インプラント治療後のメンテナンスのやり方とは?費用や頻度も

インプラント治療は、インプラント埋入後のメンテナンスも必要です。どのような歯科治療でも定期検診は大切ですが、インプラントでも重要です。メンテナンスの意味、内容、費用などについて解説します。

更新日:2024/04/22

■目次

  1. インプラント患者の約4割はメンテナンスを受けていない
  2. メンテナンスをサボるとインプラント周囲炎のリスクが高まる
  3. 歯科医院でのメンテナンスの手順
  4. 1. お口の中の状態の確認
  5. 2. レントゲン検査
  6. 3. 歯磨き指導
  7. 4. クリーニング
  8. 歯科医院でのメンテナンス費用と頻度
  9. メンテナンス費用
  10. メンテナンス頻度
  11. 自宅でのメンテナンスのやり方は?
  12. 1. やわらかめの歯ブラシで磨く
  13. 2. デンタルフロスや歯間ブラシも活用する
  14. 3. 最後にマウスウォッシュを使う
  15. インプラント治療後にメンテナンス以外で注意したい2つのこと
  16. 喫煙
  17. 歯ぎしり・食いしばり
  18. まとめ

インプラント患者の約4割はメンテナンスを受けていない

インプラント治療を受けた方の約4割が、「メンテナンスを受けていない」と回答した調査結果があります。理由としてもっとも多く挙げられたのが「異常や違和感が無い」(34.4%)でした。ほかにも、「歯科医師から指示がなかったから」(27.3%)、「都合が合わなかったから」(25.7%)などの理由が挙げられています。

参考:独立行政法人 国民生活センター 「あなたの歯科インプラントは大丈夫ですか

メンテナンスをサボるとインプラント周囲炎のリスクが高まる

インプラント周囲炎は歯垢(プラーク)に含まれている細菌にインプラント周囲の組織が感染するもので、進行すると粘膜の出血、歯周ポケットが深くなる、インプラントの動揺・脱落などの症状が現れます。メンテナンスをさぼっているとインプラント周囲炎が進行しやすくなり、インプラントを長く使えなくなる恐れがあります。

歯科医院でのメンテナンスの手順

歯科医院で行うメンテナンスはどのようなものなのか、一般的な手順を説明します。

1. お口の中の状態の確認

まずはお口の中をチェックします。インプラントの周囲はもちろんですが、全体の歯並びや噛み合わせにも影響するため、全体を確認していきます。虫歯や歯周病がみつかれば治療も行います。

インプラントをチェックする観点は、インプラント周囲の衛生状態、歯肉の炎症の有無、歯周ポケットの深さ、噛み合わせの状態、インプラントの動揺度、上部構造の破損、歯ぎしりの有無などです。

2. レントゲン検査

インプラントを埋め入れた箇所(顎骨)や残っている歯の歯根の状態などを検査する場合、レントゲン検査をします。上顎にインプラントがある場合、骨の周囲にある空洞(上顎洞)に炎症が起きていないかを確認することもあります。

3. 歯磨き指導

歯科医院でのメンテナンスでは、歯磨きの質を上げるために歯磨き指導も行われます。人それぞれ歯並びや利き手が異なるので、磨き方も個々で違います。正しい磨き方を習得すると、歯垢が溜まりにくい環境になります。指導するスタッフからは磨き残しの多い箇所があれば教えてくれ、効率よく隅々まで磨く方法が提案されます。

4. クリーニング

最後にお口の中をきれいにするPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)が行われます。

PMTCでは、歯科医院専用の器具を使ったクリーニングです。パウダー状の粒子を歯の表面に吹き付けたり、歯石除去などを行います。歯垢や着色なども取れ、PMTC後はお口の中がスッキリして歯面も滑らかになります。

また、歯石除去(スケーリング)ではスケーラーとよばれる器具を使い、歯に付着した歯石を取り除く処置になります。歯石は歯垢が付きやすく歯周病菌の温床となるため、除去することでインプラント周囲炎の予防になります。

