インプラントに副作用はある? リスク・副作用・トラブル

インプラント治療のメリットは魅力的ですが、伴う副作用やリスク、ネットで目にするトラブルに不安を感じますよね。

インプラント治療は費用が高い分、自分にトラブルが起きてしまった時のことを考えて躊躇ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。

インプラントにはさまざまなリスクがありますが、それぞれのリスクが起こる確率もリスクの度合いも異なります。
まずはインプラント治療の副作用・トラブル・リスクをよく知ってみてください。

更新日:2022/03/28

インプラント 副作用

■目次

  1. インプラントに副作用はある?
  2. 神経の圧迫・損傷
  3. 血管の圧迫・損傷
  4. 術後の腫れ・痛み
  5. オーバーヒートによる骨壊死
  6. インプラント治療の合併症の発症
  7. 副鼻腔炎・蓄膿症
  8. インプラント周囲炎
  9. インプラント治療に使う薬の副作用は?
  10. 鎮痛剤(痛み止め)
  11. 抗生物質
  12. 麻酔
  13. インプラント治療の検査の副作用
  14. レントゲン・CT撮影での被ばく
  15. まとめ

インプラントに副作用はある?

副作用が起こらないよう細心の注意を払って治療を行う歯科医院がほとんどですが、それでも以下のような副作用によるトラブル件数は0にはなっていません。

インプラント治療でよく起こる副作用は以下の通りです。

神経の圧迫・損傷

インプラント 神経損傷

インプラントは顎の骨にインプラント体を埋め込む治療です。
特に下顎の骨の中には、太い神経と血管が通っている「下歯槽管」という空洞があります。

そのため、埋め込んだインプラントが下歯槽管の神経に触れてしまうと、神経が傷ついたり切れてしまうことがあります。
インプラント治療における神経損傷の確率は、厚生労働省によると0.13~8.5%とされています。

近年ではインプラント治療取り扱い歯科医院の多くでCTを導入し、3D画像で神経の位置を確認するなど神経損傷のリスクを低減する努力を行っています。
CT撮影などの精密検査を行っている歯科医院では、神経損傷の確率はもう少し下がると考えてよいでしょう。

神経を損傷すると、口周りや舌の感覚の麻痺やぴりぴりとした痺れが生じます。
インプラントによる神経損傷では、口周りが動かなくなる、味がしなくなることは基本的にはありません。

また、実際に神経に損傷はなくても、インプラントが神経の近くにあり神経を圧迫してしまうと同様の症状が出ることがあります。

もし麻痺などの症状が出た場合は、ATP、ビタミンB12、ステロイドなどの投薬で改善を図ります。
それでも改善が見られない場合は、インプラントの撤去が考えられます。

血管の圧迫・損傷

神経が通っているすぐ近くに、太い血管が通っていることが多いです。

インプラント治療で血管を損傷してしまうと、大量出血を引き起こします。
過去にはインプラント治療における大量出血での死亡事例も報告されていますが、神経損傷が起こる確率が0.13~8.5%ですので、神経に近い血管を損傷する確率も同等程度であると考えられます。

死亡まで至るのは、非常にまれなケースと考えて良いのではないでしょうか。

術後の腫れ・痛み

インプラント 腫れ

インプラント手術後の副作用として最も多いのが、術部の腫れ・痛みです。

歯茎を切り取り、骨を削っているため、多少の痛みと腫れはどうしても生じてしまいます。
埋まっている親知らずを抜いた時と同様、身体が炎症反応を起こすためです。

軽度の腫れや痛みは1~2週間で治まることが多く、大きな副作用としては捉えられていません。
痛み止めを服用して様子を見るケースがほとんどです。

しかし、インプラント手術部位が何らかの原因によって感染してしまうと、腫れや痛みが強く生じてしまいます。
術後感染のリスクを減らすために、インプラント手術後は抗生物質の服用を指示されることがあります。

インプラント手術後は術部周りやお口の中を清潔に保ち、抗生物質を指示通り服用することでリスクの低減を図ります。

腫れや痛みは、骨を増やす手術や上顎洞付近にインプラントを埋め込む手術の場合は強くなる傾向にあります。

オーバーヒートによる骨壊死

インプラント オーバーヒート

インプラントを埋入するときにはドリルで骨を削ります。
この時、骨とドリルが擦れることで摩擦熱が生じ、その熱によって骨がやけどしたような状態を引き起こすことがあります。

オーバーヒートを起こさないよう、ドリルで削る際はドリルの周りに水を注水することで緩和します。
ですが、お口の中の状態によっては水を注水せずに治療を行うことがあり、その場合はオーバーヒートのリスクが高まるでしょう。

また、通常よりも速い回転数で骨を削ったり、ドリルそのものの切れ味が悪いものを使用したときもオーバーヒートを起こす場合があります。

オーバーヒートによる骨壊死は痛み、腫れ、熱感をもたらすだけでなく、インプラントと骨がうまくくっつかなくなる原因でもあります。

インプラント治療の合併症の発症

インプラント 合併症

インプラント手術の後にお口の中の状態が悪いと、インプラント周囲炎などの感染症にかかるリスクがあります。

インプラント治療後に、患者さん自身でお口の中を清潔に保つことがリスクの低減につながります。

また、感染対策がしっかりしていない歯科医院でインプラント治療を受けてしまうと、ほかの患者さんの感染症を移されてしまうことがあります(交差感染といいます)。

感染症は血液や唾液を介して感染するものも多く、インプラント治療に使用される器具がきちんと消毒・滅菌されていないと、ほかの患者さんの菌が術部から入り込んで、感染症を引き起こしてしまいます。

