噛み合わせが悪いとどうなる?7つのリスクや4つの原因、治療方法を解説

「最近、歯が痛んだり、肩こりに悩まされることが増えてきた。噛み合わせがあまり良くないことは数年前から自覚しているが、ひょっとして歯が原因?」そんな風にお考えの方も、いらっしゃるかもしれません。 噛み合わせの悪さは、お口だけでなく、全身に悪影響を及ぼす可能性があります。今回は、歯並びの悪さによって引き起こされる7つのリスク、噛み合わせが悪くなる4つの原因、噛み合わせを治す4種類の治療法を紹介します。

更新日:2024/06/24

■目次

  1. 噛み合わせが悪いとどうなる?引き起こされる7つのリスク
  2. 虫歯・歯周病リスクが高くなる
  3. 噛み合わせがおかしくなる4つの原因
  4. 噛み合わせのセルフチェック方法
  5. まとめ

噛み合わせが悪いとどうなる?引き起こされる7つのリスク

噛み合わせが悪いと、身体のさまざまな箇所に影響が及びます。リスクとしては、以下の7項目です。

虫歯・歯周病リスクが高くなる

噛み合わせが悪いと、お口を閉じることが難しいケースもあり、口呼吸になりやすいのでお口の中が乾燥しやすく唾液が不足します。唾液には抗菌作用があり虫歯や歯周病を防ぐ効果があるため、噛み合わせの悪さが虫歯や歯周病のリスクを高めてしまう可能性があります。

頭痛や肩こり

噛み合わせの悪さは、顎に大きな負担がかかる可能性があり、顎周辺の筋肉や首、肩の筋肉の緊張にもつながります。これらの筋肉が緊張・疲労すると、血行障害が起こります。血行の悪化は頭痛や肩こりを生じさせる可能性があります。

顎関節症

噛み合わせの悪さは、「顎関節症」を引き起こす原因の一つとされています。顎関節症はその名の通りに顎関節に異常があり、口が開きにくくなったり、顎の関節部分の痛みや音が現れ、日常生活に支障をきたす可能性があります。

身体のバランスが崩れる

噛み合わせがズレると、身体(全身)のバランスにズレが生じる恐れがあります。身体のバランスの悪化により、片頭痛・肩こり・腰痛・歩行困難・瞬発力の低下といった症状が出ます。

見た目のコンプレックス

噛み合わせの良し悪しは見た目に大きな影響を与えるため、人前で歯を見せて笑えなくなることがあります。また、噛み合わせの悪さによって、特定の音を発音しにくくなることもあります。

耳鳴り

噛み合わせの悪さによって顎関節症になってしまうと、頭痛や肩こりだけでなく、耳鳴りやめまいが引き起こされることもあります。加えて、手足のしびれ、腰痛、膝関節の痛みといった症状につながることもあります。

胃腸への大きな負担

噛み合わせの悪さにより、食べ物を噛み切れにくくなります。噛み合っている場所が少なく食べ物を噛み砕く咀嚼効率が悪くなるなどが理由です。食べ物が咀嚼されず大きな塊のまま消化器に送られてしまうと、胃腸に大きな負担がかかります。

噛み合わせがおかしくなる4つの原因

噛み合わせが悪くなる要因は、人によってさまざまで、以下の4つの原因があります。

悪癖

日常生活における悪癖は、噛み合わせを悪くする原因の一つです。頬杖、爪噛み、指しゃぶり、うつぶせになって寝るなどの悪癖は、発達に悪影響が出て噛み合わせにも悪影響が出る可能性があります。

歯がない状態の放置

虫歯や歯周病、事故などで歯を失った状態を放置していると、歯が伸び出てきたり、両隣の歯が傾いてくることがあり、歯並びや噛み合わせを悪化させてしまいます。歯を失ってしまった場合は、早期に歯科医院で適切な治療を受ける必要があります。

詰め物や被せ物の適合不良

歯科医院でお口の中を詰め物や被せ物で治療を行った際、うまく適合せずに高さが合っていないと、噛み合わせの悪化を招いてしまいます。詰め物や被せ物の高さに違和感を覚えたときには担当医に相談したうえで高さを調整してもらう必要があります。

遺伝

噛み合わせが両親や祖父母から遺伝することもあります。歯の本数や大きさも遺伝的要因があり、家族の中に噛み合わせが悪い人がいる場合は、子どもや孫も同じように、噛み合わせが悪くなってしまう可能性があります。

噛み合わせがおかしくなったら?4つの治療方法

もし噛み合わせが悪くなってしまったとしても、治療方法があります。。主な治療法は以下の4種類です。

咬合調整(こうごうちょうせい)

咬合調整は、顎関節のズレや不具合を改善するために歯を削って高さを調整し、噛み合わせを安定させていく治療法です。ただし、咬合調整のみで噛み合わせを安定させるのはとても難しいことが多く、歯科医師の技術や知識、患者さんの感覚に頼る要素が大きいため効果を得にくいこともあります。

補綴治療

補綴治療は、入れ歯、ブリッジなどを用いて、失われた歯を補ったり、欠けた歯を修復することによって、噛み合わせを調整していく治療法です。部分的に噛み合わせがズレている人、抜歯後に噛み合わせが悪くなった人、治療費を極力少なくしたい人におすすめです。

矯正治療

矯正治療は、ワイヤーやマウスピースを用いて歯を動かし、歯並びを矯正することによって噛み合わせを改善していく治療法です。噛み合わせだけではなく歯並びにも大きな問題がある人や、噛み合わせの問題が広範囲にわたる人にとっては特に効果的です。

インプラント治療

インプラント治療は、顎骨に埋め込んだ人工歯根の上に人工歯を装着し、見た目や機能性の面で違和感が少ないかたちで歯の補綴(ほてつ)を行う治療法です。矯正治療同様に金額は高いですが、歯を失ってしまった人や、歯の感覚や審美面を重視する人にとっては、特におすすめできる治療法です。

噛み合わせのセルフチェック方法

噛み合わせの良し悪しをチェックするうえでは、大切なポイントがいくつか存在します。まず、「顔や歯並びがきちんと左右対称になっているか」「上下の前歯の中心が一致しているか」といった点は、左右のバランスを把握するうえで重視すべき点となります。

また、「上の歯が下の歯を2-3mm覆っているか」「歯が重なっていたり、歯と歯の間に隙間ができていないか」「上下の前歯が前方に飛び出していたり、逆に引っ込みすぎていないか」という点も、噛み合わせを確認するうえでは重要になります。

「横顔を見た時に、唇が大きく前に出ていたり、逆に引っ込んでいないか」「特定の歯が大きくすり減っていないか」を確認することで、噛み合わせの異常に気づきやすくなります。

まとめ

噛み合わせの悪さを放置すると、虫歯や歯周病のリスクが高くなったり、頭痛や肩こりに悩まされたりと、身体にさまざまな悪影響を及ぼしかねません。噛み合わせの悪さを自覚している場合は、早めに歯科医院に相談し、適切な治療を受けることが重要です。

噛み合わせの治療方法としては、咬合調整、矯正治療、インプラント治療などが挙げられます。ただし、患者さんの噛み合わせの状態や、予算などで受けられる受けられないがあり、検討する必要があります。まずは歯医者に足を運んでみたうえで歯科医師の判断を仰ぐことをおすすめします。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生

国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開