入れ歯が安定する”オーバーデンチャー”

オーバーデンチャーとは、残っている自分自身の歯の根、または埋め込んだインプラントを支えにして、取り外し式の総入れ歯を安定させる方法のことをいいます。ここでは、埋め込んだインプラントで総入れ歯を安定させる”インプラントオーバーデンチャー”の特徴についてご紹介します。

更新日:2020/12/22

■目次

  1. インプラント治療におけるオーバーデンチャーとは
  2. インプラントと総入れ歯を連結するためのパーツ
  3. こんな症状の方にお勧めできます
  4. オーバーデンチャーのメリット
  5. オーバーデンチャーのデメリット

インプラント治療におけるオーバーデンチャーとは

▲総入れ歯(左)と磁石タイプのインプラントオーバーデンチャー(右)

インプラントオーバーデンチャーとは、自分自身の歯をすべて失い、総入れ歯で失った歯を補う場合に受けられる治療法です。
片顎の骨に2~4本程度のインプラント(本数はお口の状態によって異なる)を埋め込み、歯茎から一部分だけ露出させておきます。
ご自身の歯の根が残っている場合は、残っている歯の根とのバランスを考えてインプラントを埋め込み、できる限り自分自身の歯を残すこともあります。

露出させた一部分のインプラントに入れ歯を固定するパーツをつけておくことによって、取り外し式の総入れ歯をつけた際に入れ歯が沈み込んでしまったり、歯茎に当たる、入れ歯がずれてしまうことを軽減できます。

インプラントオーバーデンチャーは、総入れ歯がしっかりと固定されますので、通常の総入れ歯に起こりがちな問題(外れやすい、硬いものが噛めない、痛いなど)が解消され、よく噛んで食べられるようになります。

インプラントと総入れ歯を連結するためのパーツ

インプラントと総入れ歯を連結するためのパーツには、下記の種類があります。

■ボールタイプ
総入れ歯と接する部分がボール状(球状)になっています。ボール状にピッタリと合う金具を総入れ歯に埋め込み、ホックで留めるように総入れ歯を装着します。

■バータイプ
埋め込んだインプラント同士をバーと呼ばれるパーツでつなげます。バーにピッタリと合う金具を総入れ歯に埋め込み、クリップで留めるように総入れ歯を装着します。

■磁石タイプ
インプラントに磁石とくっつく金属を接続します。総入れ歯に小さな磁石を埋め込むことで引き寄せ合う磁力で総入れ歯を固定します。
凹凸の少ない方法のため、ボールタイプやバータイプに比べて、インプラントと総入れ歯のお手入れが簡単です。

■ロケータータイプ
インプラント側にボタン型の形状をした先端を取りつけ、入れ歯側にキャップのような形状をしたパーツを取りつけてインプラントと入れ歯を固定します。
インプラントの先端とキャップが固定され、維持力が増すことにより、動きにくく外れにくくなることが特徴です。

こんな症状の方にお勧めできます

・入れ歯ががたつく
・入れ歯が外れやすい
・入れ歯でしっかりと噛めない
・入れ歯を使っていると痛みがでやすい
・インプラント治療を受けたいが費用を抑えたい
・インプラント外科手術を最小限の範囲で行いたい
・オールオンフォーで固定式の人工歯を入れていたが、介護になり手入れが大変

オーバーデンチャーのメリット

【総入れ歯の治療と比較すると】
・総入れ歯がインプラントで固定されるため安定し、食事や会話でストレスを感じることが少ない。
・入れ歯が外れたり、ずれたりすることがほとんどなくなる。

【通常のインプラント治療と比較すると】
・使用するインプラントの本数が少ないため、費用が抑えられる。
・外科手術の範囲が最小限となるため、身体への負担が少ない。

オーバーデンチャーのデメリット

【総入れ歯の治療と比較すると】
インプラントを埋め込む外科手術が必要となるため、身体への負荷や費用負担が増える。
噛む力が大きくなるため、総入れ歯が割れたり、すり減ったりしやすくなる。

【通常のインプラント治療と比較すると】
インプラントと総入れ歯のそれぞれのお手入れが必要となる。
少ない本数のインプラントで支えるため、1本でもトラブルが起こると総入れ歯を使えず、噛みづらくなる可能性が高い(ただし、介護が必要となる年齢の患者の場合、埋め込む本数が少ないために、トラブル対応がしやすい)。


患者さんに適した治療方法について、歯科医師の診断を受け、メリット・デメリットなどよく相談されることをおすすめします。
インプラントを使ったオーバーデンチャー治療だけでなく、通常のインプラント治療や総入れ歯治療の特徴やリスクなどを確認し、納得したうえで治療を進めましょう。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。