歯科医院でのメンテナンス費用と頻度

歯科医院でのメンテナンスは、どれくらいの費用がかかるのでしょうか。また、通院頻度も気になるところです。

メンテナンス費用

インプラント治療は基本的に自費診療になります。そのため、メンテナンスにかかる費用も全額自己負担になります。一般的に、インプラントのメンテナンスにかかる費用は3,000円~10,000円ほどとされています。メンテナンスの内容によっては費用がさらにかかるケースもあります。
ただし、インプラントに関する費用は一般的に医療費控除を受けられます。

2023年7月 株式会社メディカルネット調べ

メンテナンス頻度

メンテナンスを受ける頻度は、一般的に年2~4回ほどとされています。頻繁ではないので、都合に合わせて通院も可能でしょう。

自宅でのメンテナンスのやり方は?

インプラントのメンテナンスは、ご自宅でできることがあります。代表的な方法を見ていきましょう。

1. やわらかめの歯ブラシで磨く

インプラントを使っている方は、「やわらかめ」の歯ブラシを選ぶことをおすすめします。かたい歯ブラシだとインプラントを傷つける恐れがあります。上部構造の表面のほか、歯肉との境目も意識しながら丁寧に磨いてください。歯垢がたまらない状態を保てれば、インプラント周囲炎などのリスクが軽減します。また、研磨剤の入った歯磨き粉を使わないようにすることも大切です。

2. デンタルフロスや歯間ブラシも活用する

先端がブラシのようになっていて細かいところまで磨ける歯間ブラシや、糸を使って歯間の汚れを取り除けるデンタルフロスを使用することで、細かいところを綺麗に磨けます。歯間ブラシはその名のとおり、歯と歯の間の汚れを効率よく取り除けます。歯間の隙間が広いところなどが適しています。また、歯間ブラシが入り込めない狭いところは、デンタルフロスを通すことで汚れを取り除けます。

3. 最後にマウスウォッシュを使う

マウスウォッシュで口をゆすぐことでお口の中が清潔に保たれ、歯周病やインプラント周囲炎などの予防にもつながります。ゆすぐタイミングは、歯垢などを取り除いた歯磨き後がベストです。15~30秒は口の中に含ませ、マウスウォッシュの成分が隅々まで行き渡るようにうがいしましょう。また、使用後30分間は飲食を控えるようにして、マウスウォッシュの効果が薄れないように注意しましょう。

インプラント治療後にメンテナンス以外で注意したい2つのこと

インプラントの寿命に影響する習慣があります。インプラント治療後はメンテナンスを受けることも大切ですが、下記にも注意しましょう。

喫煙

元々、喫煙習慣がある方や歯周病を患っている方は、インプラント寿命が短いといわれています。喫煙者はタバコを吸わない方に比べて歯周病にかかりやすく、インプラントを長期的に使っていくためにはタバコを吸わない方が良いといえるでしょう。喫煙習慣がある場合は、禁煙をするか、できればタバコの本数を減らしていくことをおすすめします。

歯ぎしり・食いしばり

歯ぎしりや食いしばりは人工歯に強い負担をかけてしまいます。歯ぎしりが続くとインプラントの上部構造(人工歯)や部品が破損したり、インプラント周囲炎を引き起こす可能性が高くなります。
歯ぎしりによる影響を和らげる方法としては、睡眠時に装着するナイトガードや、筋肉の緊張を抑制させるボトックス注射などの対策が有効な場合があります。

まとめ

インプラントはメンテナンスが必要になります。インプラントを長く使うためにはメンテナンスが欠かせません。

お口の中の検査やクリーニングを受けることでお口の中を清潔に保つことができ、しっかり噛める機能を維持できます。また、セルフケアをしっかりと継続することも大切です。歯科医院でのメンテナンスをしばらく受けていないという方も、本記事を機会に受診してみてはいかがでしょうか。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。