インプラント治療の"光"、光機能化技術でより安全な治療へ
日本が世界をリードしていく技術。次世代技術はすでにここに。
- ――「光機能化技術」は、これまでのインプラントの課題を一挙に改善することができる素晴らしい技術ですが、今後のこの技術の普及ついての展望をお聞かせください。
- 「光機能化技術は、万能というわけでも100%成功するということでもありません。ただ、歯科医院が光機能化を導入することによって、最善のインプラントを提供することができ、患者様に提案できる治療方針が増えることは間違いありません。また、長期の安定性、低侵襲などのメリットが増えることを考えると、光機能化を使用しないインプラント治療は減少していくことと思います。先日開かれた『光機能化サミット』という学会でも、ある有名な先生が、『いつでも、どこのクリニックでも、安定して高い治療結果が出せる技術が開発されたのですから、使わない理由はないでしょう』とおっしゃっていました。」
- 「また、現在のインプラントは製造されてからの時間の長さに応じて、性能が劣化する『インプラントの生物学的老化』に見舞われていて、これはAO(米国・国際インプラント学会)でも、『インプラントの老化を克服することが治療の成功の鍵』と取り上げられているほどです。現在、ヨーロッパ32か国で、光機能化技術は認められ、先行ユーザーへの導入が始まりました。光機能化では、1本1本違う形で老化したインプラントをすべて、均一に、最高の状態に戻すことができるわけですから、平等な治療が可能です。材料の観点から、ベストプラクティス(最高の臨床)が可能な光機能化を使ったインプラント治療は、今後、世界で標準化していくことでしょう。」
- ――光機能化の世界標準化。インプラント業界にとって大きな変化ですね。
- 「そうです。そして、この新しい技術は、日本が世界を先行しています。日本が先頭を切るということは、日本の歯科医師が光機能化の臨床結果を発表し、それを欧米を始め海外の歯科医師が学んでいくわけです。日本の歯科医師が世界から尊敬を集めるでしょうし、日本を拠点にした世界展開が確立すると思っています。すでに光機能化に関して、多くの論文が日本から排出されていて、世界からの注目を集めています。欧米の雑誌の特集や教育サイトにも採用されています。とてもすばらしい貢献です。私自身、日本の歯科医師をとても誇りに思います。」
▲光機能化技術を世界に発信するグローバルサイト 「そして、これらのことは、様々な国益を生み出します。歯科の医療で日本がこのような大きなリーダーシップをとることは初めてではないでしょうか。ですから、日本の歯科医師は、是非、その自覚と誇りをもってほしいと願っています。たとえば、この光機能化は、間違った使用方法、適正化されていない光源などを用いて行っても、期待された効果は得られない事がわかっています。検証された方法で、確かな使用をしないとインプラント治療の信用、さらには世界への間違った情報発信にも関わってくるのです。今後、安全と安心のインプラント治療を提供する医療従事者として、高い倫理観とモラルを期待したいと思います。また、光機能化の基礎的な知識を理解した上で使用して頂けるよう、最新の情報は、『光機能化グローバルサイト』、『光機能化バイオマテリアル研究会』のHP上で、医療従事者あるいは国民向けに発信されています。」
- ――「光機能化技術」の研究開発は、日本の歯科業界だけでなく、世界でも大きな”光”となっているように感じます。世界での反応をどのように感じていらっしゃいますか?
- 光機能化の業績を非常に高く評価して頂き、ACP(米国補綴学会)からは最高学術賞、そして、インプラント分野で最も権威のある学会Academy of Osseointegration(米国・国際インプラント学会)からは最高研究論文賞をいただきました。これらの受賞は、歴代から現在にいたる私たち研究チーム(「小川隆広 骨・インプラント サイエンスチーム」)みんなの功績ですが、歴史的な仕事をさせていただいていることを、誇りに思っています。」
- 「また、最近、知り合いの海外で活躍する歯科医師や、海外のメディアの方からいただいた言葉で嬉しかったのは、『タック(小川教授の愛称)は、ブローネマルク先生の偉大なアイディアを完成させたんだ。』という言葉です。ブローネマルク先生は、ご存知の方も多いかと思いますが、チタンと骨が結合することを発見し、インプラント治療に発展させたスウェーデンの整形外科医師です。先生が理想としていたものを、光機能化技術が完成させた。ブローネマルク先生のお人柄からして、きっと大変喜ぶだろうと。その言葉は本当にありがたく、これからも一層より進化できるように研究を重ねていこうという思いを強くしました。」
- 「また、日本人の同僚は、『日本人の歯科医師が、それを実現したということは、日本の歯科にとっての光だね』と言ってくれました。そして、そのとてもありがたいお言葉の歯科の光ですが、医学、整形外科の領域にも広がり始めました。同じチタン材料を使う整形外科と多くのコラボレーションが進み、すでに多くの研究成果が出てきています。歯科から医科への貢献を推進してまいりたいと思っています。」
これからの日本の歯科医療について
- ――最後に、今後の日本の歯科医療について、先生のお考えをお聞かせください。
- 「私は、日本を素晴らしい国だと思っています。日本の歯科も、問題がないとは言えませんが、素晴らしいと思っています。まず、日本の歯科医師の勉強熱心さと情熱、そして技術は、世界一だと感じています。技術についてそう感じる理由は、日本人の口が、欧米諸国の人の口と比べて小さいことにあります。つまり、治療が繊細で、難しいのですね。それが日本の歯科医師ができている。また、インプラントに関して言えば、難症例に取り組んでいる割合が欧米諸国に比べて圧倒的に高いです。米国の一流のインプラントドクターが難症例に取り組む確率は1〜2割ほど。一方、日本の著名なインプラントドクターは、その逆で、8〜9割ほどが難症例なのです。しかも成功させている。これは誇れることだと思います。 しかしながら残念なのは、欧米人と比べて、日本の国民の一人ひとりの歯の健康が劣っているということです。これは、歯科界の責任だと思います。世界有数の食文化をもつ日本で、世界有数の歯の健康を創造していくべきだと思います。これからの日本の歯科医師の大きな役割です。そのためには、歯科医師や歯科界は、国民からの信頼を得られるように、そして歯の大切さを気付けるように、努力し続けることが大切です。私も、これから日本の若い歯科医師の見本となり、日本の皆様の歯がより美しく、健康的になるよう、そして、日本の歯科全体が盛り上がっていくように活動を続けていきたいと思っています。」
- 小川教授を取材して
- インタビュー中、小川教授は「若い人達が自分を見たときに、"進化し続ける生き方は素晴らしい"と思ってもらえるような生き方を常にしていきたいと思っている」ともお話しをされました。事実、光機能化技術も、「患者様のためにより安全なインプラント治療を可能にしたい」という小川教授の強い思いから実現しました。常に誠実に、熱い思いで研究や歯科医師の育成に励む小川教授の姿そのものが、歯科業界全体の"光"となっていると感じました。(了)