歯がない人ができる治療法3選!メリット・デメリットも解説

虫歯や歯周病の進行、思わぬ事故によって歯を失ってしまうことがあります。歯がないのはとてもショックだと思いますが、口元の見た目や噛み合わせのためにも、代わりの歯を入れる治療を検討しましょう。 歯を失った場合の治療法の紹介と特徴も解説します。歯がなくなったまま放置してしまうと健康を損なう可能性もあるので、どのような治療法があるのか知っておきましょう。

更新日:2024/08/02

■目次

  1. 歯がない人ができる3つの治療法
  2. インプラント
  3. インプラントのメリット
  4. インプラントのデメリット
  5. 入れ歯
  6. 入れ歯のメリット
  7. 入れ歯のデメリット
  8. ブリッジ
  9. ブリッジのメリット
  10. ブリッジのデメリット
  11. 歯がないまま放置する2つのリスク
  12. 隣の歯が傾いてくる
  13. 噛み合う反対側の歯が伸びてくる
  14. まとめ

歯がない人ができる3つの治療法

歯がなくなってしまった場合、新しく歯を補う治療法としては、「インプラント」「入れ歯」「ブリッジ」の3つが挙げられます。それぞれ異なる特徴があるので、患者さん自身がしっかり理解して選択する必要があります。

インプラント

「インプラント」と呼ばれる人工材料を顎骨に埋め入れる治療法です。インプラントは、顎骨に埋入するインプラント体(人工歯根)、歯の部分となる上部構造(人工歯)、上部構造を支えるアバットメント(支台部)の3つのパーツで構成されています。

インプラントの大きな特徴は顎骨の中に人工歯根が埋め込まれることです。チタンという金属が主成分のインプラント体を手術で埋入し、数ヵ月後に顎骨と結合します。

骨とインプラント体が結合したら再び手術でアバットメントを装着し仮歯を装着します。そして、色合いや形を調整した最終的な人工歯を装着し、治療は完了となります。

インプラントは入れ歯やブリッジに比べてしっかりと固定され、固いものも噛めます。また、人工歯を白い素材のセラミックなどにすれば、自然な見た目の口元になって目立ちません。

ただし、インプラントは自費診療で、公的医療保険を適用したブリッジや入れ歯に比べると治療費が高くなるので注意が必要です(自費診療の入れ歯やブリッジの場合、インプラントと同等程度の費用がかかることもあります)。

また、しっかりケアをしなければ歯周病のような症状である「インプラント周囲炎」が起こり、インプラントがぐらついて抜けてしまうおそれがあります。インプラント埋入後もメンテナンスは欠かさず行い、トラブルが起きたら対処するなど自分自身の歯と同じように気にかける必要があります。

インプラントのメリット

・固いものもしっかり噛める
・審美的に優れている
・天然歯を削らずに治療できる
・異物感がなくスムーズに喋れる
・顎の骨が痩せるのを防ぎやすい

インプラントのデメリット

・基本的に自費診療なので治療費が高い
・治療期間が長くなりやすい
・手術が必要
・感染症のリスクが高め

入れ歯

インプラントは費用が高いと感じる方は、公的医療保険を適用した入れ歯を検討していみてはいかがでしょうか。
入れ歯は、主に歯茎の上に乗せる床(しょう)と、人工歯で構成されています。一本も歯がない場合は総入れ歯を作り、1本~数本の歯だけがなくなった場合は部分入れ歯を作ります。

部分入れ歯は、金属のバネを残っている歯に引っ掛けることで固定します。入れ歯は公的医療保険であれば費用を安く抑えることができ、自分で取り外しができるので手軽にケアできます。

しかし、入れ歯は噛む力が天然歯に比べて半分以下ほどと言われており、人によってはしっかり噛めないように感じる場合があります。また、公的医療保険診療は入れ歯を作る材料が限られており、見た目が不自然になったり、装着時に違和感を覚えたりすることがあります。

