■目次
- インプラント矯正とは
- インプラント矯正とインプラント治療の違い
- インプラント矯正の4つのメリット
- 歯を大きく動かせる
- 治療期間の短縮につながる
- 抜歯を避けて矯正できる場合がある
- ガミースマイルなどの改善に役立つ
- インプラント矯正の3つのデメリット
- 外科手術が必要
- スクリューが抜け落ちることがある
- 歯根吸収を引き起こす場合がある
- インプラント矯正の費用
- インプラント矯正治療の流れ【3STEP】
- STEP①アンカースクリューを埋め込む
- STEP②歯を動かす
- STEP③アンカースクリューと矯正装置を取り外す
- インプラント矯正がおすすめの人
- インプラント矯正以外の歯列矯正の方法
- マウスピース矯正
- ワイヤー矯正
- まとめ
インプラント矯正とは
小さなネジ(アンカースクリュー)を顎骨に埋め固定源にして歯を移動させるという方法です。使用するスクリューは非常に小さく埋め入れる処置も10分程度で終わります。
インプラント矯正とインプラント治療の違い
通常のインプラント治療は、歯を失ったところにインプラントとよばれる人工歯根を埋め入れて人工歯を上から装着します。
インプラント矯正は矯正治療の一種で使う器具も小さなネジで、ネジを固定源に歯を動かして歯列をきれいに仕上げる治療です。
インプラント矯正の4つのメリット
インプラント矯正にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
歯を大きく動かせる
顎骨にしっかり埋め込んだアンカースクリューが固定源となり、動かしたい歯のみに力をかけやすく、歯を効率的に動かすことができます。
治療期間の短縮につながる
複数の歯をまとめて動かせるメリットもあり、通常の矯正治療に比べてスムーズに歯を動かすことができ、治療期間の短縮につながります。
抜歯を避けて矯正できる場合がある
通常の矯正治療で難しいとされるのは奥歯を後ろに動かしてスペースを作るケースです。親知らずを抜歯してスペースをつくり、奥に全部の歯を動かすという方針を立てる場合もあります。インプラント矯正であればしっかり動かしやすく、親知らず以外の抜歯を避けて矯正治療が受けられる可能性も高くなります。
ガミースマイルなどの改善に役立つ
顎骨の中に歯を押し込むように動かす(圧下する)のは、従来の矯正治療では難しい分類です。インプラント矯正はネジによる固定源が強いため、圧下しやすくなります。笑ったときに歯肉が極端に見えてしまうガミースマイルや、前歯が噛み合わない開咬の改善などにも適しています。
インプラント矯正の3つのデメリット
インプラント矯正もほかの矯正治療と同様、メリットだけでなくデメリットもあります。治療を検討する際にはデメリットもしっかりと把握しておきましょう。
外科手術が必要
アンカースクリューを埋め込むために簡単な外科手術を受けなければなりません。矯正のインプラントは直径が約1.4~mm、長さが約6~10mmと小さいので1mm程度穴を開けて顎の骨に埋め込みます。インプラント治療ほどの大きな手術ではなく、治療後の痛みや腫れはほとんどないといわれています。
スクリューが抜け落ちることがある
通常のインプラント治療は、骨に埋入したインプラントが結合し、アンカースクリューも基本は同様です。スクリュー自体が小さく、治療後にスムーズに抜けるようにしているため、場合によっては治療中にスクリューが抜け落ちてしまう可能性があります。
歯根吸収を引き起こす場合がある
矯正治療中は歯周組織の再生と崩壊が繰り返され歯が動きます。インプラント矯正は大きな力をかけられる一方、歯根吸収のリスクが高まるおそれがあります。歯根吸収によって歯根が短くなると歯がぐらつきます。
インプラント矯正の費用
小さな矯正用のインプラントは1本あたり50,000~100,000円ほどが相場となります。
2023年7月 株式会社メディカルネット調べ
インプラント矯正治療の流れ【3STEP】
インプラント矯正治療がどのような流れで行われていくのか、3STEPで説明します。
STEP①アンカースクリューを埋め込む
アンカースクリューを埋め込むための手術をします。まずは埋めるところに局所麻酔をし、歯肉に小さな穴を開けてアンカースクリューを埋めていきます。手術に要する時間は約10分ほどです。
STEP②歯を動かす
埋入したアンカースクリューと動かしたい歯を、ゴムなどの矯正器具でつなぎます。
STEP③アンカースクリューと矯正装置を取り外す
歯が目的の位置に移動して理想的な歯並びになったら、インプラントを外します。取り外すときの痛みはあまりなく、麻酔をせずに処置する場合もあります。
インプラント矯正がおすすめの人
下記に該当する人はインプラント矯正がおすすめです。ご自身に該当する項目がないかチェックしてみましょう。
・なるべく抜歯をせずに矯正治療を受けたい
・笑ったときに歯肉が極端に見えてしまう(ガミースマイル)
・前歯が噛み合っていない(オープンバイト、開咬)
・治療期間を短くしたい
・歯を大きく移動させる必要がある
・歯を効果的に動かしきれいに仕上げたい
インプラント矯正以外の歯列矯正の方法
インプラント矯正以外の矯正治療についても、どのような特徴があるのか見ていきます。
マウスピース矯正
マウスピース型の矯正装置を装着し、歯を動かしていく方法です。装置は透明なプラスチックで作られているので装着しても目立たないうえ、取り外しできて歯磨きや食事の妨げになりません。自身で装置を時期ごとに取り替えるため、通院回数も軽減されます。ただし、症例によっては適さない場合があります。
ワイヤー矯正
矯正治療のなかではスタンダードなもので、ブラケットという小さな部品を歯に取りつけ、そこにワイヤーを通して歯に力をかける方法になります。一般的な装置は金属で作られており、お口の中が目立ちます。近年は、透明やカラーの装置も用意されており、口元が目立たないタイプもあります。幅広い症例に対応可能です。
まとめ
小さなインプラントを固定源として歯を動かすインプラント矯正は、歯を大きく動かすのに適しており、抜歯を避けられる可能性が高くなります。一方、スクリューが抜け落ちる可能性があるほか、歯根吸収が起きるリスクもあるので注意が必要です。
歯列矯正はお口の状態に合わせて適した方法を選択することが重要です。インプラント矯正に関心がある場合は歯科医師に伝え、ご自身に適切なのかを確認しましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。