インプラントによる神経損傷が原因? ~術後の痛み・麻痺・痺れ~

インプラント治療後に治療箇所の違和感や痛みが続いている場合、神経が傷付いているかも。

きれいにインプラントが埋め込まれているように見える場合でも、実は骨の中で神経を損傷していることがあるのです。

神経が傷付くとどのような症状が出るのか?
また、インプラント手術が原因の場合にはどのように対処したら良いのか。

インプラントによる神経損傷のリスクについて詳しくご紹介します。

更新日:2022/01/17

インプラントによる神経損傷が原因? ~術後の痛み・麻痺・痺れ~

■目次

  1. インプラント治療が神経を傷付けることはある?
  2. 神経損傷
  3. 神経圧迫
  4. インプラントが神経を傷付けた場合の症状
  5. インプラント術後の痛みは神経を傷付けたせい?
  6. 術後の腫れやあざに神経は関係ない
  7. インプラントで神経が傷ついた場合の対処法
  8. インプラントが神経を傷付ける可能性は低い
  9. 神経損傷のリスクを減らすには?
  10. まとめ

インプラント治療が神経を傷付けることはある?

インプラント治療が神経を傷付けることはある?

インプラント治療をしたら麻痺してしまった、痛みが収まらないなど耳にしたことはありませんか?
それは、インプラントが下顎を通っている「下歯槽神経」を傷付けてしまったことが原因かもしれません。

上顎の場合、インプラントを埋め入れる箇所に神経が通っていることが少なく、上顎の神経が傷付くことは稀です。

ほとんどが下顎の場合、インプラントを埋め入れる箇所に神経が通っているため、神経を傷つけることが多くなります。
下顎の骨の中には下顎管というものがあり、その中には下歯槽神経(および血管)が走行しています。

インプラント 神経損傷

下歯槽神経ですが、親知らず抜歯などの歯科治療やインプラント治療によって損傷される可能性があります。

また、インプラントを埋め入れる箇所によっては、下歯槽神経終末にあるオトガイ神経と呼ばれる神経が傷付くこともあります(下顎の前から数えて4番目や5番目の歯(小臼歯)の下に位置します)。

インプラント治療によって神経に影響を与えるケースは2つあります。

神経損傷

1つ目は、インプラント体を顎の骨に埋め込む際に、神経が切れてしまったり、傷付けてしまうケースです。

インプラントの埋め込みの位置や角度が合っておらず、手術で骨に穴を開ける際にドリルが当たるなどによって損傷させてしまうことがあります。

神経圧迫

2つ目は、手術中のドリリング(顎の骨を削る処置)で強い力が加わる、インプラント体が神経の近くまで到達することで間接的に神経が圧迫されるというケースです。

インプラント体が直接神経を傷付けるわけではありませんが麻痺などの症状が出てしまいます。

インプラントが神経を傷付けた場合の症状

インプラントが神経を傷付けた場合の症状

インプラント治療によって下歯槽神経が傷付いている場合、引き起こされるのは以下のような症状です。

痛み

神経の損傷・圧迫が起こっている箇所に痛みを感じることがあります。

麻痺

左右どちらかの唇から下顎にかけての部分が麻痺し、手で触っても感覚がなかったり、常に少し痺れているような感覚になります。

例えば、インプラント治療を左側の下顎に行われた場合、左だけ麻痺することなどもあり得ます。

痺れ

下唇やオトガイ周辺がピリピリと痺れることもあるのです。

インプラント術後の痛みは神経を傷付けたせい?

インプラント術後の痛みは神経を傷付けたせい?

インプラント手術後に痛みが出ると、インプラント手術が失敗してしまったのか、神経を傷付けてしまったのではないか、と心配になりますよね。
インプラント手術後の痛みが神経を傷付けてしまっているか確認するポイントをご紹介します。

基本的に手術後はジーンとするような痛みが数時間続くでしょう。
麻酔が切れた後の短期的な違和感や痛みが出る程度は、神経損傷の心配はほとんどありません。

ただ痛みには個人差があり、患者さんによっては数日間痛みを感じる方もいます。
一週間以上痛みがあったり、インプラントを埋め込んだ骨の奥の方がズキズキするような場合には、神経損傷の疑いがあるので歯科医院で相談してくださいね。

神経が損傷・圧迫されていても、冷たいものや熱いものでしみる、歯が押される感覚があって痛いといった症状は出ません。

また、手術時に神経に麻酔が入ったり、何かしら刺激を受けたりすることで、一時的に麻痺・痺れの症状が出ることもあります。
ただし神経の損傷や圧迫がなければ、自然に症状は引いていきます。

