ブリッジで治療したところをインプラントに変更することはできる?
抜歯をした後、失った歯を補うためにブリッジ治療をしたけれど、よくよく調べてみたらインプラントという選択肢があると知った、という患者さんもいるのではないでしょうか。
調べていくうえで、ブリッジよりもインプラントのほうが魅力的に感じられ、インプラント治療を受けたかったと後悔している方もいるかもしれません。
すでにブリッジ治療を受けていても、インプラントに変更することはできるのでしょうか?
更新日:2023/07/14
■目次
ブリッジ治療をしたところをインプラントにすることは可能?
ブリッジ治療を受けた後、インプラントに変更することは可能です。
その場合、まずはブリッジを取り外し(場合によっては失った歯を補った部分の人工歯のみ切断しそのまま被せ物として使用し)、歯がない元の部分の骨にインプラント体を埋め込みます。
仮に1本欠損で2本の歯を土台にした3本渡しのブリッジを外す場合、この前後の歯2本も被せ物の治療のやり直しが必要です。
ブリッジは失った歯の前後の歯を削って被せているため、ブリッジを外せば全部治療前に戻る、ということではないのです。
ブリッジを外してインプラントをするには、
・ブリッジを外す
・インプラントをする
・歯2本の被せ物を作り直す
の3つの治療が必要になります。
※ブリッジの形状や素材によってはうまく切断することで、再利用できるケースもあります。
インプラントができないこともある
ブリッジにしてから長い期間が経過していると、インプラントを埋め込むべき箇所の骨が使われないことにより痩せてしまっていること(廃用性萎縮が起きている)が多々あります。
そうした場合は、インプラント治療をするためには骨を足す処置(骨造成)が必要になっていたり、インプラントができないと診断されることもあります。
ブリッジ治療の途中でもインプラントにすることは可能?
ブリッジ治療を受けようと治療を進めていたけれど途中でインプラントにしたくなった場合、変更することは基本的には可能です。
ブリッジの土台となる歯をまだ削っていなければ、ブリッジ治療はせずに歯がないところにインプラントをするだけで対応ができますよ。
土台となる歯を既に削ってしまっている場合は、インプラントを埋め込むほかに既に削った歯に単独の被せ物を被せる処置が必要です。
ただし、途中で治療方針を変更した場合はブリッジとインプラントで二重に費用がかかる可能性が高いです。
ブリッジからインプラントに変更した場合どのくらい期間やお金がかかるの?
ブリッジからインプラントに治療方法を変更した場合の費用は、いつ治療方針を変えるかや歯科医院の金額設定などによって大きく異なります。
ブリッジ治療前に変更する場合
ブリッジ治療を始める前、一切治療を始めていない段階でインプラントに変更すると決めた場合、治療計画の立て直し、インプラント治療に必要な診査と診断、そしてインプラントを埋めるための費用などがかかります。
実際にブリッジ治療を開始しているわけではないので、インプラントへの変更にかかる追加費用はこの後に紹介するケースに比べれば大きくかからないでしょう。
ただし、自費診療でブリッジ治療を行うつもりで既に契約している場合は、契約した金額を支払わなければいけないこともあります。
全額支払うことは無いかもしれませんが、金額の一部をキャンセル料として支払うケースは考えられます。
ブリッジ治療中に変更する場合
ブリッジ治療を始めてから変更する場合、どこまで治療が進んでいるかによって大きく異なります。
既にブリッジに必要な土台が作られている場合、少なくとも土台の製作費用は支払わなければなりません。
土台を作った日にブリッジの型取りをする歯科医院もあり、型取りの費用などがかかります。
さらに、型取りしたら当日、遅くとも翌日には技工所にブリッジの作製を依頼する歯科医院が多いでしょう。
治療変更を伝えたときに既に技工所が着手している場合は、いくら不要になったブリッジであっても技工料がかかると考えてください。
ブリッジ治療中のインプラントへの変更の場合、ブリッジ治療費の大半を請求されることが多いでしょう。
ブリッジ治療後に変更する場合
既にブリッジ治療が完了している場合は、ブリッジ治療費全額がかかります。インプラント治療費も無論かかります。
さらに、既に装着されているブリッジを外す処置の費用もかかることが多いでしょう。
また、ブリッジを完全に外すとなると、土台としていた歯の再処置も必要です。
ブリッジをうまく切断して再利用できるケースもありますが、見た目などの問題があれば被せ物を再度作り直すことになりますので、ブリッジの除去費用とインプラント治療費に加えて、歯2本分の被せ物を作り直す費用がかかることを考えておきましょう。
歯科医師からの説明がなかったのに返金できないの?
歯医者がブリッジ治療を始める前にインプラント治療の説明をしてくれていたら最初からそちらを選んだのに…インプラント治療費以外を支払いたくないと考える方もいらっしゃるでしょう。
事前にインプラントについての説明がなかった場合、瑕疵としてブリッジ治療の費用の返金を求めることはできるのでしょうか?
歯科医師には治療に関して患者さんに説明する責任(説明義務)があります。
患者さんが歯科医師からの説明を聞き、治療に関して自己決定ができるようにすることが目的であり、患者さんにわかるように説明する必要があるとされています。
そのため、インプラントについての説明がなかったために患者さんが自己決定できなかった、という考え方もできるでしょう。
しかし、歯科医療は自費診療を含めると多くの治療法や選択肢があり、自費診療の治療内容は歯科医師に必須のスキルではなく、各歯科医師が自主的に知識やスキルを取得する治療です。
歯科医師全員がインプラントの知識やスキルを必ずしも有している訳ではないので、ドクターの知識や技術で最大限患者さんのためにできることを説明していた場合は責任を問えない可能性が高いでしょう。
また、歯科医療現場では金額の大きな自費診療でない場合、ひとつひとつの治療の同意は口頭で行われる傾向にあり、口頭での同意は証明できるものがなく、問題を問うことが難しくなるようです。
歯科医師の説明義務を問うトラブルの多くは弁護士を介した民事訴訟に発展することがあります。
まとめ
ブリッジ治療を始めた後であっても、インプラント治療に切り替えることは可能です。
インプラント治療に切り替えたい場合はブリッジ治療が始まる前に可能な限り早めに伝えることで、費用を安くおさえることができるかもしれません。
もしインプラントという選択肢を初めて知り、もう少し悩みたい場合はブリッジ治療を進めてしまわずに、治療を待ってもらい、結論を出してからブリッジ治療のままでいくのか、インプラントに変更するのかなど今後の治療を決定することをおすすめします。
後になって認識の相違が起こったり仕上がりに後悔することがないよう、どんな治療であっても同意のうえで、納得のいくかたちで治療を進めていきましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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