自由診療と保険診療の違い(インプラントの場合)

インプラント治療を公的医療保険で受けることはできるの?自由診療でしか受けることはできないの?そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。公的医療保険がインプラント治療に適用される場合についてや、それぞれの診療の違い、メリットやデメリットなどインプラント治療と公的医療保険の関係についてご紹介します。

更新日:2021/12/03

■目次

  1. 保険診療と自由(保険外)診療ってなに?
  2. 保険診療について
  3. 自由(保険外)診療について
  4. インプラント治療と保険について

保険診療と自由(保険外)診療ってなに?

歯科医院・病院で歯の治療をするときは、公的医療保険が適用される保険診療と自由(保険外)診療の2つに分けられます。ここではそれぞれの目的と診療・費用負担の内容についてご紹介します。

保険診療について

公的医療保険が適用される保険診療は、誰でも平等に「悪くなった歯やお口の中を噛めるように回復する」ことを目的とした歯科治療に適用されます。
公的医療保険適用の歯科治療は、保険医療機関として厚生労働省の指定を受けた歯科医院・病院などで、公的医療保険が適用される治療を受けた場合、0~3割(個々人によって異なります)の費用負担で治療を受けることができます。
歯科医院・病院によっては、自由診療の治療のみを行っている場合があります。このような歯科医院・病院では、公的医療保険を適用して治療を受けることはできません。


※注意
保険診療を受けるためには、公的医療保険に加入し医療機関で保険証の提示が必要です。また医療費の負担割合は個々人の収入や年齢などによって異なります。

公的医療保険適用の治療のメリット
・治療費の自己負担額が少ない
・どの保険医療機関でも、一定の費用で治療が受けることができる

公的医療保険適用の治療のデメリット
・治療方法や材料、回数に制限がある
・材料の質や見た目に制限がある

自由(保険外)診療について

治療の必要な歯や健康な歯に、より質の良い治療(見た目や使用感など)を求める場合には、公的医療保険は適用されず、自由(保険外)診療となります。
自由診療は、歯科医師(歯科医院)が独自に治療方針や治療法、費用を決定し、患者さんは全額自己負担で治療を受ける治療です。見た目や噛む機能の向上を目的とするような治療は、保険診療の対象外のため自由診療となります。

メリット

・治療方法や材料の選択肢が豊富である
・見た目の美しさや噛む機能の追求ができる
・最新の高度な治療を受けることができる

デメリット

・治療費の負担が大きい
・医院によって治療費が異なるため、治療内容と費用の比較がしづらい

保険治療と保険外治療について詳しくはこちら

インプラント治療と保険について

インプラント治療は基本的に自由(保険外)診療

・虫歯や歯周病によって歯を失った
・歯周病や加齢による顎の骨の吸収(骨が痩せた)
などが原因のインプラント治療は公的医療保険が適用されません。

上記のような原因は入れ歯やブリッジによって歯を補う治療として公的医療保険が適用されているため、インプラント治療はブリッジや入れ歯よりも「よく噛める・見た目を回復させる」ための治療とされているので、公的医療保険は適用外となります。
公的医療保険が適用されるケースは限られており、ほとんどのインプラント治療が自由診療です。

公的医療保険が適用されるインプラント治療とは

平成24年の4月から、病気や事故などで広範囲にわたって顎の骨と歯をを失ってしまった場合に、国が定めた条件を満たした歯科医院・病院では、インプラント義歯治療(※)が保険適用されるようになりました。
ここでいう病気とは、生まれつきの疾患で顎の骨が欠損している場合や、腫瘍や顎骨骨髄炎によって顎の骨を失った場合のことで、歯周病や虫歯は適用されません。
この場合のインプラント治療は、失った歯の本数分インプラントを入れて人工歯によって補うインプラント治療ではありません。
インプラント義歯(広範囲顎骨支持型装置および広範囲顎骨支持型補綴)と呼ばれる、インプラントを支えにして義歯を安定させる治療です。

公的医療保険が適用される範囲や、公的医療保険適用のインプラント治療が受けられる病院は限られています。
公的医療保険を適用してインプラント治療を受けたい方は、事前に公的医療保険が適用できる歯科医院・病院かどうかを確認して受診する必要があります。
医療保険が適用されるかどうかが知りたい、適用される歯科医院・病院が知りたいという方は、1度かかりつけの歯科医師に相談してみるとよいでしょう。

公的医療保険が適用されるインプラント治療について詳しくはこちら

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。