■目次
All-on-4(オールオンフォー)ってなに?
All-on-4(オールオンフォー)とは、総入れ歯の方や、残っている歯を保存することが難しい方に適したインプラントと総入れ歯を組み合わせた治療です。従来であれば、失った歯の数と同じ本数のインプラント(人工歯根)を埋め込みますが、All-on-4は、歯が1本もない状態の顎に4本のインプラントをバランスよく埋め込み入れ歯を被せることで、10~12本分の繋がった人工歯を支えることができます。
そのため、従来の治療法に比べて外科手術による身体への負担が軽減されるだけでなく、費用も抑えることが可能です。
※動画は、フラップ法(歯茎をメスで切開してインプラントを埋め込む方法)です。
All-on-4が向いている人
All-on-4は下記のようなお口の状態の方に対して、治療が可能です。
・総入れ歯を使用しているが、合わない方
・部分入れ歯の範囲が広くなってきた方
・残っている歯のほとんどが、虫歯のために歯根まで大きく欠けている場合
・残っている歯のほとんどが、歯周病のために大きく揺れている場合
このように、「歯が1本も無い状態」だけではなく、「治療をしても全ての歯を残すことが難しい状態」の方でも、インプラントを埋め込むことを前提として抜歯を行うことで、All-on-4が可能になることもあります。また、All-on-4はインプラントを埋め込む手術をした後すぐに仮歯が入るため、お食事ができない、会話に困るといったことがありません。
All-on-4の治療法
All-on-4の外科手術には、2つの方法があります。
・フラップ法(歯茎をメスで切開してインプラントを埋め込む方法)
・フラップレス法(パンチでインプラントを埋め込む部分の歯茎に穴を開ける方法)
治療期間は、約3~6ヶ月間です。(顎の骨の状態によって、治療期間は異なります)
また、All-on-6といって、インプラントを埋め込む本数が6本の場合もあります。
All-on-4と従来の治療法の比較
同じようなお口の状態の方が「All-on-4」と「従来のインプラント治療法」で治療をした場合にどのような違いがあるのか、メリットとデメリットとを比較してみましょう。
従来のインプラント治療の場合
【メリット】
・機能する天然歯(自分の歯)は、抜歯せずに残すことができる
・All-on-4よりも治療できる対象が広い
【デメリット】
・8~10本のインプラントの埋め込みが必要なため費用がかかる
・外科手術の範囲が広いため手術時間が長く、身体への負担が大きい(痛みや腫れなどが出やすい)
・手術後に一時的に入れ歯を使用しなければいけない場合もあり、食事や会話に支障が出ることもある
・天然歯に問題が起きた場合に追加でインプラントを埋め込む必要がある
・加齢に伴い寝たきりになった後の管理や撤去などの対応が難しいことがある。
All-on-4の場合
【メリット】
・4本のインプラントで人工歯を支えるため、費用が抑えられる
・外科手術の範囲が小さいので手術時間が短く、身体への負担が軽い(痛みや腫れなどが出にくい)
・骨の量が残っていることが多い前方の顎の骨にインプラントを埋める術式なので、骨を増やす治療を行うことなく治療できる可能性が高い
・手術後すぐに人工歯を固定できるので、食事や会話に支障が出にくい
・高齢者に対応しやすい治療である
【デメリット】
・天然歯(自分の歯)が無い顎にしか施術できず、機能する歯が残っていても抜歯が必要
・お口や身体の状態により、受けられない場合がある
All-on-4の費用
All-on-4の治療は公的医療保険が適用されないため、自由診療(全額自己負担)です。
自由診療では、医療機関が自由に診療内容や診察費用を決める事ができるため、治療を受ける医療機関によって費用は異なります。
All-on-4の費用は医院や地域で差があり、平均総額1,800,000~2,400,000円です。
All-on-4の治療後は、All-on-4の不具合の確認や良好な状態を保つために、継続的にメンテナンスを行います。メンテナンス費用も確認しておくと良いでしょう。
自宅で行うセルフケア
All-on-4は人工的な補綴物のため虫歯になることはありませんが、インプラント周囲炎になることがあります。インプラント周囲炎は歯周病と同じように、インプラントを支えている周りの骨(歯槽骨)が溶けたり、歯肉が炎症を起こして腫れるなどの症状が起こります。
そのため、長く良い状態を保つためには、日々のブラッシングと定期的な歯科医院でのメンテナンスが重要になります。
人工歯の部分は歯ブラシで磨き、人工歯と歯茎の間やインプラントの周囲はデンタルフロス、歯茎への当たりが優しい(ウレタンでワイヤーをコーティングした)歯間ブラシ、強い水流で歯間を洗浄するジェット水流などを使用し清掃を行います。
ご自身のお口に適した歯磨き方法やフロス、歯間ブラシなどの補助用具を歯科医師、歯科衛生士に指導してもらい、清潔なお口の中を保つことが大切です。
>> All-on-4の治療方法についてはこちら
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。