■ シンポジウム
「リスクマネージメントから考える確実な外科治療」
座長: 高橋 哲 先生、伊藤 隆利 先生
1.安全なインプラント外科治療のための局所解剖
講師: 後藤 哲哉 先生
安全なインプラント外科治療のためには、上下顎骨の形態、骨量、血管や神経の走行を十分に理解することが必要であると発表されました。インプラント治療にはトラブルを避けるためにも詳細な口腔解剖の知識が求められ、トラブルが起きたときでも解剖学的な知識をもとに判断し、適切な処理をする必要があるとお話しをされていました。
2.インプラント外科治療の全身的リスクファクター
講師: 楠川 仁悟 先生
インプラント治療では糖尿病や高血圧症などの全身疾患の合併など、すでに全身的なリスクを抱えていないか把握する必要がある。全身的なリスクマネージメントは一般的な外科手術と変わることはないと、全身的リスクファクターの把握が非常に重要であるとお話しされていました。本シンポジウムでは、骨粗しょう症治療薬として投与されるビスホスホネート製剤(BMA)を投与されている患者様へのインプラント外科治療について発表されていました。
■専門医制度推進委員セミナー
「国民から信頼される「口腔インプラント専門医」のあり方」
座長: 木村 博人 先生、簗瀬 武史 先生
1.「口腔インプラント専門医」の社会的意義
講師: 木村 博人 先生
平成19年4月に緩和された厚生労働省の定める医療広告ガイドラインについて、なぜ広告が規制されているのかまたその趣旨について発表されていました。この医療広告ガイドラインにおいて「広告可能な専門性資格名」が決められていて、当学会が掲載可能な専門医ではないことにふれられていました。今後、当学会の専門医ということがインプラント治療の安全を判断できる基準として国民に認知されることが必要で、「広告可能な専門性資格名」として「口腔インプラント専門医」の承認を厚生労働省より得ることが課題だとお話しされていました。
2.専門医取得のための教育カリュキュラムの問題点
講師: 矢島 安朝 先生
「広告可能な専門性資格名」として国民から信頼される「口腔インプラント専門医」となるための専門医取得カリュキュラムを現状からさらに改善し、広告可能と承認を得るためにも当学会の自主的努力が必要だとお話がありました。実際いくつものきびしい試験を経て認定医となっているが、国民やメディアにはそれが伝わりづらいため、分かりやすいシステムにする必要があるなど、カリュキュラムの改正案を含めて発表されていました。
■国内招待講演
「インプラント治療の現在と将来」
座長: 古谷野 潔
1.前歯部審美領域のインプラント治療成功のためのポイントと将来展望
講師: 中村 社綱 先生
インプラント治療に対する要望が、単なる欠損部を補うことだけではなく、前歯部においては高度な審美的回復の要求度が高くなってきたことを受け、審美回復に必要な要素についてお話しがありました。前歯部審美領域のインプラント治療のガイドラインともいえる項目について考察を加えながら審美領域におけるインプラント治療の将来展望について発表されていました。
2.歯周炎患者におけるインプラント治療のリスク回避
講師: 船越 栄次 先生
今大会のメインテーマ「より適切で確実なインプラント治療へ」を実現するためには、治療結果に及ぼすリスクファクターを認識することが重要である。そのリスクファクターの1つである「周囲炎の既住歴」にフォーカスしてお話しされました。周囲炎の既住歴のある患者様に対し歯周病治療を行った後インプラント埋入を実施し、天然歯とインプラントのどちらも長期予後を獲得した症例を用いて、インプラント周囲炎のリスク回避について発表がありました。
▲ 福岡サンパレスホテル&ホール コンサートホール |
▲ 福岡国際会議場 メインホール |
■専門歯科衛生士セミナー
座長: 阿部 多暁子 先生、柏井 伸子 先生、松岡 恵理子 先生
1.インプラント治療における歯科衛生士業務チェックリストの活用
講師: 後藤 礼子 先生
安心・安全なインプラント治療のために、当学会よりweb上で公開された「インプラント治療のためのチェックリスト」を活用することで、治療の円滑化が図られたと発表がありました。インプラント治療に対して歯科衛生士業務の比重は高く、トラブル防止のためにチェックリストの活用は有益であるとお話されていました。
2.カウンセリングの重要性
講師: 長岐 祐子 先生
