■目次
安さだけで選ばないで!!
インプラント治療は自費診療のため、歯科医院によって値段が大きく違います。
インプラント治療を取り扱う歯科医院の中には、「格安」をアピールしているインプラント治療もありますね。
一般的には高い値段のインプラントを格安で行えるのはなぜなのでしょうか?
理由を知らずに「安いから」というだけで歯科医院を選んでしまうと、後悔やトラブルにつながる可能性が高まります。
インプラントを安さだけで選ばず、まずはインプラント治療が格安で受けられる6つの理由を見ていきましょう。
インプラントが安い理由の6つの要因
①治療費の内訳
まず確認したいのは、提示されているインプラント」の値段に含まれている治療の内訳です。
「インプラント」の値段はインプラント体(顎の骨に埋め込む、歯の根の代わりとなるパーツ)のみの値段かもしれません。
インプラント治療では、インプラント体のほかに、被せ物やインプラント体と被せ物を連結するアバットメントなど様々なパーツが製品により必要です。
さらに、インプラント体を埋め込む手術にも費用が掛かります。
インプラント治療にかかる値段は、歯科医院のホームページなどに表示されている価格よりも高額になるかもしれませんね。
②歯科医師の技術
法律的には、歯科医師免許を所持している歯科医師であれば誰でもインプラント治療を行うことはできます。
インプラント治療を行いたいと考えた歯科医師が、独自で知識やスキルを習得する必要があるのです。
そして、インプラント治療には手術を伴ううえに、顎骨の厚みが薄ければ、量を増やす治療などを受ける必要があります。治療難易度が高く、治療結果には歯科医師の技術や治療経験が大きく影響します。
歯科医師がより高度な知識やスキルを習得するための勉強会や学会への参加には費用がかかることも多く、その分の費用がインプラント治療費には含まれているかもしれません。
逆にあまり勉強会や学会へ参加しなければ、その分値段を安くできるのかもしれませんね。
インプラント治療を始めたばかりの歯科医院では、経験を積むために患者さんを集めようと、安く治療を提供することがあります。
③歯科医院の設備
インプラント治療を安全に行うためには、歯科用CTやインプラント治療を行うための機材に加えて、手術を行うためのオペ室、スタッフの確保、機材を清潔に保つための滅菌機や保管庫など様々な設備が必要です。
上記の特殊な設備はインプラント治療のような高額な治療を患者さんが受けられるように設置される場合が多いです。
インプラントの値段が安い歯科医院では、歯科用CTがなかったり、オペ室ではなく一般の治療を行う歯科用チェアで治療を行うケースが考えられます(必ずしも悪いという訳ではありません)。歯科用CTがない歯科医院で治療を受けて、インプラントにトラブルが起きた際にCTを撮影する場合は別の医療機関を受診する必要があるためトラブルへの対応が遅れたり、インプラント治療の安全性が確保できない可能性があります。
オペ室は必須ではありませんが、オペ室を用意することで整った空調管理や空気中の細菌の感染予防などメリットも多くあり、インプラント治療のために設置する歯科医院も多くなっています。
④インプラントメーカー
インプラントの値段が安い歯科医院では治療にかかるコストを徹底的に抑えるために、材料の安いインプラントを使っている可能性があります。
インプラント(顎の骨に埋め込むインプラント体と被せ物とインプラント体をつなぐアバットメント)を作るメーカーは非常に多く、日本国内で30種類以上のインプラントが治療に使われているといわれています。
30種類以上あるインプラントですが、値段は様々。厚生労働省に認可されているメーカーや信頼性の高いメーカーのインプラントは高く、信頼性が低いメーカーや新規参入のメーカー、海外製の一部メーカーは安い傾向にあります。
安いメーカーが悪いとは限りませんが、国内での使用実績が乏しいインプラントの場合は転院先の歯科医院で対応ができないケースや、トラブルが起きたときに対応できないケース、10年の寿命といわれるインプラントですが実際は10年もたない、などのトラブルが起こる可能性があることを覚えておきましょう。
⑤治療後の保証
インプラントの治療費に治療中や治療後になんらかのトラブルが起きたときの「保証」が含まれているかどうかでも値段が大きく変わります。
