■目次
マイクロスコープと歯科治療
マイクロスコープとは
マイクロスコープとは、手術等で使う顕微鏡のことで、最大で約30倍まで拡大して見ることができます。最初に眼科の手術で使用され、以来様々な医療分野で欠かせないものとなっています。
歯科では、1980年頃に歯内療法(歯の中にある神経を除去あるいは消毒する治療)に使用され始めました。現在では、インプラント治療のほか、あらゆる歯科診療で応用されています。
マイクロスコープのメリット
一般的な歯科治療は、レントゲンと肉眼で診査・診断を行い、経験や勘・手指の感覚で治療結果が左右されます。
マイクロスコープを導入する事によって、肉眼では確認できない細部の問題点を把握する事が可能となり、より正確な診断・より精度の高い治療が行え、見逃しによる再発や再治療を防ぎ、確実な治療成果を生みます。
(※使いこなす為に拡大下で手指の動き等のトレーニングをアシスタントと行わなければ精密な治療は行えません。)
2000年にFDI(国際歯科連盟)より、Minimal Intervention Dentistry(最小限の侵襲に基づく歯科医学)という新しい概念が提唱され、現在ではその思想が定着しました。拡大視野下で必要最小限、かつ確実な処置が行えるマイクロスコープはMinimal Intervention(最小限の侵襲)の治療を実現するために役立つ強力なツールです。また、マイクロスコープを使用することにより、患者様が自分のお口の中の状態を静止画や動画で確認する事ができ、治療内容が理解しやすくなるので、医院とのコミュニケーションが一段と図りやすくなります。
マイクロスコープの現状
2010年現在、マイクロスコープは、一部の高度先進医療をのぞき、自費(自由)診療となっております。マイクロスコープ自体もかなり高額であり、使用することで治療時間も長くなるため、一日に治療ができる患者数が限られてしまいます。
このような背景から、すべての医院・すべての治療に取り入れられていないのが現状です。
(※マイクロスコープの他に拡大して見ながら治療できるものとして、メガネのように装着して使用する「ルーペ」があります。拡大率が最大約4倍までとなっており、マイクロスコープに比べると拡大率は低いですが、こちらのほうが手軽なことから、マイクロスコープよりも普及しています。)
インプラント治療におけるマイクロスコープの活用
1. 外科手術
マイクロスコープと専用の器具(小さくて鋭いメスや細い縫合針など)を用いて行う手術をマイクロサージェリーといいます。歯茎やあごの骨が減ってしまい、治療が必要になった場合に、マイクロサージェリーで処置すると、小さな傷で済むため、早く治って、傷跡も目立ちにくくなります。
2. サイナスリフト
※サイナスリフトとは、インプラントを入れられないほど上あごの骨が痩せている場合に、上あごの上に存在する骨の空洞(上顎洞)の底の粘膜を押し上げ、そこに人工の骨を入れて骨を増やす治療法です。
3. 補綴 [ ほてつ ] (人工の歯)の製作
マイクロスコープを用いることによって細部の確認ができ、インプラントと人工の歯の適合精度が上がります。インプラントとしっかりと適合していないと、インプラントが破折(根が割れてしまう)したり、脱落することがあります。
4. メインテナンス
歯石除去の際、スケーラー(右のイラスト参照)の角度が確認できます。インプラント及び補綴(人工の歯)を傷つけてしまうと、歯垢が付着しやすくなります。
また、細部まで歯垢の付着チェックができるので、インプラント周囲炎を防ぎます。