■目次
顎関節症とは
顎関節症は、顎の周辺の筋肉や関節に痛みが現れ動かしにくくなったり、開口時に音が鳴る、口が開けにくいなどの状態をいいます。
顎関節には、関節円板とよばれる軟らかい組織があり、口を開け閉めする際に顎関節を構成する側頭骨と下顎骨の間の圧力を緩和させる機能をもっていますが、この関節円板がずれて音や痛み、開口障害が生じることもあります。
顎関節症が悪化すると、顎の関節のすり減りが見られることもあり、頭痛やめまい、耳鳴り、嚥下困難などの症状がみられるようになります。好発年齢は10代~20代で、痛み、開口障害、顎関節音の少なくとも1つ以上の症状が出ていることが顎関節症と診断される基準になります。
顎関節症を発症する原因
顎関節症の原因としてまず挙げられるのが、筋肉の異常です。他に顎関節周囲の組織の問題や関節円板の位置異常などがあります。
また、歯の噛み合わせの異常によって引き起こされることもあります。ただし、噛み合わせのほかにも、多くの要因が絡んで顎関節症を発症するとされています。
生まれつきの骨格の問題や、ストレスや不安による筋肉の緊張、外傷、頬杖やうつ伏せ、食いしばりといった日常生活の習慣なども考えられています。
近年はスマートフォンやパソコンを日常的に使用する人が増加しており、ストレートネックなど姿勢悪化が原因のひとつとも考えられています。
顎関節症の治療方法
小さな音がする程度で痛みを感じないようなケースでは自然寛解することが多く、治療をせず経過観察します。
顎関節症の治療方法は明確になっていません。顎関節症につながりうる頬杖や食いしばりといった原因かもしれないものを取り除き、症状を緩和する対症療法が基本です。
また、マウスピースを装着して、歯や顎にかかる負担を軽減することで顎関節の症状の軽減を図るスプリント療法もあります。
顎関節症でもインプラント治療は受けられる?
顎関節症の症状がある場合でもインプラント治療を受けることは可能です。
ただ、インプラント治療は人工歯根を埋入する手術の際に口を大きく開けている必要があるため、口を開き続けられない場合は手術を受けるのが難しいかもしれません。
口を開けておくための器具もありますが、そもそも口が開かない場合は器具を使うことも難しいことがあります。
事前に歯科医院で治療できるくらい口が開くかどうかを確認してもらい、必要があれば顎関節症の治療を受けて口が開けられるようにしてからインプラント治療を始めましょう。
インプラント治療による顎関節症の悪化を防ぐには
もし、顎関節症であることを歯科医師に伝えずインプラント治療を進めると、治療中に悪化させてしまう可能性があります。治療前に必ず歯科医師に伝えましょう。また、過去に顎関節症の治療を受けて症状が落ち着いていたとしても、インプラント治療により症状が悪化することもありますので伝えておきましょう。
小さな音が鳴る程度の顎関節の症状であっても、インプラントを埋入する手術時に口を大きく開くことで顎に負担がかかり、予想外に症状が悪化するかもしれません。
顎関節症の症状を把握したうえでインプラント治療をできる歯科医師を選ぶなど、より安心してまかせられる歯科医院を探すように努めてみましょう。
まとめ
顎関節症の主な症状は開口障害や顎関節音、痛みですが、悪化すると頭痛やめまいなどの症状が出ることがあります。頬杖や食いしばりなどの悪習慣を改善することで症状が和らぐこともあります。
顎関節症の治療を受けながらインプラント治療を受けることも可能ですので、担当の歯科医師に相談しましょう。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。