保証内容は歯科医院によって異なりますが、
・インプラントの治療で皮膚に麻痺が出た場合の対応や治療費の保証
・〇年以内に被せ物が破損した場合の再作製の保証
・〇年以内にインプラント本体が壊れた場合の保証
・インプラントが脱落した場合の保証
など、インプラント治療中に起こりうるトラブルや、インプラント治療後に起こる可能性が高いトラブルへの保証などがついていれば、安心して治療をうけることができます。
インプラント治療の値段を安く設定している歯科医院ではこうした保証がついていない可能性がありますので、トラブルが起きた際には患者さんが追加費用を払ってトラブルに対応しなくてはいけなくなります。
値段が安いと思って選んだはずなのに、最終的には高額を支払うことになる可能性があります。
⑥被せ物の種類
インプラントは顎骨に埋め込んで終わりではありません。被せ物をインプラントに装着する必要があります。
被せ物にも複数の種類があります。
多くはセラミック(陶器)やジルコニアが使われますが、金属やセラミックとプラスチック混合の被せ物も使用されます。
値段としては、ジルコニア>セラミック>金属やセラミックとプラスチックの混合の順に高くなります。
インプラントの治療費が安く設定されている場合は、以上の6つの理由のいずれか、もしくは複数に当てはまっているのかもしれません。
ただし、インプラント治療の値段を安くすることが決して悪いわけではありません。
上記6つの項目に当てはまっていても、歯科医師がしっかりと責任をもって対応している歯科医院も当然あります。
また、患者さんの金銭的な負担を少しでも減らしてより良い治療を多くの人に受けてもらいたいなどの理念がある歯科医院なのかもしれません。
値段が安いという理由だけで良し悪しを決める必要はありませんが、安いインプラントを探す場合は
・なぜ安いのか
・起こりうるトラブルの説明を受けて理解したか
に気をつけて治療を受けてくださいね!
インプラント治療の費用を抑えるためにできること
安いインプラントのデメリットは避けたいけれど、それでも少しでも安くインプラント治療を受けたい、という人は国の制度を利用し
インプラントの治療費は変わりませんが、「医療費控除」が受けられます。
医療費控除
インプラント治療は噛み合わせの治療より、基本的に医療費控除の対象です。
医療費控除とは、ある年の1月1日から12月31日までの間に10万円以上の医療費を支払った場合に所得控除を受けられる制度のことです。
払った医療費が全額返ってくるわけではありませんが、年収が高ければお金が多く戻ってきます。
医療費控除のためには「確定申告」が必要です。
サラリーマンなどの従業員は確定申告を会社が代わりに行ってくれるので、医療費控除を受ける以外はあまり確定申告する機会はないでしょう。
医療費控除の適用を受けたい場合、会社任せではなく自身で確定申告を行う必要があります。
安いインプラントの場合でも10万円以下になることはまれですので、医療費控除の対象外になることは少ないので安心してください。
(確認のため、お住まいの地域の管轄の税務署から領収書や診断書の確認を求められる可能性はありますので、法律に則り5年間は保管しておきましょう。)
まとめ
インプラント治療費が格安!と宣伝している歯科医院は複数あります。
値段だけでインプラント治療を受ける歯科医院を決めるのは結構デメリットが大きいかもしれません。
なぜ安いのか、安いインプラント治療と高いインプラント治療の違いは何か、安心して治療を受けられる設備が整っているのか、など様々な面からよく確認してみましょう。
入れ歯やブリッジにはしたくない、でもインプラントのために高い値段は払えない、安いなら受けられるからこれでいいや、など消去法で選んでしまうと、後々インプラントが取れるなどのトラブルや後悔につながるかもしれません。
インプラント治療を検討する際には、値段だけでなく、治療の内容や歯科医院もよく比較して納得できる所で治療を受けましょう!
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。
2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。