アタッチメントロスとは?歯周病の進行度合いとあわせて理解しよう

「歯周病ではないかと思い、歯周病を検索したら「アタッチメントロス」という知らない単語が出てきた。このアタッチメントロスって、いったいどんな状態のことを指す言葉なの?」そんな疑問をお持ちの方も、いらっしゃるかもしれません。

「アタッチメント」は「接続・付着」などの意味を持つ言葉で、アタッチメントロスという言葉は「付着が失われた」状態のことを指します。今回、歯科でのアタッチメントロスの具体的な意味に加えて、発生するケースや実際の対処法などについて解説します。

更新日:2024/07/30

アタッチメントロス(歯周病)

■目次

  1. アタッチメントロスとは
  2. 歯周病は進行度合いによって2つに分かれる
  3. 歯肉炎【アタッチメントロスは生じない】
  4. 歯周炎【アタッチメントロスが生じる】
  5. 歯周炎の種類
  6. 慢性歯周炎
  7. 侵襲性歯周炎
  8. 遺伝疾患に伴う歯周炎
  9. 歯周病治療の流れ【7STEP】
  10. STEP①検査
  11. STEP②基本治療
  12. プラークコントロール
  13. スケーリング・ルートプレーニング
  14. STEP③再評価検査1
  15. STEP④外科治療
  16. フラップ手術
  17. 歯周組織再生療法
  18. 歯周形成外科手術
  19. STEP⑤再評価検査2
  20. STEP⑥口腔機能回復治療
  21. STEP⑦メンテナンス
  22. アタッチメントロスが生じる歯周病で歯を失った場合はインプラントの検討を
  23. まとめ

アタッチメントロスとは

アタッチメントロス(歯周病)

アタッチメントロスとは、主に炎症で歯と歯肉の付着が失われた状態です。この状態になると、歯と歯肉がくっついている位置を指す「アタッチメントレベル」が歯根の方向へと移動してしまうため、歯と歯肉の間にできる隙間である、「歯周ポケット」が深くなっていきます。

アタッチメントロスによって失われた歯と歯肉の付着を回復することを、「アタッチメントゲイン」と呼びます。仮にアタッチメントロスが生じてしまった場合は、アタッチメントゲインによる改善を図ります。

歯周病は進行度合いによって2つに分かれる

歯周病では、歯と歯肉の間に生じる歯周ポケットにおいて細菌が増殖し、歯肉が炎症を引き起こした状態になります。また、歯茎が腫れて出血する初期段階を「歯肉炎」、進行して骨が溶けていく状態を「歯周炎」とされており、進行の度合いによって2つに分類されます。

歯肉炎【アタッチメントロスは生じない】

歯肉炎は歯周病の初期状態です。炎症の発生部位は歯肉のみに限定され、アタッチメントロスが生じていません。この段階であれば、ブラッシングなどによってお口の中の歯垢を除去することによって、歯肉を健康な状態に戻すことが可能です。

症状としては、歯茎がふっくらと腫れて、ピンク色の歯茎の色が赤色に変わります。ブラッシングを行った際に容易に出血したり、歯周ポケットに歯垢が溜まることによって、歯周病の症状がさらに悪化するでしょう。

歯周炎【アタッチメントロスが生じる】

歯周炎とは、歯肉炎からさらに症状が進行し、炎症が歯根膜(しこんまく)や歯槽骨(しそうこつ)まで広がり、アタッチメントロスが発生します。それによって、歯周ポケットも深くなっていき、歯が動揺し最終的に歯が脱落することにもつながりかねません。

さらに、歯肉が赤紫色に変色したり、歯肉の腫れが増したり、ブラッシングの際に出血に加えて膿が出たりといった症状も現れます。歯茎が下がり歯と歯茎の間にある三角形の隙間(ブラックトライアングル)が広がって物が詰まりやすくなったり、歯が長く見える症状も見られます。

歯周炎の種類

アタッチメントロス(歯周病)

歯周炎と一口に言っても種類があります。歯周炎の中における具体的な分類としては、以下の3つが存在します。

慢性歯周炎

慢性歯周炎は、慢性的な炎症が歯周病原の細菌によって引き起こされている状態です。35歳以上の年齢で発症することが多いといわれており、アタッチメントロスによる歯周ポケットの形成や、歯槽骨の吸収と歯のぐらつき、出血、排膿などの症状を誘発しやすくなります。

侵襲性歯周炎

侵襲性歯周炎は、アタッチメントロスや歯槽骨の吸収が急速に進行し、一気に歯周組織が破壊されていくタイプの歯周炎です。10~30代と比較的若年層の患者さんに発症することが多く、細菌性の歯垢の付着量が少ない点が特徴です。また、場合によっては生体防御機能や免疫に異常をきたすケースもありますが、発症率は1%未満です。前歯や奥歯(前から数えて6番目の歯)に起こりやすいです。

遺伝疾患に伴う歯周炎

遺伝疾患に伴う歯周炎とは、遺伝による全身的な異常を伴う疾患を原因とした歯周炎です。ダウン症候群、家族性周期性好中球減少症、白血球接着不全症、パピヨン・ルフェーブル症候群などが主な原因であり、急速に歯周病が進行する特徴があります。

