インプラント治療が保険適用になる条件とは?
インプラント治療の場合、虫歯治療やブリッジ・入れ歯の補綴治療などの一般的な歯科治療と異なり、公的医療保険が適用される条件が違います。インプラント治療をお考えのかた、または受ける前にインプラント治療が公的医療保険が適用されるのか、適用されないのかを事前に知っておくことが重要です。国が定めた一定の条件を満たすと公的医療保険が適用されますので、この機会にポイントをしっかり押さえておきましょう。
更新日:2021/12/06
■目次
保険診療と自由診療について
1.保険診療って?
保険診療は、だれでも平等に同じ費用で、悪くなった歯を噛めるようにすることを目的とした治療に適用されます。基本的に費用の3割を自己負担することで治療を受けることができます。
※注意
保険で受診するには、健康保険などの公的医療保険に加入し、医療機関で月毎の保険証の提示が必要です。また、保険適用の費用負担は加入する保険によって異なります。
2.自由(保険外)診療って?
治療の必要な歯や健康な歯に、より質の良い仕上がり(見た目や使用感)を求める場合には、保険診療の適用外となる、自由(保険外)診療となります。
自由診療は、歯科医師(歯科医院)が独自に決めた治療方法に対し、全額自己負担で治療を受けるものです。セラミックの被せ物や歯列矯正など、見た目や噛む機能の向上を目的とするような治療は、保険診療の対象外となるので自由診療となります。(ただし、医療費控除の対象になります)
インプラント治療は保険が適用されないの?
インプラント治療は自由(保険外)診療として扱われる場合がほとんどです。
平成24年4月(2012年)より、病気や事故などによって、広範囲にわたって顎の骨を失ってしまった場合に、国が定めた条件を満たせば「インプント義歯治療」が保険適用されるようになりました。
しかし、適用となる対象は非常に限られおり、それ以外の場合は自由(保険外)診療となります。
<自由診療となる例>
◇ 虫歯や、歯周病、外傷などによって歯を失った場合
◇ 歯周病や加齢による顎の骨の吸収(骨が痩せた)した場合
インプラント治療が将来、保険適用になる可能性は?
インプラント治療は歯を失ってしまった部分に、人工の歯根を埋め込み、その上に自分の歯とほとんど変わらない見た目の人工の歯を入れる治療です。
保険適用の入れ歯やブリッジと比べ、コストや時間がかかる治療ですので、今後すべてのインプラント治療が保険診療となることは難しいでしょう。
条件はありますがインプラント治療が一部保険適用になりました
先進医療と認められてきた「インプラント義歯」が保険適用になりました。
先進医療とは、厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた治療法や医療技術のことで、安全性や有効性など一定の基準を満たし、将来的に公的医療保険への適用を検討されている治療方法です。
平成24年4月(2012年)から、インプラントは一部保険適用となり、先進医療から除外されました。
これにより、病気や事故などで広範囲にわたって顎の骨を失ってしまった場合に、国が定めた条件を満たせば、インプラント義歯治療(※)が保険適用されるようになりました。
どのようなケースでインプラントが保険適用されるのか、どのような医療機関で治療を受 けられるのかなどご紹介します。
※「インプラント義歯治療」の正式名称
今回、インプラントが先進医療から除外されたことにより、インプラント義歯が「広範囲顎骨支持型装置および広範囲顎骨支持型補綴」と名称が変更され保険導入されました。
インプラント義歯のために必要な手術を「広範囲型顎骨支持型装置埋入手術」といいます。
インプラント治療が保険適用になる条件
下記のいずれかに該当し、ブリッジや入れ歯などの治療では回復が難しいと診断された場合にインプラント治療が適用となります。
◇ 腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気や、事故の外傷などによって、広範囲にわたり(※)顎の骨を失ってしまった状態
◇ もしくはこれらが骨移植によって顎の骨が再建された状態
◇ 医科の保険医療機関の主治医によって、先天性疾患(うまれつきの病気)と診断され、顎の骨の1/3以上が連続して欠損している状態
◇ 顎の骨の形成不全
※適応となる範囲について
〔上顎の場合〕 顎の骨の1/3以上が連続して欠損している、もしくは上顎洞、または鼻腔へと繋がっていると診断されていること
〔下顎の場合〕 顎の骨の1/3以上が連続して欠損している、もしくは腫瘍などの病気によって下顎を切除したと診断されていること
このような限られたケースにのみ保険適用され、歯周病や加齢による顎の骨の吸収(痩せ細った)による歯の喪失などは対象外となっています。
インプラント治療を保険診療で行える医療機関の条件
下記の条件をすべて満たし、国から認められた施設であれば、インプラント治療を保険診療で受けることができます。
◇ 病院(入院用のベッドが20床以上ある施設)にある歯科または口腔外科であること、 下記のどちらかに該当する歯科医師が、常勤で2名以上配置されていること
◇ 歯科または口腔外科で5年以上の治療経験がある、または、3年以上のインプラント治療経験がある常勤医師が2名以上配置されていること
◇ 当直体制が整備されていること
◇ 国が定めている医療機器や医薬品などの管理が整備されていること
この条件をすべて満たし、インプラントを保険診療で受けられる施設としては、歯科大学病院や規模の大きな病院の歯科・口腔外科などがあげられます。
「どの病院に行っていいのかわからない」、「この治療は保険適用の対象となるのか」などの悩みや疑問があれば、お近くの歯科医院やかかりつけの歯科医師に相談してみるとよいでしょう。
インプラント治療はなんで高額なの?
インプラント治療は、保険診療が適用される治療と比べると、コストや時間がかかる治療です。天然の歯の隣でも違和感のない見た目になるように配慮したり、かみ合わせや使用感をよりよくしたりするために繊細な調整が必要とされるためです。どんなところにコストがかかるのか、しっかり理解してから、治療にのぞみましょう。
1.手術でコストがかかる
必ず行われる外科手術では、雑菌が入り感染を起こさないために、環境を整えたり、使い捨ての物品を使うなど、細心の注意を払いながら行われます。
2.どんな手術が行われるの?
◇ インプラントを埋め込む手術
◇ 骨を増やす手術※
※骨の量が少なく、そのままではインプラントを埋め込むことができない場合にのみ、前処置として行われる手術です。
3.人工歯の作製でコストがかかる
最終的にインプラントに装着する人工歯の作製では、精密に歯の型を取るための材料を用いて、お口の状態に合う仕上がりにするために、通常の型取りよりも少し時間をかけて行います。時間をかけて行うため、保険診療が適用される治療と比べるとコストがかかってしまうのです。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。
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