術後の腫れやあざに神経は関係ない

術後の腫れやあざに神経は関係ない

その他、患部の腫れや皮膚のあざ、内出血や血液をサラサラにするお薬の影響による出血が見られることもありますが、手術後誰にでも起こる得る症状といえます。数週間以内で改善されることが多いです。

ほとんどの場合、時間経過とともに症状は引いていきます。
膿や黒いタンが出る場合には、細菌感染が考えられます。
早めに担当の歯科医師に相談してください。

インプラントで神経が傷ついた場合の対処法

インプラントで神経が傷ついた場合の対処法

神経の損傷・圧迫が疑われる場合、まずCT検査でインプラントとの状態や症状との関係性を確認していきます。

インプラントが関係していれば、症状の程度を患者さんと一緒に慎重に確認し、治療方法を決めて治療を始めます。
神経を傷付けてしまった場合に行う治療は以下の物が代表的ですよ。

神経を修復する治療

神経が切断されているような場合には、縫合や移植手術を行います。
ただし、神経が切断されてから時間が経ってしまっている場合は、できないケースもあるようです。

インプラントの撤去

インプラントが直接神経に触れている場合や、神経を圧迫することで痛みが出ている場合はインプラントを取り除くことが多いようです。

インプラントを取り除き症状がなくなった後は、短いインプラントに交換したり、インプラントを埋め込む位置を変えて再度埋め込むなどの処置が行われます。

神経損傷の治療方法

神経ブロック治療

神経が損傷している場合には、局所麻酔薬を注射する神経ブロック治療を実施します。
早期に対処するほど、症状の軽減を見込むことができ、その後経過観察していきます。

また、症状が軽い場合は、神経修復薬(ビタミンB12やATP(アデノシン三リン酸)など)を服用して改善させることもあります。

歯科医院と話し合う

どのような治療を行うか、現在の症状はどのようなものなのかなどを詳しく担当の歯科医師と話し合う必要があります。

また、治療を行うことで症状が改善することもありますが、改善しない場合や一部症状が残ってしまうこともあります。
その際の歯科医院側の対応や費用・保証なども話し合いましょう。

不安が大きかったり納得がいかなかったりする場合には、セカンドオピニオンも検討してみてくださいね。

インプラントが神経を傷付ける可能性は低い

インプラントが神経を傷付ける可能性は低い

厚生労働省の発表では、「インプラント埋入手術後の下歯槽神経麻痺の調査方法は様々であり、発現率は、0.13%~8.5%と幅広い。 これらの中には、ごく短期間の軽微な一時的な知覚障害も含まれているものと考えられる。」とされています。

ごく短期間の軽微なものも含まれていて8%ならば、可能性としては低いと言えるでしょう。

それでも歯科治療による神経損傷は怖いですよね。
神経損傷のリスクを減らすにはどうしたらいいのかご紹介します。

神経損傷のリスクを減らすには?

神経損傷のリスクを減らすには?

歯科用CTを導入し、神経の位置を三次元で状態を把握する術前診断を行っている歯科医院を選びましょう。

また、術前診断を元にしっかりと治療計画を立て、神経損傷のリスクを減らす工夫をしている歯科医院を選んでみてくださいね。
お口の中の治療は見えない部分も多く、経験や知識も必要です。
クリニック選びで迷っているなら、インプラント治療の経験が豊富な歯科医師やインプラント治療について詳しく解説している歯科医師を選んでみてもいいかもしれません。

まとめ

インプラント治療により神経を傷付けてしまうと、痛み、麻痺、痺れといった症状が出ることがあるのです。

インプラント治療は頻繁に受けるものではないため、不安に感じることもあるでしょう。
もし万が一神経損傷している場合も、早期発見することで効率的な対処ができる可能性もあります。

1人で不安にならず、まずは一度担当の歯科医師に相談してみてくださいね。

記事監修

記事監修:古川雄亮

記事監修:古川雄亮
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開

【PR】フィリップス ソニッケアー
歯科専門家使用率NO.1

フィリップス・ジャパン

あわせて読みたい記事

メディア運用会社について

メディカルネット

株式会社メディカルネット(東証グロース上場)は、より良い歯科医療環境の実現を目指し、インターネットを活用したサービスの提供にとどまらず、歯科医療を取り巻く全ての需要に対して課題解決を行っています。

当サイト「インプラントネット」を通して生活者に有益な医療情報を歯科治療の「理解」と「普及」をテーマに、自分に最適な歯科医院についての情報や、歯の基礎知識、インプラントなどの専門治療の説明など、生活者にとって有益な情報の提供を目指しています。

インプラント歯科医院を探すなら「インプラントネット」

インプラント治療を行なっている歯科医院を、全国から簡単に検索できます。お近くのインプラント歯科医院をお探しの場合にもぜひご活用ください。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。