歯周病治療の流れ【7STEP】

アタッチメントロス(歯周病)

歯周病の治療は基本的に7つのステップを踏んでいきます。

STEP①検査

まず始めに、歯周ポケットの深さや歯垢の付着度合い、歯肉からの出血の有無、歯のぐらつきといった、お口の中の状態を確認するための検査を行っていきます。検査の中には、お口の中のカラー写真ならびにX線写真の撮影も含まれており、それらの検査結果に応じて治療計画を立てていくことになります。

STEP②基本治療

基本治療とは、歯周病の進行度に関係なく、治療の初期段階の処置のことです。歯周病の原因となる歯垢や歯石の除去に加えて、歯がぐらついている場合は噛み合わせの調整などもこの段階で行っていきます。

プラークコントロール

歯周病の原因となる歯垢(プラーク)を除去する「プラークコントロール」は、治療に際して非常に重要な要素です。歯科医院における処置だけでなく、患者さん自身によるブラッシングなどのセルフケアを行う必要もあるため、歯科医師が患者さんに対して、正しいブラッシングができるように指導を行うことも多いです。

スケーリング・ルートプレーニング

歯垢が固まってできる「歯石」の表面には、別の歯垢が溜まっていきます。歯石を放置すると歯周病のリスクを高めることになるため、スケーラーを用いて歯石を取り除く「スケーリング」や、歯根の表面の歯石の除去や表面をツルツルにする「ルートプレーニング」が必要です。

STEP③再評価検査1

基本治療が終わったら、歯周検査を再度受けて、最初の検査時と比較した際の値の変化を評価します。検査結果に基づいて新たな治療計画を立てます。

STEP④外科治療

歯石が歯周ポケットの奥深くに位置しており除去が難しい、といったケースをはじめ、基本治療だけでは抜本的な解決が見込めない場合は、外科手術によって歯周ポケットの深さを改善したり、失われた歯周組織の再生を図っていきます。

フラップ手術

フラップ手術とは、治療箇所の歯肉に麻酔して切開し、普段見えない部分の歯石などの汚れを取り除いて切開した歯肉を縫合する手術です。術後は痛み止めや化膿止めを服用し、およそ1週間後に抜糸を行います。

歯周組織再生療法

歯周組織再生療法は、失われた歯周組織を特殊な膜や再生誘導物質を用いて再生を促す治療です。通常の治療のみでは歯周組織の再生が期待できません。外科手術が必須となる治療法です。

歯周形成外科手術

歯周形成外科手術は、局所的に退縮してしまった歯肉などの形態を回復し、審美面の改善を図るための手法です。お口の中の環境改善を図るフラップ手術や歯周組織再生療法とは根本的な目的が異なるだけでなく、術式そのものにも大きな違いがあります。

STEP⑤再評価検査2

外科手術後に再度の歯周検査を受けます。手術によって抜本的な改善がなされたかに応じ、メンテナンスへと移るか、さらなる治療を受けるかを決めます。

STEP⑥口腔機能回復治療

歯周病の影響などで噛む力に何らかの問題が生じた場合、歯周治療を通じて向上を図ります。治療によって改善された歯に対して、必要があれば被せ物(クラウン)・入れ歯・ブリッジを装着して噛む力や歯の機能性を高め、日常生活に支障が生じないようにしていきます。

STEP⑦メンテナンス

歯周治療のステップが全て終了したら、その後はメンテナンスへと移行していきます。歯周病は再発の危険性が高い病気でもあるため、定期的に歯医者に足を運んで検査とクリーニングを受けるだけでなく、日常的な歯磨きや規則正しい生活の維持といったセルフケアを続けることによって、再発防止に務めていく必要があります。

アタッチメントロスが生じる歯周病で歯を失った場合はインプラントの検討を

アタッチメントロス(歯周病)

アタッチメントロスが生じる歯周病になると骨が溶けることによって最終的に歯を失ってしまう可能性があります。歯を失った場合の選択肢の一つとして、人工歯根を埋め込んで人工歯を被せていく「インプラント」という治療法があります。

インプラントは、天然歯に近い機能性や噛み心地を実現でき、周囲の歯に大きな負担をかける心配もありません。外科手術が必要で、治療費も高額になりやすい点に注意が必要ですが、大きなメリットをいくつも享受できる治療法となっています。

まとめ

アタッチメントロスとは、歯周病の進行によって、歯肉の位置が歯の根っこ側に移動する現象です。歯周病は進行度合いによって「歯肉炎」と「歯周炎」の2つに分類され、アタッチメントロスが生じるのは歯周炎の段階まで症状が進行してからです。

歯周病になってから適切な治療を受けずにいると、アタッチメントロスが生じて骨が溶け、最終的に歯を失う恐れがあります。早い段階でプラークコントロールをして症状の進行を食い止めることが最も望ましいですが、歯を失った場合はインプラント治療によって人工歯を埋め込むことも可能です。

歯の状態に応じた最善の処置を受けましょう。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。