側方からのサイナスリフト適応症例に対して歯槽骨頂からのアプローチ

歯科インプラントに関する治療説明『側方からのサイナスリフト適応症例に対して歯槽骨頂からのアプローチ』についてご紹介します。歯を失ってお困りの方、入れ歯・ブリッジが合わない方は是非ご覧下さい。

更新日:2019/09/25

■目次

  1. 論文紹介
  2. 緒言
  3. 目的
  4. 診断
  5. 方法
  6. 結果
  7. 結論

論文紹介

緒言

現在、サイナスリフト治療法は、萎縮した上顎骨のインプラント埋入に応用され、予知性のある療法として認められています。 残存歯槽骨の厚径によって、側方からのアプローチか、歯槽骨頂からのアプローチかが選択されます。サイナスリフトは、1978年に Dr.Hilt Tatum によって考案発表されました。 
最近になって、Dr.R.Lazarraがオステオトームを使って、歯槽骨頂からのアプローチ(SocketLift)を試み、多数の論文を発表しています。
歯槽骨頂の厚径が少なくとも0mmから7mmの時は、側方からのアプローチ、いわゆるSinus Liftが推奨されていますが、我々は極度に萎縮した症例(2mmから3mmの歯槽骨厚径)に、歯槽骨頂からアプローチ(SocketLift)し、インプラントの初期固定の問題もクリアーし、Sinus Augmentationにも満足な結果を得たので報告します。我々はこの療法を『ApplyBone Plug to Socket Lift』と呼んでいます。

目的

パノラミックの所見では、#14,#15,#16,#17,#24,#25,#26 & #27が欠損で、患者は局部床義歯を装着しているが、義歯の不調を訴え、インプラント治療を希望しているが、両上顎骨とも極度に萎縮しており、インプラントを埋入するために骨の増大が必要である。この症例では側方からのアプローチが適応であるが、患者からの了解が得にくく、術後の問題もあり、歯槽骨頂からのアプローチ(ソケットリフト)を行いました。

診断

左右の上顎臼歯部の骨萎縮

方法

側方からのサイナスリフト適応症例に対して歯槽骨頂からのアプローチ

左右上顎の萎縮した骨(2~3mm)に対して,#16,#17,#26,#27に4本の酸エッチングで加工されたノーベルバイオケアー社のTiUnite?を用いた。最初に歯肉弁を形成し、直径3.5mmのトレフィンバーを用いて、上顎洞底から約1mmの骨を残して、骨栓を形成した。 その後、ソケットリフターで一体化した骨栓と上顎洞粘膜を注意深く挙上し、そのソケット(アクセスホール)を通して、HAとOsteogen のコンポジットGraft材を添入した。4本のインプラントフィクスチャーを並行性を保ちながら、埋入し、カバースクリューを装着後、歯肉弁を復位した。

結果

すべてのケースに良好な初期固定が得られ、何ら臨床的に問題はなかった。手術3ヶ月後に2次手術を行い、その結果、良好なオステオインテグレーションがえられ、動揺もみられず、槌打に対する濁音もなく無症状で、辺縁の骨吸収も見られなかった。

結論

この改良外科技術を臨床の場において成功するためには、以下の大切な事項が必要であると示唆された。(1)歯槽骨頂アプローチからの外傷のない小さな窓の形成。(2)短時間のインプラント埋入と同時の処置。(3)上顎洞粘膜の注意深い挙上。(4)Graft材の注意深い挿入。

記事提供

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。