具体的にはC型肝炎やB型肝炎、HIVなどです。
歯科医院では正しい消毒・滅菌が義務付けられていますが、明確な法律などはなく、残念ながら消毒・滅菌が曖昧になっている歯科医院もあるのが現状です。

こればかりは患者さんにできることが少なく、歯科医院の消毒・滅菌に対する意識や実際に行っている対策を確認することだけです。

通常の歯科治療でも気を付けていただきたいポイントですが、外科手術を伴うインプラント治療の際は特に慎重に、歯科医院の感染対策を確認してみていただきたいと思います。

副鼻腔炎・蓄膿症

インプラント 副鼻腔炎

上顎の骨の上には上顎洞とよばれる空洞があります。

埋入したインプラントが上顎洞の骨や粘膜を突き抜けて上顎洞に達してしまうと、感染を起こして副鼻腔炎や蓄膿症になることがあります。

副鼻腔炎になっているかどうかは、CT撮影で確認することができます。
軽度の副鼻腔炎の場合は抗生物質の服用により経過観察を行うこともありますが、重度になってくると耳鼻咽頭科で治療をする必要が出てきます。

ですが、インプラント治療では、意図的に上顎洞へインプラントの一部を突出させるソケットリフトという方法もあります。
インプラント治療による副鼻腔炎は片側のみに症状が出現することが多いので、注意しましょう。

インプラント周囲炎

インプラント 周囲炎

インプラントそのものは虫歯や歯周病にはなりません。
しかし、歯周病に似た「インプラント周囲炎」にかかる可能性があります。

インプラント周囲炎は歯周病同様、歯磨きなどのケアの不足が原因です。

インプラント周囲炎にかかると、インプラントの周りの歯茎が腫れたり、インプラントを支えている歯槽骨が溶けてしまうため、最悪の場合はインプラントが脱落してしまいます。

インプラントを入れた後に続くリスクと言えるでしょう。
ですが、自分自身の歯でも歯周病になるリスクは常にあります。
歯周病と同じと考えると、インプラント特有の大きなリスクとはいえないのではないでしょうか。

定期的なメンテナンスや、毎日のセルフケアをしっかりと行うことでリスクを低減させることができますよ。

インプラント治療に使う薬の副作用は?

インプラント 薬

インプラント治療では外科手術が必要となるため、痛み止めや抗生物質などを服用していただくことがあります。
また、手術の際は麻酔を使うことが大半です。それぞれどのような副作用が考えられるか、ご紹介します。

鎮痛剤(痛み止め)

インプラント手術直後は埋入したところが炎症を起こして痛みや腫れが出たりすることがあるため、鎮痛剤を使用する場合があります。
ロキソニンやロキソプロフェンが処方されることがほとんどです。

鎮痛剤の副作用として、胃や肝臓に負担がかかることがあります。
胃腸が弱い方は、胃薬を同時に処方されることもありますので、事前に相談しておきましょう。

抗生物質

患部が細菌によって化膿するのを防ぐため、殺菌効果のある抗生物質を服用する場合があります。

抗生物質を指示通りに服用せず、飲んだり止めたりを繰り返していると、抗生物質服用の効果が十分に発揮されなくなりますので最後まで飲み切りましょう。
また、抗生物質が効かない細菌が発生することがあります。

麻酔

麻酔の一般的な副作用としては、アドレナリンによる血圧上昇や頻脈が一般的です。
ごくまれですがアナフィラキシーショックの症状(全身紅潮、血圧低下、痒み、呼吸困難、顔面浮腫など)や局所麻酔薬中毒の症状(興奮、頻脈、血圧上昇、無呼吸、心停止など)が出ることがあります。

また、嘔吐や悪心、手足の震えなどが起こる可能性もあります。
静脈内鎮静法というリラックスしながら手術を受けられる治療をする場合、嘔吐によって窒息する可能性もあるため、飲食物の摂取が制限されることがあります。

インプラント治療の検査の副作用

レントゲン・CT撮影での被ばく

インプラント CT

インプラント治療は手術前に歯や骨、神経・血管などの状態を調べるため、レントゲンや歯科CTで検査を受ける歯科医院がほとんどです。
この時に、少量ではありますが、放射線の被ばくを受けることとなります。

具体的には、歯科用CTの場合は1度の撮影でおよそ0.1ミリシーベルト程被ばくします。

人体に問題を起こさない放射線の被ばく量は、年間でおよそ100ミリシーベルトまで。
歯科用CTで撮影をしても、人体に被害の出ない程度の被ばくといえるでしょう。

また、お口全体を撮影できるレントゲンは1度の撮影につきおよそ0.001~0.005ミリシーベルトのため、不安になる必要はありません。

もしも、妊娠中などで被ばくにより慎重になりたい場合は、歯科医師に相談してくださいね。

歯科医院で使用しているCTが「歯科用CT」ではなく「医科用CT」の場合、1度の撮影における被ばく量がやや増加します。
どのCTを使用しているのかは、歯科医院で聞いてみてくださいね。

まとめ

副作用 まとめ

インプラント治療におけるリスク、手術時のトラブルや服用する薬の副作用、さらに検査におけるレントゲン・CT撮影での被ばくについて詳しくまとめました。

インプラント治療にリスクは少なからず存在しますが、きちんと検査を行なって治療を行う歯科医院で治療を受ければ、リスクは低確率です。
インプラント治療による健康被害が出ないことも多いので、あまり心配しすぎない方が良いのかもしれません。

もちろん、気持ちとして不安が拭えないという方もいらっしゃるでしょう。心配なことがあれば、治療を受ける前に歯科医師とのカウンセリングなどを通じて不安を和らげてみてください。

インプラント治療のリスクとメリットの双方をよく確認し、自分にとってよりよい治療を選んでみてくださいね。

記事監修

記事監修:古川雄亮

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。