入れ歯のメリット

・取り外せるためメンテナンスがしやすい
・治療期間が短い
・作り直す場合の経済的な負担が少ない
・公的医療保険適用になる種類もある
・外科手術が不要
・全身疾患をおもちの方や骨が少ないケースにも対応できる

入れ歯のデメリット

・強く噛めない
・外れやすい
・他の歯に固定するためのバネが目立つ場合がある
・装着時の違和感がある

ブリッジ

インプラントはできないけれど入れ歯も避けたい、そんな方はブリッジを検討して見てはいかがでしょうか。

抜けた歯の両隣に残っている歯を削って土台にし、橋をかけるようにして複数の人工歯を被せる治療法です。ブリッジは前後の歯でしっかり固定されるため取り外しができない分、強く噛むことができます。また、公的医療保険を適用したブリッジ治療であれば安価に治療を受けることができます(自費診療の素材を使用したより自然で審美的なブリッジ治療もあります)。

ただし、ブリッジ治療では固定するために健康な歯を大きく削る必要があり、歯の寿命に影響するおそれがあります。さらに、取り外しができないために汚れが溜まりやすく、虫歯になりやすい可能性が高まります。

ブリッジのメリット

・手術が不要
・治療期間が比較的短い
・自分の歯のような感覚で噛める
・違和感が少ない
・取り外す必要がなく、普段の歯磨きでケアできる
・公的医療保険の適用

ブリッジのデメリット

・健康な歯を削る必要がある
・土台となる歯の寿命が縮まりやすい
・公的医療保険の場合、治療する部位によっては銀歯になるので目立ってしまう
・セルフケアが難しい

歯がないまま放置する2つのリスク

もし歯がない状態で放置するとどうなってしまうのでしょうか?

実は、さまざまな健康被害が出てしまう可能性があります。

隣の歯が傾いてくる

歯がないまま過ごしていると、両隣の歯が空いたスペースに向かって傾いてきます。倒れた歯の根元や、隙間ができた歯と歯の間などには汚れが溜まりやすくなり、虫歯や歯周病にかかってしまいます。

これも放置しているとさらに奥の歯も倒れてきて噛み合わせが悪くなり、ほかの歯にも大きな負担がかかります。このような状態になってから治療をしようとすると、ブリッジの場合は余計に歯を大きく削らなければなりません。

インプラントや入れ歯といった治療も充分なスペースを確保できなくなり、両隣の歯を部分矯正で動かすなどの処置が必要になる場合があります。

噛み合う反対側の歯が伸びてくる

歯がない状態を放置することにより、上下の噛み合う歯にも影響が及びます。空いたスペースに噛み合う歯がないことで、噛み合っていた歯が伸びてきてしまいます。これを「対合歯の挺出(ていしゅつ)」といいます。

歯が挺出していくと、本来歯茎の中にあるはずの歯の根が口腔内に露出してしまい、しみたり痛みを感じる原因となります。また、歯の根は歯の白い部分に比べて虫歯になりやすいのです。この状態で治療をするためには、スペースを確保するために伸びた歯を削る場合があります。

歯並びや噛み合わせが悪くなると食事がとれなくなり、胃腸にも負担がかかります。また、よく噛むことが認知症の予防になるといわれており、しっかり噛めない状態が続くと認知症のリスクが高まるといえるでしょう。

噛み合わせのバランスが崩れると骨格が歪むなどの影響も出てきてしまい、頭痛や肩こりなど全身に影響するとも考えられています。

まとめ

歯を失った場合の治療法には、インプラントと入れ歯、そしてブリッジの3つがあります。それぞれ異なる特徴があるので、歯科医師にご自身の希望を伝えながら相談し、しっかり理解したうえで治療法を選択しましょう。

歯が1本ないだけでも、全身に大きな影響を及ぼすことがあります。既に歯がない、または抜歯の予定がある方は、放置せずに歯を失った後の治療を歯科医院に相談し検討してみてくださいね。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開