インプラントが外れてしまった!?トラブル対応法について
インプラント治療後に外れてしまった!インプラント治療は成功率の高い治療といわれていますが100%ではありません。不運にもインプラントが外れてしまった場合はどのような点に注意すればいいのでしょうか。外れてしまった原因と対応法、抜けた理由毎の注意点や、再治療ができない場合、再治療を受けるうえで注意すべき点、歯医者を受診するときのアドバイス、などについてご紹介しています。
更新日:2021/12/07
■目次
インプラント治療のトラブル~治療後にインプラントが外れてしまう原因~
次のことが原因で起こっていることが考えられます。
■補綴物(入れ歯、または被せ物)が外れた場合
1.ネジの緩みや破損、ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり)、または、セメントの劣化
2.補綴物の破損
■アバットメントが外れた場合
1.アバットメントをつけているネジの緩みや破損、食いしばり
2.アバットメントの破損
■インプラントが外れた場合
1.インプラント周囲炎、食いしばりによって、顎の骨が吸収している
2.インプラントの破損
インプラントが外れてしまう【歯科医院側の問題】
細菌感染によるもの
インプラントを埋め入れる際に、何らかの原因によってインプラントに細菌が入り込み、感染を起こすことによって抜け落ちてしまうことがあります。
主な原因としては、下記のことが考えられます。
■お口の中にある炎症の影響
他の歯の炎症が波及した、または歯周病菌が多かったことによって、感染を起こすことがあります。
該当する箇所の治療を受けることで、お口の中の細菌の数が少なくなれば、再びインプラント治療を受けることができます。
■環境の問題
感染対策の不足、または手術を行う場所の衛生管理の不足によって、感染を引き起こすことがあります。衛生面や環境に問題が感じられる場合は、感染対策について尋ねてみましょう。HPでも滅菌器を使用しているなどの情報を得ることができます。
埋入時のダメージによるもの
インプラントを埋め入れる際に、器具の使用方法を誤ったり、顎の骨が硬すぎたりすると、顎骨に摩擦熱が発生し、壊死を起こして抜け落ちてしまうことがあります。
器具の使用方法が誤っているとわかった場合は、ヒューマンエラーによるものですので、このようなトラブルが起こらないための歯科医院側の対応法について聞いておくとよいでしょう。
骨の問題で起こってしまった場合、多くの医院ではCTで顎骨の骨密度を確認し、再治療が可能かどうかを診断します。
大きな力が加わったことによるもの
大きな力がインプラントに加わり、過度の負担がかかってしまったことで、抜け落ちてしまうことがあります。主な原因としては、下記のことが考えられます。
■歯ぎしりや食いしばりによるもの
お口の周りの機能や生活習慣などの改善を含め、マウスピース治療を行うことで、歯ぎしりや食いしばりの緩和や改善が期待できる場合、インプラント治療を受けられることが多いです。緩和や改善が見込めない場合は、インプラント治療以外(ブリッジや入れ歯)の方法を選択しましょう。
■噛み合わせや入れ歯などの調整不足によるもの
噛んだときに少しでも違和感があれば、早めに歯科医師に相談するようにしましょう。
また、入れ歯を使用の際は歯科医師の指示に従うようにし、調整していない入れ歯の使用は絶対に避けましょう。
インプラントが外れてしまう【患者側の問題】
喫煙による血行障害によるもの
喫煙により歯周組織の毛細血管が収縮して血行が悪くなり、インプラントと骨の結合を阻害して、抜け落ちてしまうことがあります。
禁煙することによって、状態が改善されることが見込めます。インプラント治療を受けたいのであれば、治療後は禁煙する覚悟であることが望ましいです。
全身疾患の影響によるもの
骨粗鬆症や糖尿病などの全身疾患の影響により、インプラントと骨の結合が阻害され、抜け落ちてしまうことがあります。全身の健康状態が整ってから、改めてインプラント治療を受けることも一つの方法です。内科医や担当の歯科医師と、治療を行う時期をよく相談しましょう。
>>インプラント治療が受けられない可能性のある方
治療後の定期検診やメインテナンスを怠ったことによるもの
治療後の定期検診やメインテナンスを怠ったために、噛み合わせが変わったり、汚れが蓄積しインプラント周囲炎になったりして抜け落ちてしまうことがあります。
検診に行けない事情があれば、歯科医師に必ず相談しましょう。また、メインテナンスがしづらいのであれば、対策方法を検討してもらいましょう。
インプラントが外れた場合の対処法
自分自身で再び付けることはできませんので、インプラント治療を受けた歯科医院に連絡し、適切な処置を受けましょう。放っておくと、周りの歯に悪影響を及ぼすこともあります。
インプラントが外れて受診するまでの間は、硬い食べ物は極力避け、外れた箇所に過度な負担がかからないようにしましょう。さらに負担が加わった場合は、さらなるトラブルが起こることも考えられます。
インプラントそのものが抜けていなければ、状態によっては再び付けられることもあります。外れたパーツは受診の際に持っていくようにしましょう。
※注意点…外れたものを再びお口の中に入れることは止めましょう。
外れたものを再びお口の中に入れると、別の部分に新たなトラブルを引き起こしたり、パーツを飲み込んでしまったりすることが考えられます。
※補綴物がぐらついている場合
補綴物がぐらついていることが分かったとしても、 瞬間接着剤などで固定することは絶対に避けましょう。自己対処では噛み合わせが変わり、 インプラントや周りの歯に影響してしまう可能性もあります。
また、再び補綴物を付ける際は、細菌を取り除くことも重要です。 接着剤と一緒に細菌を閉じ込めてしまうと、 口臭の原因やインプラント周囲炎などのトラブルも考えられます。
インプラントが外れた場合に、歯医者へ行くときのアドバイス
■伝えておくこと
・外れた時の状況(いつ、何をして外れ、今どのような口の状態なのか)
■聞いておくこと
・インプラント周囲炎が関与している場合は、部分的に発生することは少なく、他の箇所でも似たような症状が進行していることが多くあります。
お口の健康を守るために、食生活の注意点や改善点も歯科医院に確認しましょう。
外れたパーツは、ティッシュで包むと誤ってゴミ箱に捨ててしまいやすいので避けましょう。作り直すためにもう一度高額な費用を支払う可能性が高くなります。できれば、マウスピースや入れ歯の入るプラスチック製のケースなどで保管し、外れたパーツが変形しないようにしておきましょう。
また、一度ぐらつきだすと気になるかもしれませんが、手で押したり、歯を噛み合わせたりして、その歯をさらに揺らすことは止めましょう。
インプラント治療で何か困ったことがあれば、遠慮せず歯科医院に連絡しましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開
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