サイナスリフトはどんな症状の人に必要?費用相場も紹介
インプラント治療を歯科医院に相談したら、インプラントを埋め入れるための十分な骨の厚みが足りず、「サイナスリフト」という処置を行う必要があるといわれることがあります。
サイナスリフトとはどのような治療なのか、基礎知識や具体的なメリット・デメリット、手術の流れや注意点など詳しく解説します。
更新日:2023/09/25
■目次
サイナスリフトとは?
「サイナスリフト」は、インプラントを埋め入れる箇所の上顎の骨の厚みが足りないときに行われる骨造成手術(骨を増やす手術)のひとつです。患者さんの顎骨の状態に応じて、インプラントを埋入する前に行われることがあります。
インプラント治療では、顎骨に人工歯根(インプラント体)を埋め込み、上部に人工の歯を被せます。しかし、上顎の骨の厚みが足りない場合は、鼻腔につながる「上顎洞」という空洞にインプラントが貫通してしまう恐れがあります。
そこで、上顎骨に付着している上顎洞粘膜を剥がして持ち上げて、できた空間内に人工骨や自家骨を入れて新しく骨を生成させる、というのがサイナスリフトです。
サイナスリフトが必要な人の主な症状
以下の条件に当てはまる場合は、インプラントを埋め込む前にサイナスリフトを行う可能性が高いでしょう。
骨の厚みが足りない
歯槽骨頂点から上顎洞までの骨の厚みがおおよそ3~5mm以下の場合、サイナスリフトが必要です。
インプラント治療では、インプラントを埋め込む場所に十分な厚みと密度の顎骨が必要です。サイナスリフトは歯科医師の高い技術が必要なため、歯科医院によっては顎骨の厚みが足りないとインプラントができないと診断されることもあります。
上顎の骨の厚みが不足しておりインプラント治療ができないと診断された場合も、サイナスリフトができる歯科医院であれば治療が可能かもしれません。
奥歯が長い間なかった
奥歯を抜歯してからずっと奥歯がない状態が続いた場合、サイナスリフトが必要な可能性が高まります。
歯を支える骨(歯槽骨)は、噛むなどの物理的刺激がないと少しずつ痩せていってしまいます(廃用性萎縮といいます)。
通常は歯があり、食べ物を噛んだ時の刺激が歯槽骨に伝わりますが、歯がなくなった状態では刺激がありません。
そのため、上顎の奥歯を支えていた骨が徐々に吸収され上顎洞までの骨の厚みが足りなくなり、インプラントを埋め込むスペースがなくなってしまいます。
インプラントを検討する方は、抜歯前から歯科医師と相談して計画を立てておくことをおすすめします。
サイナスリフトの2つのメリット
サイナスリフトはインプラント治療の一部ですが、2つのメリットを紹介します。
骨が薄くてもインプラント治療ができる
上顎の骨にインプラント体の長さ分の厚みがない場合、インプラント体を埋め込むことができません。サイナスリフトを行うことで骨の厚みを増すことで、インプラント体を埋め込めるようになる可能性が高くなります。
極端に骨が薄いケースに対応できることに加えて、長めのインプラント体を使用することも可能になるのがメリットです。
複数のインプラントの埋め込みも可能
サイナスリフトを行うことで、上顎奥歯の生えていた部分にインプラントを複数本埋め込むことができるようになる可能性があります。
サイナスリフトの2つのデメリット
サイナスリフトのデメリットを2つ解説します。
治療期間が長くなりやすい
サイナスリフトとインプラントの埋め込みを同時に行うこともありますが、サイナスリフトの処置とインプラントの埋入を別日に行うこともあります。
別日に行う場合はインプラントを埋め込むだけの治療に比べ、骨ができるまでの待機期間があるので治療期間が長くなる傾向にあります。
また、サイナスリフトとインプラントの埋入を同時に行う場合も、顎骨とインプラントが安定するまでに時間がかかります。
費用が高額
サイナスリフトの費用相場は、200,000円~400,000円程度です。
サイナスリフトは公的医療保険の適用外です。また、手術で使用される骨補填材が高価なこと、術者に高度な技術が必要なことから、治療費が高額になる傾向にあります。
トータルフィー制度のインプラント治療の場合は、サイナスリフトもインプラント治療費に含まれていることもあります。
2023年5月 株式会社メディカルネット調べ
サイナスリフトの手術の流れ
サイナスリフトでは、麻酔をしてからインプラントを埋入するための小さな穴を歯茎に開けます。開けた小さな穴から上顎洞にアプローチし、上顎洞粘膜やを傷つけないようにしながら、骨補填材を充填していきます。
その後は3~6ヶ月ほど骨が安定するのを待ちます。
骨が作られたことが確認できたら、通常のインプラント治療の流れに沿ってインプラントを埋入していきます。
サイナスリフトの3つの注意点
サイナスリフトは高度な技術が必要です。
サイナスリフトの注意点を3つ確認しましょう。
上顎洞炎を引き起こす恐れがある
サイナスリフトを行うときに上顎洞粘膜が破れたり、乱れた生活習慣で身体の免疫力が低下していたり、骨補填材が安定せず鼻の内部に入り込んでしまうと、上顎洞内で炎症が起きて上顎洞炎を引き起こす恐れがあります。
上顎洞炎になっても適切な治療を受け改善することができますが、治るまでの間は黄色い鼻水が出る、頬のあたりに違和感があるなどの問題が生じる可能性が高いでしょう。
鼻血が出る場合がある
サイナスリフトの手術後1ヶ月程度は、強く鼻をかんだりしないように注意する必要があります。
強く鼻をかむと上顎洞に大きな刺激がかかり、鼻血が出ることがあります。
鼻血が出ても大きな問題はありませんが、術後の安定が悪くなる可能性があるので注意しておきましょう。
腫れや内出血が起きることがある
サイナスリフトの手術から約2、3日後をピークとして、鼻の横、頬のあたりに腫れや痛み、内出血といった症状が見られることがあります。
一般的には腫れや内出血は術後2週間程度で落ち着きますが、大事な用事は治療後2~3週間は避けておくと安心です。
まとめ
サイナスリフトは、インプラントを入れる骨の厚みが足りない際に行われる治療方法です。サイナスリフトはインプラント治療ができる可能性がぐっと高まります。
ただし、サイナスリフトには追加の費用がかかること、デメリットもあることを確認しておきましょう。元々副鼻腔炎になりやすい方などは適応外になることもあります。インプラントができないと断られた経験がある方は一度、サイナスリフトが受けられる歯科医院で相談してみてはいかがでしょうか。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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