インプラントにチタンが使われるワケ

インプラント治療は、天然歯のような噛み心地が得られる可能性が高い理由を解説します。インプラント体と顎の骨が結合する仕組みやインプラントに使用されているチタンの性質についても説明しています。

更新日:2020/08/21

■目次

  1. なぜインプラントはチタンでできているの?
  2. インプラントの材料
  3. オッセオインテグレーション(骨結合)

なぜインプラントはチタンでできているの?

インプラントの材料

歯科用インプラントとは主にチタン製のスクリューを骨の中へ埋め込み、その上に歯を作る治療を指します。
一世代前のインプラントは骨貫通タイプ、骨膜下タイプ、骨内ブレードタイプと呼ばれる形のインプラント体が使われており、材料も人工サファイアが使用されるなど様々なタイプが使われていました。
現在ではインプラントの形はスクリュー型、材料は純チタンやチタン合金、チタンの表面に特殊な処理をしたものが主流になっています。このインプラントは、 オッセオインテグレーテッド・インプラント と呼ばれています。

オッセオインテグレーション(骨結合)

インプラントの材料として主流であるチタンは骨と結合し、極めて生体親和性の高い材料です。
チタンの特性は、1952年にスウェーデンの科学者ペル・イングヴァール・ブローネマルク教授によって偶然発見されました。ブローネマルクの実験を通し、チタンは生体親和性の高い金属であることが証明され、以降はチタン製のインプラントが使われるようになりました。
チタンと骨が直接結合する方式は、骨を表すラテン語のオス(OS)と結合を表す英語のインテグレーション(integration)が組み合わされ、オッセオインテグレーション(osseointegration)と呼ばれています。チタンは このオッセオインテグレーションという言葉が示す通りに、骨とインプラントが強固に結合し一体化することが最大の特徴 です。
インプラントの材質であるチタンは人体に異物として認識されずに、新しい骨がチタンの周囲に取りついていきます。そして、チタンの表面の細かい部分にまで骨が入り込んでいき、インプラントが取り込まれた状態になります。
ただし、インプラントと骨との結合はインプラントの表面の状態によって差が生じます。表面が滑らかなインプラントよりも、表面が僅かに粗いタイプのほうが、より強固なオッセオインテグレーションを得られると考えられています。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。