■目次
- 差し歯とインプラントの違いとは?
- 差し歯とインプラントの特徴・メリット・メリット
- 差し歯の特徴
- インプラントの特徴
- 差し歯のメリット
- 手術が不要で治療期間が短い
- 公的医療保険適用となる種類もある
- 食べたときに歯ごたえを感じられる
- 差し歯のデメリット
- 虫歯になる場合がある
- 素材によっては見た目が良くない
- 歯根が割れてしまうと抜歯が必要になる場合がある
- インプラントのメリット
- 自分の歯に近い機能性を取り戻せる
- 審美性に優れている
- 残っている歯への負担が少ない
- インプラントのデメリット
- 基本的に公的医療保険適用外となる
- 外科手術が必要になる
- インプラント周囲炎のリスクがある
- 差し歯とインプラントの治療の流れ
- 差し歯治療の流れ
- インプラント治療の流れ
- まとめ
- 記事監修
差し歯とインプラントの違いとは?
差し歯を装着する治療では、ほとんど歯の根っこしか残っていない歯を治療したあとに、土台を作り被せ物をセットします。
公的医療保険診療でも対応できます。一方のインプラント治療は、歯が抜けたところに人工歯根となる金属のネジを埋入し、その上に被せ物をセットします。基本的に公的医療保険診療は適用できず、自費診療になります。
両者の大きな違いは歯の有無で、それ以外は治療期間、費用、機能性などに違いがあります。
2024年6月 株式会社メディカルネット調べ
→差し歯とインプラントの構造の違いや、治療の流れについては「差し歯とインプラントの違い 値段や仕組みについて解説」の記事をご確認ください。
差し歯とインプラントの特徴・メリット・メリット
差し歯とインプラントは両者とも失った歯質を補う治療方法です。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。
差し歯の特徴
残っている歯根が使える状態にある場合、差し歯が検討されます。抜歯前に行われる治療という点では、インプラントと異なります。支台(ポスト)を歯根に差し込んで土台とし、その上に被せ物をセットする治療です。
インプラントの特徴
インプラントは歯が失われている場合に適用される治療です。主にチタンで作られてインプラント体(人工歯根)を顎骨に埋め込み、その上にセラミックや金属の被せ物を装着します。
差し歯のメリット
差し歯には、ほかの治療方法にはないメリットがあります。
手術が不要で治療期間が短い
差し歯の治療をする前提として根管治療(歯根の治療)を行うことになりますが、その後はインプラントのような埋め込む手術をすることはありません。
歯型取りして作製された土台を装着し、被せ物を装着します。一般的な治療期間としては、1ヵ月~2ヵ月です。インプラントが3ヵ月~1年かかることに比べると、治療期間は短いといえるでしょう。
公的医療保険適用となる種類もある
差し歯の土台には種類があり、公的医療保険診療適用のものもあります。
金属(メタルコア)やプラスチック(レジンコア)のものであれば基本的に公的医療保険が適用され、治療費を抑えられます。被せ物が自由診療だと土台も自由診療の適応です。
食べたときに歯ごたえを感じられる
歯根の周囲にある歯根膜という組織により、食事をとるときに「歯ごたえ」が感じられます。インプラントのような人工歯根には歯根膜がないため、個人差はあるものの噛んだ時にやや違和感を覚える場合があります。
差し歯であれば歯根が残っているので、食べたときの感覚を天然歯のように楽しめます。
差し歯のデメリット
差し歯にも、ほかの治療方法と同様にデメリットもあります。
虫歯になる場合がある
差し歯の土台にあたる部分は歯根に差し込まれています。根管治療を受けて痛みを感じる歯の神経がないため、被せ物の下が虫歯にかかっているのに気がつかないことがあります。
素材によっては見た目が良くない
保険診療の対象となるプラスチックや金属の素材になり、見た目がやや不自然になるかもしれません。前歯のような目立ちやすい部分にあると差し歯であることがわかりやすくなります。「差し歯だと知られたくない」という場合は、セラミックなど審美性が高い自費診療の素材を検討することになります。
歯根が割れてしまうと抜歯が必要になる場合がある
歯根にひびが入ったり割れたりすると、細菌が隙間から侵入しやすくなります。そのため、歯根が破折した状態を放置すると歯の内部で炎症が起きてしまい、歯髄炎や根尖性歯周炎になる場合があります。
細菌の感染が進行して歯が大きく欠けた・割れた場合には、抜歯を検討する可能性があります。
インプラントのメリット
よく耳にするようになったインプラントですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
自分の歯に近い機能性を取り戻せる
抜歯後の治療には入れ歯やブリッジがありますが、インプラントはこうした治療とは違って人工歯根というしっかりとした土台を顎骨に埋め込みます。人工歯が安定し、天然歯に近い機能性を回復できます。自分の歯のように噛むことができ、これまでのように食事やおしゃべりを楽しめます。
審美性に優れている
部分入れ歯のような金属の留め具(クラスプ)がないうえ、人工歯(上部構造)の部分は主にセラミックなどの素材を選択でき、形や色合いが自然に見えます。残っている天然歯になじみ、ほかの人からも自然な口元に見えやすくなります。
残っている歯への負担が少ない
部分入れ歯は残っている歯にクラスプを引っ掛け、ブリッジは固定源となる残存歯を大きく削る処置が必要です。差し歯も同様に、健康な歯であっても天然歯を削ることになります。
一方、インプラントは人工歯根で固定するため、残っている歯を削ることもありません。天然歯を削ることは、歯の寿命にも影響すると考えられています。
インプラントのデメリット
多くのメリットがあるインプラントですが、デメリットについても理解することが大切です。
基本的に公的医療保険適用外となる
通常、インプラント治療には公的医療保険が適用されません。自費診療となるうえに治療期間も長いため、費用が高額になります。ご自身の予算についても考慮し、慎重に検討することが大切です。
外科手術が必要になる
人工歯根であるインプラント体を埋入するために外科手術を受けます。体への負担がかかるほか、全身疾患をおもちの方は手術を実施できない場合があります。
インプラント周囲炎のリスクがある
インプラント治療が完了したとした後も、注意すべきポイントがあります。それが、インプラント周囲炎です。
インプラント周囲炎は、インプラント周囲の組織が炎症を起こし、骨の吸収を進行させてしまう病気です。インプラント周りは細菌感染による症状進行が早く、放置するとインプラントが脱落するおそれがあります。
差し歯とインプラントの治療の流れ
それぞれの治療の流れについて確認しましょう。
差し歯治療の流れ
1. 診断・検査
2. 虫歯の部分を削る
3. 根管治療を行う
4. 土台となるコアを入れる
5. 被せ物をセットする
6. 定期メンテナンス
インプラント治療の流れ
1. 初診相談
2. 診断・精密検査
3. インプラント体の埋入手術
4. 治癒期間(インプラント体と骨が結合するのを待つ)
5. インプラントの型取り
6. 被せ物のセット
7. 定期メンテナンス
まとめ
差し歯とインプラントの最大の違いは、歯の有無です。歯根が残っている状態であれば差し歯を検討でき、公的医療保険診療で治療を受けられる場合が多いです。
ただし、歯根が気づかずに虫歯にかかる可能性があるなど、いくつかのデメリットがあることを考慮しなければなりません。
一方、インプラントは自費診療となりますが、機能性・審美性ともに優れている治療です。インプラント周囲炎にならないように注意が必要です。差し歯とインプラントのどちらにするかお悩みでしたら、お気軽に歯科医院へご相談ください。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開