インプラントが受けられない! 慢性疾患や持病がある場合

手術を伴うインプラント治療は、糖尿病や心臓病といった慢性疾患や、癌治療を受けている方の場合は受けるのが難しい場合があります。どんな症状の時にリスクがあるのか、それを知っていることでインプラントが本当に難しいのかや、治療を受けられる可能性を知ることが出来ます。

更新日:2021/12/03

インプラントが受けられない! 慢性疾患や持病がある場合

■目次

  1. こんな方は要注意!
  2. 糖尿病をお持ちのかた
  3. 心臓病をお持ちのかた
  4. 高血圧をお持ちのかた
  5. 肝臓病をお持ちのかた
  6. 腎疾患をお持ちのかた
  7. 骨粗鬆症のかた
  8. 癌治療中のかた

こんな方は要注意!

こんな方は要注意!

インプラント治療は、歯茎を切り開き、あごの骨にインプラントを埋め入れる外科手術が必要です。全身疾患をお持ちのかたは、その外科手術が身体に大きな負担をかける恐れがあり、お身体の状態によっては、インプラント治療が難しいと判断されることもあります。
疾病別にインプラント治療が困難な場合について、下記にご紹介します。

糖尿病をお持ちのかた

糖尿病をお持ちのかた

血液の循環が悪く、感染しやすい

血糖値やヘモグロビンA1c値が病的に高いが、主治医の指示通りに通院していないかたや、血糖値などのコントロールができていないかたは、インプラント治療を受けることは難しいでしょう。糖尿病のかたは、血液の循環が悪く、栄養や酸素を十分に送ることができないために傷が治りにくく、また、免疫力の低下によって傷口から感染しやすくなります。きちんとコントロールができていない状態で、インプラントを埋め入れる外科手術をすると、手術後に感染し、化膿してしまうことや、インプラントがあごの骨と結合しないことなどが考えられます。また、治療中のストレスによって血糖値に変化が生じやすく、高血糖や低血糖状態に陥る可能性が高くなります。

>>糖尿病とインプラント

心臓病をお持ちのかた

心臓病をお持ちのかた

発作を起こす可能性がある

心臓の病気で通院している、または過去に通院していたかたは、インプラント治療が受けられる状態かどうか、まずは主治医に相談しましょう。下記に該当するかたは、特にインプラント治療を受けることが難しいでしょう。

・心筋梗塞、狭心症のかた
4週間以内に狭心発作が回数を増してきた場合や、安静状態においても狭心発作が生じる場合は、不安定狭心症(切迫梗塞)とよばれ、心筋梗塞発作に移行やすい危険な時期のため、歯科治療自体を避けることが望ましいとされています。

・僧帽弁置換術を受けたかた、ペースメーカーを入れているかた
インプラント治療などの出血を伴う外科処置を行うと、感染性心内膜炎になる懸念があります。

高血圧をお持ちのかた

高血圧をお持ちのかた

合併症の恐れがある

高血圧であるが、主治医の指示通りに通院や薬の服用をしていないかたは、インプラント治療を受けることは難しいでしょう。治療中に、脳出血や脳梗塞などの合併症を引き起こす可能性があります。

肝臓病をお持ちのかた

肝臓病をお持ちのかた

止血しにくい恐れがある

肝硬変や、重度の肝臓病をお持ちのかたは、肝機能障害のため、インプラント手術後に血が止まらなくなることが考えられます。また、インプラント手術前後に服用する薬によって、肝機能をさらに低下させることもありますので、インプラント治療を受けることは難しいでしょう。

腎疾患をお持ちのかた

腎疾患をお持ちのかた

免疫力の低下が考えられる

腎不全のため透析治療をされているかたや、重度の腎疾患をお持ちのかたは、免疫力が低下しているため、傷が治りにくいことや、血が止まりにくいことなどがあります。また、骨の状態がもろくなっていることもあるため、インプラントがあごの骨と結合しないことも考えられますので、インプラント治療を受けることは難しいでしょう。

骨粗鬆症のかた

骨粗鬆症のかた

服用している薬の種類に注意が必要

骨粗鬆症の治療のために、ビスフォスフォネート系薬剤の服用(あるいは注射)をしているかた、または過去にしていたかたは、抜歯やインプラントの外科手術をすると、骨が壊死する(骨が部分的に死滅する)恐れがあります。お薬の種類や、服用(または注射)をしていた時期やその期間によっては、治療が可能と判断されることもありますので、まずは主治医に相談しましょう。

癌治療中のかた

癌治療中のかた

骨の治癒力が低下している可能性がある

癌の治療のために放射線治療をおこなっているかた、または過去にしていたかたで、あごの骨に放射線照射していたかたは、骨の治癒力が低下しているため、抜歯やインプラント治療は避けたほうが望ましいとされています。あごの骨に外科手術を行っても問題が無いかどうか、まずは主治医に相談しましょう。



上記のように、症状の重いかたや、身体の状態が安定していないかたは、インプラント治療を受けることが難しいでしょう。しかし、お身体の状態によっては、インプラント治療が可能となることもあります。全身疾患をお持ちのかたで、インプラント治療をお考えのかたは、歯科へ受診の際に、かかりつけ医の診察券など連絡先が分かるものを持参しましょう。歯科医師が、かかりつけの主治医と連絡をとり、治療方法について検討することもあります。

なお、過去に全身疾患を指摘されたことはないが、動悸、息ぎれ、めまい、呼吸困難、むくみ、胸痛、不整脈など、身体に不安な症状があるかたは、歯科へ受診する前に、健康診断を受けておくことをお勧めします。

記事提供

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。