■目次
アブセスとは
アブセスとは、組織が壊れたときに膿が溜まってできたもの(膿瘍)のことを指します。
アブセスは全身に発症することがありますが、歯茎にできるアブセスは、赤くニキビのようなものになった膿のできものです。
歯茎にアブセスができる原因は、細菌感染することによる炎症です。
歯周病などにかかると歯茎の奥深いところに汚れが溜まり細菌が増殖し、ひどい炎症が起きて膿ができて歯肉がプクッと膨れ上がるアブセスへとつながります。
似たような症状にサイナストラクトがある
歯肉にプクッとできるニキビのようなものに「サイナストラクト」と呼ばれる(瘻孔(ろうこう)、フィステルとも呼ばれる)ものがあります。アブセスが大きくなると、時間の経過とともにサイナストラクトから膿が出るようになります。
サイナストラクトは、虫歯が進行して神経を抜いた歯や歯の根っこが分岐している部分の炎症が原因でできます。免疫力が下がった際に発生しやすいため、サイナストラクトができると歯や歯周組織の状態が悪くなっていることが多く見られます。
歯の根っこの先端に相当する歯茎にサイナストラクトが出現した場合、歯の根っこに炎症が起きていることがあるので、、歯を削って、神経(歯髄)を除去し、歯の内側からアプローチしていく治療を行うことが一般的です。
アブセスの治療方法
感染によってアブセスができる原因としては歯周病以外に感染根管、歯根破折などがあります。原因や経路によって治療方法が異なります。市販薬では治らず、放置していて治るものでもありません。
歯周病の場合は軽度のものであれば歯磨きを丁寧に行うことで改善することもあります。
歯の根っこの先にできたものは、根管(歯の神経が通る管)に細菌の侵入が原因です。
根管内の細菌をきれいに掃除して治療のために開けた穴を封鎖することにより、アブセスやフィステルが改善していきます。歯根破折は、破折の状態によって適した治療方法を選択します。
破折部位が浅ければ接着して経過観察することがあります。また、歯は縦に折れることが多いのですが、多くの場合抜歯になります。
アブセスはペットの犬や猫にもできる
アブセスは人間だけでなく、ペットにもできます。
良く飼われる犬や猫はケンカでケガすることも多く、傷口から細菌が感染して炎症を起こし、アブセスができる場合があります。
傷口が大きいと3~4日後には膿んでくることもあり、高熱を併発する可能性もあります。
長期化することもあるので、アブセスが大きくなる、長期間治らない場合は動物病院に相談に行くとよいでしょう。
抗生物質や点滴などを行い、場合によっては麻酔下でアブセスを切開・排膿するなどの外科的な治療をすることもあります。
まとめ
アブセスは細菌感染が原因の化膿性炎症によりできた膿です。
似たようなものにサイナストラクトと呼ばれるものもあり、どちらも細菌感染による膿が原因です。
治療方法は、歯周病や虫歯などの原因があるのであれば、その原因を除去することが基本です。痛み止めを服用して自然に治ることはあまり期待できないので、歯科医院で診てもらいましょう。
記事監修
記事監修:古川雄亮
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開