■目次
インプラント治療に危険性はある?歯科医院の選び方
インプラントの成功率は、手術部位や歯科医院の腕で異なりますが約97%といわれています。高い成功率を持つインプラント治療ですが、外科的な処置が必要であり手術に伴うリスクはあります。
インプラント治療を受けて満足している方もいれば、何らかのトラブルを抱えて悩んでいる方もいるのではないでしょうか。インプラント治療を受ける際は、歯科医師任せで決めず、自分自身が納得できた歯科医師のもとで治療を受けるようにしましょう。
インプラント治療前に知っておきたい治療の危険性と歯科医院の選び方を見ていきましょう。
参考:インプラント相談事務局
外科手術を伴う危険性
インプラントを埋め入れる際は、歯茎を切り開いて顎の骨を削る外科手術が必要です。顎の骨の中は神経や血管が走行していて、顎の骨の周りには鼻や舌、首など他の組織と近接しています。
組織を損傷させないように入念な診断や治療計画が必要です。また、創部の汚染や歯の感染症(歯周病、根尖性歯周炎)があると、歯茎の縫合箇所がうまく治らないか、手術箇所が感染する可能性があります。
【歯科医院の選び方】
インプラント治療での失敗リスクを下げるためには、次のことを重視している歯科医院を選ぶと良いでしょう。
・お口の中の状態、全身の健康状態、お口の模型上での検査、レントゲン検査(パノラマやCT)などの精密検査を十分に行っている
・CTで撮影した画像を3D解析ソフトで確認し、お口全体の状態をあらゆる角度から診査している
・公的な学術研究団体に所属し、講習を受けたり、院外の歯科医師と討論したりして、知識や技術を学んでいる
インプラントの品質の危険性
世界中には100種類以上のインプラントが存在し、そのうち国内では30種類以上が使用されています。しかし、これらの製品には品質の良いものからトラブルを抱えているものまでさまざまなものがあります。
インプラント治療は公的医療保険の適用外となり主に自由診療となるため、使用するインプラントの品質に関する明確な規定はありません。
歯科医師の間でも、厚生労働省で認可された製品を使用する者もいますが、未認可の海外製インプラントを導入し、患者さんの同意を得て使用するケースもあります。
【歯科医院の選び方】
どのようなインプラント製品を採用しているのか、カウンセリングの段階等で確認しておくと良いでしょう。インプラント製品のほとんどは、食品と同じように、製品の生産や流通の履歴を明確にする「トレーサビリティ」がついています。ただし、実績のあるインプラントだとしても、一部の製品にトラブルが起こる可能性はあります。
歯科医院によっては、患者さんのどの部位に使用したか製品記録をとり、万が一の事態に備えているところもあります。
→インプラントの種類についてはこちらの記事をご覧ください。
骨と結合しない危険性
稀ではあるものの、骨とインプラントが結合しないことがあります。インプラントがしっかりと結合しない要因として、患者さん骨の質や骨量の不足、インプラントの挿入位置が誤っていた、周囲の炎症や感染、喫煙、強い噛み癖があるなどの口腔習癖(こうくうしゅうへき)、患者さんの健康状態などさまざまな要因が挙げられます。
【歯科医院の選び方】
インプラント治療時のリスクをできる限り抑えるためには、適切な手術技術だけではなく、治療前の患者さんの状態をしっかりと管理することが重要です。特に患者が全身疾患の既往歴を持っている場合、歯科医師とかかりつけ医との連携が不可欠です。
歯科医師は患者の全身状態を十分に把握し、それに基づいて治療を計画および管理することが重要です。インプラント治療を開始する場合は、患者さんの全身状態が治療の成功可否や安全性に影響を与える可能性があります。歯科医師は患者の全身状態を詳細に確認し、必要に応じてかかりつけ医と連携して治療を進めることが重要です。
また、インプラント手術後の適切なセルフケアや歯科医院でのメンテナンスなど、定期的な歯科医院の受診が大切です。
まとめ
インプラント治療は歯を失った人々にとって魅力的な解決策ですが、危険性やリスクもあります。リスクを最小限に抑えるためには、患者さんと歯科医師の十分なコミュニケーションと相互の信頼が重要です。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。