■ シンポジウム1
「インプラント治療の確実性と不確実性」
座長:春日井 昇平 先生 (東京医科歯科大学歯学部附属病院インプラント外来) / 尾関 雅彦 先生(昭和大学歯学部インプラント歯科学講座)
講演者:森 等 先生(日本歯科大学附属病院インプラント診療センター)
全身疾患患者のインプラント治療についてお話されました。糖尿病患者だからインプラント治療に失敗するとは限らないことを述べられ、糖尿病患者の術前のコントロールが大切であることを強調されました。また、骨粗鬆症患者の場合の、インプラント埋入の骨量が不足しているときの対処法、インプラントの残存率についてお話され、骨質が硬いときは注意して埋入することを言及されました。長期的にコントロールされていれば問題が生じることは少ないが、埋入手術ではより侵襲性の少ない術式で行う必要があることを述べられました。
講演者:井汲 憲治 先生(一般社団法人日本インプラント臨床研究会)
適応症と非適応症について、インプラント治療の成功の基準をお話されました。患者さんが言う、よく噛めて快適できれいな歯が長くもつというのは、治療の目標であると述べられました。
インプラントの破折は撤去しなければならないことをお話され、治療の流れでは、骨ごととって、骨移植(GBR)で修復を行い、さらにインプラントを埋め入れて修復し、プロビジョナルを入れる説明をされました。
講演者:和泉 雄一 先生(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野)
まず最初に、インプラント治療は、口腔機能を回復する総合的な歯科治療であることを言及されました。インプラント治療後におこる問題について、2005年は年齢によるリスクファクターが高まり、喫煙などの問題もあったことを述べられました。また、2008年は、口腔清掃不良や、歯周病とインプラント治療の関係が目立ち、2010年から現在は、角化歯肉が多くなっている。インプラント周囲炎、インプラントの喪失後、残存ポケットの影響を調べにより、治療後にメインテナンスを行っている場合は歯周炎は少ないことを述べられました。
インプラント周囲炎と歯周炎の検出細菌は、インプラント周囲炎の方が多いことが分かり、メインテナンスが大切であることを強調されました。
■ シンポジウム2
「インプラント治療の社会的評価を問う」
講師:高梨 滋雄 先生(高梨滋雄法律事務所)
近年の日本顎顔面インプラント学会、日本歯科医学会などの団体が行ったインプラントにまつわるトラブル調査および、2012年4月29日、医療問題弁護団が行ったインプラントホットラインの内容を報告されました。その報告では、1日で139件の相談があり、麻痺・しびれ27件、インプラント破損23件、咬合不全12件、痛み9件、腫れ・化膿・炎症・出血9件、審美性不満3件、インプラント体上顎洞埋入2件。歯科インプラントにおける身体的に残る被害届の続出から社会的にインプラントに対する見解は冷ややかなものへとなっているとお話されました。歯科医側で出来ることとして、インフォームド・コンセントの徹底と記録化を図ること、ガイドラインの遵守(症例に応じて柔軟な対応を取る場合は、ガイドラインと異なる対応の合理性と根拠の提示)を述べられました。
講師:鳥山 佳則 様(厚生労働省医政局歯科保健課)
2012年から安心、安全な歯科医療に関連した5項目について日本歯科医学会に「歯科保健医療情報収集等事業」を委託し、インプラントに関しては、“インプラント治療指針”“インプラント治療のQ&A”“インプラント国民向け情報”を市民のリテラシー向上を目的とし公表していると述べられました。また、医療機関へ向けてはインターネットHPでの医院や治療の説明について“医療機関ホームページガイドライン”を提示していることをお話されました。
講師:矢島 安朝 先生(東京歯科大学口腔インプラント学講座)
マスメディアを中心に情報発信されインプラントの評価が下がり歯科業界全体がネガティブなものとされる傾向があるとお話されました。その流れとして「歯科医師過剰」→「経済的問題発生」→「インプラント治療への参入」→「歯科医師の知識・技術不足・モラルの欠如」から「インプラント事故多発」という構図ができ、「インプラント治療に対する批判」→「歯科医療全体への批判」につながることを指摘されました。
また、口腔のケアを習慣化し、老後の残存歯数が多いほど認知症になる確率が低いという結果が出ていることを述べられ、歯科医療は、国民の健康増進に役立つ医療だと思っていただけるよう、歯科医師自らの知識と技術の向上、患者へのリテラシー不足解消に継続的に努めたいと強調されました。
下顎臼歯部の部分欠損に対するインプラント治療の症例について、CT診断後、埋入シミュレーションを行い、サージカルガイドを使ってドリリング及び埋入手順の流れを説明されました。また、サージカルガイドを使って、インプラント体を撤去した症例についても説明されました。
重度歯周病疾患患者の症例を発表されました。できるだけ抜歯をせずに天然歯を保存することが患者さんにとって有益であることを述べられ、クラウンの下に動揺がみられたが、患者さんと相談して欠損部位に、インプラント治療を施すことにより天然歯を保存することができたと説明されました。
自院のインプラント治療における不具合症例についてお話されました。患者様は遠方から通われる方が多く、とくにトラブルやリカバリーが多いことを述べられました。外科的トラブルは大学病院で、インプラント周粘膜炎などは開業医への相談が多いことをお話されました。2004年1月から2013年12月の10年間に埋入したインプラント7,072本を対象に、不具合の80%以上が40歳以上で、主訴は出血が215本(31%)、揺れが131本(19.5%)、上部構造に関するものが124本であった。終了してから5年以上経過している患者様の結果では、インプラント周囲粘膜炎が191本(28%)、インプラント周囲炎が201本(29%)であったことを発表されました。
商社展示会場
展示会場では、企業セミナーやポスター発表など行われました。また、歯科関連企業による商品展示が行われ、ブースに立ち寄った先生方に対して企業、商品紹介を積極的に行っておりました。インプラントネットもまた、ブースを出展し、多くの先生方にお会いすることができました。
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