口腔外科で行われるインプラント治療
インプラント治療は、顎の骨に人工歯根(チタン・下部構造)を埋め込む外科手術を伴うため、歯科治療の中では口腔外科の専門性が高い治療です。インプラント治療を行う歯科医師は口腔外科の知識や技術も必要とされます。一般歯科と口腔外科の違いやインプラント治療に口腔外科の知識が必要な理由ついてご紹介します。
更新日:2021/05/17
■目次
一般歯科と口腔外科の違い
インプラント治療を掲げている歯科医院はたくさんあります。
その中でも一般歯科と口腔外科は何が異なるのでしょうか。
一般歯科
審美歯科や矯正歯科などを除く、いわゆる虫歯治療や歯周病治療を中心に行います。
虫歯の歯の詰め物・被せ物をする、入れ歯を作る、歯石の除去や着色取りのクリーニングなどを受けることができます。
歯科医院によっては、小児歯科、矯正歯科、インプラント治療を含む場合もあります。
大抵は公的医療保険が適用される治療を行っていますが、見た目を気にする患者さんが増えていることから、自費診療として審美歯科を取り入れている歯科医院も増えています。
口腔外科
お口の中や顎、顔面周囲の外科処置を行うのが口腔外科です。
骨に埋まっている親知らずの抜歯や、口腔がん治療、唇顎口蓋裂の治療などの治療に対応しています。
事故により顎の骨の骨折や歯が折れたなどの外傷を負った場合も口腔外科にかかります。
インプラント治療における一般歯科と口腔外科の違い
では、インプラント治療を受けるには一般歯科と口腔外科どちらがいいのでしょうか。
実はインプラント治療は、歯科医師であれば誰でも行える治療であり、特別な資格が必要な治療ではありません。
一般歯科では口腔外科専門医以外の歯科医師がインプラント治療を行っている傾向にありますが、十分な口腔外科の知識があれば問題ないといえるでしょう。
インプラント治療を受ける歯科医院を選ぶには、治療や費用についてわかりやすい説明を行ってくれたかどうか、質問に対して誠実に回答してくれたか、インプラント治療を受けるメリット・デメリットを詳しく説明してくれたかなど、歯科医師との信頼関係の築ける歯科医院を選ぶとよいでしょう。
インプラント治療は緊急性の高い治療ではないため、納得できる歯科医院を探して治療を受けることをおすすめします。
口腔外科の知識が必要な理由
顎の骨の中には、神経や血管、鼻腔(びくう)などの組織があり、インプラントを埋め込む治療時に診断や治療を誤ってしまうと、次のようなトラブルが起きることがあります。
●動脈を傷つけ、止血が困難になる
●神経を傷つけ、感覚麻痺になる
●鼻腔を傷つけ、蓄膿症になる など
そして、外科手術は出血を伴う治療のため、全身管理や感染症対策も重要視されます。
全身管理や感染症対策が不十分であると、次のようなトラブルの可能性があります。
●インプラントが顎の骨と結合しない(抜け落ちる)
●術後感染し腫れや痛みが強く出る
●健康状態に支障がでる
このようなことから、インプラントを埋め込む手術を行うには、顎の骨に通っている神経や血管、鼻腔など解剖学的知識や口腔外科に関わる治療技術が必要となるのです。
また、顎の骨が痩せている場合は、インプラントを十分支えられるだけの骨を造る必要があります。痩せたままインプラントを埋入した場合、インプラントと骨が結合せず抜け落ちることや、見た目に悪影響を及ぼす(※)こともありますので、骨を増やす手術を行うスキルなども求められます。
≫ソケットリフトとサイナスリフトの違い
≫スプリットクレストとは?
≫GBRとは?骨造成・骨誘導再生をイラスト付きで解説
※インプラント治療により見た目がキレイになるポイント
一般的に、両隣の歯と歯茎のラインと、インプラント治療箇所の歯茎のラインが揃っていれば、見た目に不自然さがないといわれています。
顎の骨が痩せたままインプラント治療を行うと、上部構造(歯冠部分)が長い仕上がりになることもあります。
インプラント治療の中で口腔外科にあたる部分
【インプラントを埋め入れる手術】
インプラントは、顎の骨に埋め込む「インプラント体(人工歯根・下部構造)」と、失った歯の代わりとなる「上部構造(人工歯)」、インプラント体と上部構造を連結する「アバットメント」の3つのパーツで主に構成されています。
インプラント体とアバットメントを顎の骨に埋め込むためには、歯茎を切り開いて、顎の骨を削るなどの処置が必要です。
また、上記でもご説明した通り、インプラント体を顎の骨に埋め込む際に、顎の骨を通っている血管や神経、鼻腔との距離を考慮し、埋め込む位置や角度を決めるなど口腔外科の知識が必要とされています。
●一次手術:インプラント体を顎の骨に埋め込む手術
●二次手術:インプラント体にアバットメントを取り付ける手術(一次手術と同時に行われることもあります。)
≫インプラントの1回法と2回法の違いとは
【顎の骨を増やす手術】
患者さんのお口の中に適した方法でインプラントが埋め込める程度の顎の骨を造る治療では、外科的処置が多くなり、感染のリスクも高まります。
また、インプラントを埋め込むための高度な技術が必要とされています。
●サイナスリフト、ソケットリフト:上顎奥歯の骨の上にある粘膜(副鼻腔のシュナイダー膜)を持ち上げてスペースを作り、移植材をつめて骨を造る方法
●GBR(骨誘導再生):メンブレンと呼ばれる人工膜を使って骨の再生を促す方法
●ベニアグラフト、オンレーグラフト:自分の骨(下顎や骨盤)を削って、移植したい部分にネジで固定する方法など
⇒顎の骨にかかわる手術
【歯肉移植】
インプラントを入れた後の見た目をきれいにするために、痩せてしまった歯茎に厚みを出す治療です。
歯茎が下がってしまった、痩せてしまった部分へお口の中の別の部分から歯茎を移植するなど外科的な処置を行うため、口腔外科の知識が必要とされています。
⇒下がっている歯茎を移植によって増やす治療「CTG」
⇒下がっている歯茎を移植によって増やす治療「FGG」
おわりに
インプラントは機能的・審美的(見た目)にも優れた治療方法ですが、外科手術を伴う治療のためリスクもあります。
インプラント治療は患者さんによってメリット・デメリットが異なります。インプラント治療を行う担当医と相談しながら、自分に合った治療法を選びましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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