ドライマウスは虫歯や歯周病になりやすい?症状や原因とは?
家族から口臭を指摘されたことはありませんか?
しっかり歯磨きをしているのに、定期的に歯科医院に通って虫歯や歯周病の治療・チェックもしているのに口臭を指摘されることは少なくありません。
お口の中の清潔を心がけているのに口臭を指摘されてしまうのはなぜなのでしょうか。
更新日:2023/10/02
■目次
ドライマウスとはどんなもの?
ドライマウスとは口腔乾燥症とも呼ばれ、何らかの理由によって唾液の分泌量が減ってお口の中が乾燥している状態をいいます。
唾液の平均的な分泌量は1日1リットル~1.5リットル程度ですが、年齢を重ねるにつれて分泌量は減少していきます。
唾液の分泌量は徐々に少なくなっていくため、自分ではお口の乾燥に気が付きにくいこともあります。
もし、最近食べ物が飲み込みづらくなった気がする、口臭が気になるようになった、同じようにケアをしているのに虫歯や歯周病が増えたと感じている場合は、ドライマウスになっているかもしれません。
ドライマウスの症状に当てはまっていないか、どのような対処法ができるかを確認してみてくださいね。
ドライマウスの症状
ドライマウスになっている場合、次のような症状が現れることがあります。
当てはまる症状がないか、チェックしてみましょう。
・口の中がねばねばする
・食べ物が飲み込みにくくなった
・口臭がひどくなった
・舌の痛みやひび割れが起きている
・口内炎ができやすくなった、治りにくくなった
・話しているときに水分補給をしたいことが増えた
・味を感じにくくなった
・以前に比べて虫歯が増えた
・歯周病になった
ドライマウスはお口の乾燥を感じやすくなるだけではなく、お口の中が乾燥することで食べ物の水分が不足し飲み込みづらく感じたり、食べ物で口の中が傷つきやすくなる、話の途中で舌が回りにくくなるなど様々な症状が起こります。
もしお口の中の乾燥を感じていなくても、ドライマウスで起こる症状が出ている場合はドライマウスの対処法を試してみると改善できるかもしれません。
ドライマウスと虫歯・歯周病の関係性
ドライマウス(お口の中の乾燥)は、虫歯や歯周病とも密接に関係しています。
「ドライマウスは単にお口の中が乾燥しているだけ」と思うかもしれませんが、虫歯・歯周病のリスクを高めているのです。
ドライマウスと虫歯の関係性
唾液には「抗菌作用」「歯の再石灰化作用」「消化作用」「自浄作用」などの大切な役割を担っています。
唾液が不足してしまうとお口の中の清潔が保ちづらくなり、虫歯・歯周病の発症リスクが高まります。
通常、歯は脱灰(歯の表面からミネラルが溶け出すこと)と再石灰化(再度ミネラルが取り込まれること)が繰り返されています。
脱灰と再石灰化のバランスが崩れ、再石灰化が追い付かなくなるといわゆる虫歯になります。
この再石灰化には、唾液が欠かせません。
唾液にはミネラルが含まれており、そのミネラルが歯の表面に取り込まれていきます。
また、唾液が多いときは食べかすや虫歯菌を洗い流してくれるのに対し、唾液が減ってしまうとそうした効果も薄れてしまいます。
そのため、唾液が減ると虫歯になりやすくなっていきます。
ドライマウスと歯周病の関係性
歯周病も同様に、唾液の量が減少し食べかすや細菌を洗い流してくれる効果が薄まると歯周病菌が繁殖しやすくなってしまいます。
また、歯周病菌は口の中が乾燥していると唾液の抗菌作用が減少し繁殖しやすくなり、歯周病のリスクが高まるのです。
ドライマウスの原因
ドライマウスになる理由は何があるのか見ていきましょう。
ストレス
唾液の分泌量は自律神経によってコントロールされています。
自律神経は交感神経と副交感神経で構成されており、ストレスがかかったり緊張状態になったりすると交感神経が優位になります。
交感神経が優位になると唾液の分泌が抑制されたり、水分の少ないねばねばとした唾液になり、お口の中が乾燥してしまいます。
口呼吸
鼻呼吸ではなく口呼吸をしていたり、口をぽかんと開けたままにしていることもドライマウスの原因です。
お口を閉じていることで唾液がお口全体に広がりますが、口を開けたままにしていると唾液は蒸発し、お口の中に広がりません。
また、吸い込む空気によって口の中が乾いていきます。
加齢
年齢が上がるにつれてお口の機能は低下していきます。
高齢になると唾液腺が萎縮して唾液の分泌量が減るほか、服用する薬の量が増え薬の影響で唾液の分泌量が減少することも多いでしょう。
また、食べ物をしっかり噛むことで唾液腺が刺激されますが、高齢になり軟らかい食べ物を食べることが増えたり食べる量が減ると、唾液の分泌量が減少していきます。
薬の副作用
抗うつ薬・睡眠薬・降圧薬などには、副作用として唾液の分泌量を低下させるものがあります。
シェーグレン症候群や糖尿病などの病気
シェーグレン症候群と呼ばれる自己免疫疾患では、主に涙腺や唾液腺に炎症が起こるため涙や唾液が出にくくなります。
また、糖尿病は血糖値が上昇する関係で尿として水分が排泄されやすくなり、結果的に唾液の分泌量が低下し、お口の中の乾燥が起こりやすくなることもあります。
ドライマウスの対処・改善方法
ドライマウスの対処・改善方法をご紹介します。
よく噛んで食べる
食べ物をよく噛んで食べることで、耳の下にある耳下腺・顎の下にある顎下腺・舌の下にある舌下腺という3つの唾液腺が刺激されます。
唾液の約9割は耳下腺・顎下腺・舌下腺から分泌されているともいわれているため、よく噛んで食べ唾液腺を刺激することで、唾液の分泌量が増やせるかもしれません。
唾液の分泌を促すものを食べる
唾液の分泌を促す食べ物といえば、レモンや梅干しなど。画像を見たり、味を想像するだけでも唾液が出てきませんか?
長期的にお口の中の乾燥が続く場合は、昆布・納豆・セロリ・人参・アーモンドなど唾液の分泌を促進させる働きがある食べ物を接種するように心がけてみてください。
鼻呼吸を意識する
口呼吸の癖がある方は、鼻呼吸を意識していきましょう。鼻炎や花粉症で鼻が詰まっている場合は、まずは鼻の治療をしてみてくださいね。
ふとした時に、口呼吸になっていないか確認してみましょう。
例えば、スマホの待ち受けを「鼻呼吸をする」と書いたものにしておく、よく見る場所にシールを貼っておいて見るたびに口呼吸になってしまっていないか確認するなども効果的です。
また、口呼吸を治すにはお口周りの筋肉を鍛えることもおすすめです。
お口周りの筋肉がないと、口を閉じておくことが辛くなってしまいます。
「あいうべ体操」などを実践してお口周りに筋肉をつけるようにトレーニングしてみてください。
そのほか、朝起きたときにお口の中が乾燥しているようであれば、寝ている間に鼻呼吸を促進するためのテープをお口に貼って開かないようにするという方法もあります。
まとめ
ていねいにお口のケアをしているのに口臭がひどくなった場合、ドライマウスになっているかもしれません。
ドライマウスは口臭の悪化以外に、舌の痛みやひび割れが起こったり、虫歯や歯周病になりやすくなったりとさまざまな症状も引き起こします。
お口の乾燥を感じていなくても、ドライマウスの症状に当てはまっている場合は一度歯科医院で相談してみてください。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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