歯根嚢胞があるとインプラントはできない?

歯の根っこに細菌が溜まって膿となり、その後にできた歯根嚢胞(しこんのうほう)の治療を受けたことがある、または現在治療しているという患者さんの中には、「歯根嚢胞があるので、インプラントにするのは難しい」と歯科医から説明された方もいらっしゃるかと思います。

しかしながら、インプラントにするには現在ある自分の歯を抜いて必要な治療も行うことから、そもそも歯根嚢胞の有無は関係ないようにも感じられますよね。
歯根嚢胞があると本当にインプラントにはできず、あきらめるしかないのでしょうか。

歯根嚢胞があるとインプラントはできないといわれる理由をはじめ、歯根嚢胞がある患者さんがインプラントにするための治療方法などを解説します。

更新日:2022/08/01

歯根嚢胞 インプラントできない

■目次

  1. 歯根嚢胞とは
  2. 歯根嚢胞があるとインプラントができないといわれる理由
  3. 骨が治ればインプラントはできる!
  4. 骨造成で骨を回復
  5. まとめ

歯根嚢胞とは

歯根嚢胞

歯根嚢胞は、顎の骨にある歯根部分に、嚢胞と呼ばれる袋状のものが生じている状態です。
虫歯や外傷をきっかけに、歯の内部の神経が死んでしまい、菌が侵入して歯根の先端にまで及ぶことがあります。

歯根周囲も菌が拡大し、根尖性歯周炎を発症します。根尖性歯周炎が慢性化することで、歯根肉芽腫や歯根嚢胞が生じます。
歯根嚢胞は永久歯の歯根にできることがほとんどで、顎の骨の中で徐々に大きくなっていき、症状も少ないため気づきにくい病気です。

歯根嚢胞が発症している箇所は、レントゲンで虫歯や外傷で歯の神経が死んでいる歯根の周囲が空洞になってレントゲンに写ることがあります。
※歯根嚢胞であるか否かを正確に見極めるには、病理組織検査が必要になります。

歯根嚢胞の最初の大きさはえんどう豆程度の大きさですが、大きくなることも。
また、治療としては歯の根っこ部分の根管治療で済むこともある一方で、摘出手術を行うことも多いです。

場合によっては、原因歯の抜歯を行うこともあります。

歯根嚢胞があるとインプラントができないといわれる理由

歯根嚢胞 インプラントできない理由

歯根嚢胞を発症しているということは、原因となった歯根周辺の顎の骨が、歯根嚢胞の大きさ分無いことを意味しています。

インプラントは顎の骨に人工歯根を埋め込むため、土台となる顎の骨には十分な厚みや高さが必要となります。
顎の骨がない部分にインプラントを埋め込んだ場合、インプラントが安定しなかったり、骨を突き抜けてしまったりして、治療失敗となる可能性があるのです。

インプラントを入れた直後は問題なくても、歯根周囲に潜んでいる細菌によるインプラント周囲炎などでもありトラブルが起こることも考えられます。

こうした理由から、歯根嚢胞があるとインプラントはできないといわれるのです。

骨が治ればインプラントはできる!

インプラント 骨造成

歯根嚢胞によって、原因となった歯根周辺の顎の骨がなくなった場合、無くなった骨が回復すればインプラントは可能です。

原因となった歯を抜歯して、歯根嚢胞があった部分をきれいにしたら、顎の骨の回復を待ちましょう。
ただし、歯根嚢胞が大きかった場合などは、顎の骨が完全に回復しない可能性もあります。

骨造成で骨を回復

歯根嚢胞 インプラント 骨造成

歯根嚢胞が大きいなどで顎の骨が完全に回復しない場合も、骨造成という治療で回復させる方法があります自分の他の部分の骨や人工材料を歯根嚢胞で欠損してしまった骨の部分に足すことで回復を促します。

歯根嚢胞をしっかりと治療し、必要な顎の骨の厚みや高さまで再生すれば、インプラントにすることが可能なのです。

まとめ

歯根嚢胞があると、すぐにインプラントにすることが難しい場合が多いです。しかしながら、インプラントをあきらめて入れ歯やブリッジにするしか選択肢がないということはありません。歯根嚢胞をしっかりと治療した後に、顎の骨が回復すれば、インプラントにすることも可能です。

場合によっては顎の骨を回復させる治療が必要になるかもしれませんが、まずは歯科医に相談してみましょう。

記事監修

記事監修:古川雄亮

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。
歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。
2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。