、顎骨の厚み・高さ・強度などが足りなかったり歯肉の厚みの幅が少なかったりするなどの場合、上手くいかないリスクがあります。
顎骨の厚みが足りないために骨造成が必要になったり、歯周病が原因で歯を失ったりすると術後の感染リスクが上昇します。
2回法とは
2回法は1回法とは異なり、外科手術を2回に分ける治療法です。最初の1回目の手術では1回法と同様の流れでインプラント体を埋め込んでいきますが、1回目の手術ではアバットメントを装着せず、空けた穴にカバーをつけて、切開した粘膜を縫合し手術終了となります。
その後は3~6カ月ほど安静にしてインプラント体と顎骨の結合を待機し、二次手術を受けます。カバーを除去してアバットメントを連結し、粘膜の回復を2~3週間ほど待った後に、アバットメントの上に人工歯を装着します。
2回法のメリットは1回法とは異なり、ほとんどの症例に対して適応可能なことです。顎骨が少なかったり、全身疾患があったり、歯肉の厚みや幅が少ない患者さんであってもインプラント治療が可能になるので、1回法より多くの患者さんが受けられます。
また、一次手術後に歯茎を閉じてインプラントの定着を待つ期間を設けることにより、感染リスクを抑えやすくなる点もメリット。顎骨が少なく、骨の造成が必要な場合でも感染の可能性が低くなるため、より安心して治療を受けられます。
2回法のデメリットは外科手術を2回行うので、身体にかかる負担が増大することです。外科手術の回数が増えるだけでなく、手術と手術の間に結合を待つ期間が存在するため、治療にかかる期間もそれだけ長くなってしまいます。
また、手術回数の増加や治療期間の長期化に伴い、通院の回数も1回法に比べて増加します。治療費も高くなるため、1回法より負担が重くなる点は注意しましょう。
まとめ
インプラント治療のカウンセリングは、現在の口腔内の状態の確認や、治療の選択肢・費用の概算・治療期間などの説明が行われます。事前に持病やアレルギー、服用している薬、直近の予定などを伝えると、カウンセリング後の治療がスムーズです。
手術に対する恐怖心や術後の痛みの不安などあれば、担当医に伝えておくのがベターです。説明内容に納得できなければ、他のクリニックに相談するセカンドオピニオンを検討するのも良いでしょう。カウンセリング前に最善の準備を尽くして、納得いくかたちで治療を始められると良いですね
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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