何らかの不安を持ち歯科医院を受診される患者様に対し、カウンセリングの方法、その重要性についてお話がございました。初診時や検査の必要性、治療についての説明、治療後のメインテナンスについてなど、その患者様の治療進捗に合わせた、適切なカウンセリングをして患者様自身の問題点を把握してもらうことが、より良い治療を行うために必要であるとの内容をお話されていました。
■専門歯科衛生士教育講座
座長: 永原 國央 先生
インプラント治療における全身疾患と全身管理を考える
講師: 堀川 正 先生
インプラント治療を担当する歯科医師はもちろん、アシスタントである歯科衛生士が全身的トラブルに対応できる知識とスキルを身につけておくことが非常に重要である。治療中のみならず、治療前後にわたってミスや過失がなくても異常が起こってしまう「偶発症」の種類と割合についてお話され、発症を予見し予防するためにはどのようなことに注意し、起こってしまった時の対処法について講義されていました。
■ ランチョンセミナー
1.すべては光機能化へ:骨結合、辺縁骨や軟組織の維持、適応拡大、低侵襲、そして再生医療まで
座長: 小川 隆広 先生
共催: ウシオ電機株式会社、光機能化バイオマテリアル研究会
インプラント体の表面(チタン)が骨と結合する能力は、インプラントが製造されてからの時間の経過に伴って減少し、1ヶ月経過後には約半分に低下している結合能力の低下を「チタンのエイジング」といいます。チタンのエイジングを特定の波長の紫外線を照射することで、エイジングしたインプラントを回復させる方法、「光機能化技術」についての基本的なお話しがありました。また応用として、インプラント治療における骨造成で使用するチタンメッシュへの光機能化や、歯科だけではなく再生医療まで活用できる可能性を感じるお話しがありました。
2.血液供給から見たインプラント臨床のポイント
講師: 信藤 孝博 先生
共催: デンツプライIH株式会社
インプラント治療の際の減張切開についてGBRにて骨造成を行った症例を元に、天然歯の周囲粘膜の組織構造について振り返りながら、切開時の注意点やインプラントの周囲粘膜をどのように整えるかについてお話しされていました。
■イブニングセッションC 超高齢社会のインプラント治療
座長: 梨本 正憲 先生
講師: 輿 秀利 先生、井上 一彦 先生
超高齢社会を迎え、インプラント治療後の高齢者が重度の全身疾患にかかり寝たきりの生活を余儀なくされることも少なくありません。実際に通院困難になった高齢者のエピソードを用い、ベッドサイドでの処置や口腔ケアに関しても病状にあった適切な処理、知識が必要になると発表されていました。ベッドサイドでの困難な治療をしなければいけないケースに加え、重病を患っているため術前の診断を確実にし、患者様の重症度別の特別な対応が必要になるとお話しされていました。
■市民フォーラム 「インプラントと患者さんのQoL〜 インプラントのAtoZ、かしこい選択で健康長寿」
高齢社会を豊かに生き抜くためには、生活の質向上(QOL)は重要な問題です。生活の質向上においてしっかり噛めることは口腔だけでなく全身の心と体の健康と美しさに欠かせません。しっかり噛むことを可能としたインプラント治療ですが、国民のために役割を果たせているのであろうか。技術・安全は確保され治療費は妥当だろうか、手術前・手術後のケアなど長期的な予後はどうだろうか。など、歯科医院の選び方や現状の課題を、講師それぞれの立場からのお話しがありました。
▲ エルガーラホール |
▲ 8階 大ホール |
1. かむ力が蘇り、美しさが輝く〜個々のインプラント治療症例から
講演者: 木村 洋子 先生
インプラント治療の必要性を、歯が抜けた状態を放置することで表れる全身への影響や、入れ歯やブリッジなどほかの治療法との優位性などを交え、一般の方にもわかりやすくお話されていました。歯をなくして様々な機能が失われていた患者様が、インプラント治療を通して噛む力と美しさを取り戻すことができた症例と、患者様インタビューを紹介され会場にいた皆さまは熱心に傾聴されていました。
2. 歯科医院選びのポイント、かかるときの注意点
講演者: 渡辺 勝敏 氏
事前の説明や衛生管理、術後のフォロー体制もなく、通常の歯科治療の延長で気軽にインプラント治療を行い、炎症やしびれなどインプラント治療のトラブルが多くなっている。インターネットでも簡便さを印象づける内容や、安さを売りにしている広告も目につく。このような現状の中で、安心してインプラント治療を受けるにはどのような点に注意したらよいかをお話されていました。
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