■目次
インプラント治療に保険が適用される基準
まず、インプラント治療は全ての人に公的医療保険が適用されるわけではありません。
原則は自費診療で、一部条件に当てはまる場合のみ公的医療保険を適用することができます。
インプラント治療に公的医療保険が適用される条件について見ていきましょう。
公的医療保険を適用したインプラント治療は、下記のいずれかに該当し、さらにブリッジや入れ歯といった義歯では機能の回復が難しいと診断された場合である。
・腫瘍や顎骨骨髄炎などの病気、さらには事故による外傷で広範囲にわたって顎骨を喪失した状態
(上顎:1/3以上に渡り顎骨を喪失した場合、および、顎骨欠損により口腔が上顎洞または鼻腔へ繋がっていると診断された場合。
下顎:1/3以上に渡り顎骨を喪失した場合、および、疾患によって下顎を切除したと診断された場合)
・病気や事故により失った顎骨が、骨移植により再建した状態
・保険医療機関の主治医より先天性の疾患と診断され、顎骨の1/3以上が連続して欠損している状態
・顎骨形成不全
・先天性欠損が6歯以上ある
(親知らず以外で生まれつき6本以上の歯が欠損している・あるいは前歯の永久歯に3歯以上生えてこない歯がある)
・先天性欠損が連続して4歯あるいは5歯以上ある
(歯列矯正後も4~5本以上歯が欠損している部分がある)
この条件に当てはまらない場合は、インプラント治療に公的医療保険は適用されません。
診断時点で保険適用か教えてもらうことはできる?
病気や事故による顎骨の欠損はわかりやすく、また入院先の大学病院の口腔外科などで診断してもらえるでしょう。
先天性欠損については、他の歯科医院で抜歯したのか、先天性欠損なのかを見分けることは非常に難しく、公的医療保険が適用されるかどうかを教えてもらえない可能性も十分にあります。
先天性欠損があるとわかっていて、公的医療保険を適用してインプラント治療を受けたい場合は、かかりつけの歯科医院で幼少期のレントゲンやカルテなどをもらっておくと良いでしょう。
インプラント治療はほとんどの場合が公的医療保険は適用されません。
そのため、公的医療保険が適用されるインプラント治療があることを患者さんに説明しない歯科医院も少なくありません。
説明されなかったとすれば、公的医療保険適用ではないと思って良いでしょう。
しかし、公的医療保険を適用したインプラント治療を行っていない歯科医院では、歯科医師は公的医療保険適用になる基準を詳しく知らないケースもあるようです。
不安な場合は、下記の保険適用かもと思ったらどうしたらいい?をご確認ください。
保険を使ってインプラント治療できる医療機関は少ない
公的医療保険が適用になる基準を満たしていても、どこの歯科医院でも保険適用でインプラント治療を受けられるわけではありません。
公的医療保険を適用したインプラント治療ができる医療機関は限られているのです。
その条件とは、
・歯科口腔外科あるいは歯科と標榜している保険医療機関である
・当直体制が完備している
・歯科口腔外科あるいは歯科として5年以上の経験があり、かつ、3年以上のインプラント治療経験がある常勤の歯科医師が2名以上いる
・医療機器や医薬品の安全確保体制が整っている
これらをすべて満たした医療機関が、公的医療保険を適用したインプラント治療ができる施設となります。
治療を受けたいと希望する歯科医院が上記の条件に当てはまらない場合、公的医療保険を適用して治療を受けることを諦めるか、希望の歯科医院での治療を諦めるか、を選択をすることになります。
また、公的医療保険を適用したインプラント治療は、治療方法や被せ物の種類が限られています。
自費診療で提案された治療と同じ治療は受けられないかもしれません。
そちらもよく検討してくださいね。
治療中に保険適用かもと思ったらどうしたらいい?
もしもインプラント治療の途中で「本当は公的医療保険が適用されたかも」思ったら、まずは公的医療保険を適用してインプラント治療ができる医療機関に相談してみましょう。
公的医療医療保険を適用してインプラント治療ができる歯科医院は、適用の基準について詳しく知っています。
治療途中でもお口の状態を診断して、公的医療保険が適用できたかどうかを診断してもらえるでしょう。
治療の段階によっては、公的医療保険適用の治療に切り替えることができるかもしれません。
治療が進んでいると変更できないことも
インプラント治療の進行度合いによっては、公的医療保険適用の治療に切り替えることができない場合もあります。
例えば、既に自費診療分の治療費を支払い、抜歯やインプラントの埋め込み手術を受けている場合です。
日本では、自費診療と公的医療保険の併用は混合診療と呼ばれ、禁止されています。
そのため自費診療で治療を始めてしまっている場合は、途中で切り替えることは難しくなります。
また、対象の治療に対し、公的医療保険を適用できない医療機関で治療を行ってしまった場合は、後から公的医療保険を適用することはできません。
治療を始める前の段階の場合は公的医療保険適用に変更できる可能性がありますので、医療機関でご相談ください。
まとめ
インプラント治療が保険適用される場合もありますが、限定的な条件となっています。
記事を読んでみても自分が当てはまっているかわからない、自分は公的医療保険が適用される気がする、と思う方は公的医療保険を適用してインプラント治療ができる医療機関で相談してみてください。
公的医療保険が適用されないのはわかったけれど、少しでも安くインプラント治療を受けたかった…という方は、医療費控除を忘れないようにしましょう。
過去5年分までは遡って申請できますので、既に支払い済みのインプラント治療も大丈夫。
医療費控除控除についてはこちらを参考にしてみてくださいね。
記事監修
記事監修:古川雄亮
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開