■目次
インプラント治療の手術解説!どんな手術をして、成功率はどのくらい?
まず、歯科で使用されるインプラントの基本的な構造を説明しますと、下部構造(フィクスチャー・人工歯根)、アバットメント(連結部分)、上部構造(人工歯)の3つに分かれています。
アバットメントはインプラントの下部構造と上部構造を連結する支台部分ですが、インプラントのメーカーによっては下部構造とアバットメントが一体型(1ピースタイプ)になっているものもあります。
アバットメントが下部構造と分かれているものを2ピースタイプと一般的に呼びますが、インプラントを埋め入れるための手術の方法により使用するものが異なります(手術によっては後ほど詳しく解説します)。
インプラント治療の基本的な流れ
・問診(カウンセリング)
・精密検査
・治療計画の説明
・インプラント埋入手術
・仮歯の装着
・最終的な人工歯の装着
・定期的なメンテナンス
インプラントを埋め入れる手術の流れですが、インプラントを埋め入れる箇所に局所麻酔を打ち、歯茎を切開し、顎骨にドリルで穴を開けて、インプラントの下部構造を電動のドライバーを利用して埋入していきます。
また、インプラントが1ピースタイプか2ピースタイプで手術方法が異なり、1ピースタイプの場合はインプラントを埋め入れる手術が1回で終了し、2ピースタイプの場合は手術が2回で終了します。
2ピースタイプの場合に手術が2回必要である理由は、顎の骨とインプラントが結合(オッセオインテグレーション)する期間を設けるために一度歯茎を閉じるからです。
「1ピースタイプのインプラントを使用する方が手術が1回で終わり、メリットが高いのではないか?」と考えた方もいらっしゃるでしょう。インプラントの角度を調整できないデメリットがあるため、適応症例が限られます。
1ピースタイプのインプラントのメリットとしては、パーツが2ピースタイプのようにアバットメントが少なく費用を抑えられる、手術が1回で済むなどがあります。
インプラント治療の成功率はどれくらい?
インプラント治療の成功率(残存率)は10年で90%以上とされています。成功率はインプラントを埋め入れる部位で異なり、術者のインプラント治療の経験や患者の口腔内の状態(顎の骨の厚みや歯周病の既往など)でも異なります。
「インプラントって結構長持ちするんだ」とお思いになった方もいることでしょう。ここで注意して欲しいのは、上記のインプラント治療の成功率の90%は10年後にインプラントがお口の中に残っているものを全て含んでいることです。
インプラントが上手く機能してない、インプラントがグラグラしているなどの問題があったとしても、10年の残存率にカウントされます。インプラントが10年持たずに失敗(脱落)する理由は多々あります。
・埋入部位が目的の位置よりズレた
・顎骨とインプラントが上手く結合しなかった
・インプラントが壊れた
・インプラント周囲が歯周病になった(インプラント周囲炎)
・インプラント治療後も喫煙を続けた(顎の骨との結合を阻害する)
・定期的なメンテナンスを受けなった
もしかすると、インプラント治療の相談を歯科医院にすると10年成功率の話が出てくるかもしれません。患者さんが喫煙をしていたり、インプラント治療を行う歯科医師の経験不足などにより大きく左右されるので、あまりあてにしないようにしましょう。
インプラント治療の手術って時間がかかるの?
インプラント治療の手術時間ですが、埋め入れる部位や本数で変わります。他に全身麻酔(静脈内鎮静法というリラックスして手術を受ける麻酔)をかける、顎の骨を足す骨造成術(ソケットリフト・サイナスリフト)を行うなどによって、変わります。
インプラントを埋め入れる本数が多ければ当然長くなりますし、顎の骨の厚みが薄い場合は骨を足す処置が必要になるため、当然治療時間が長くなります。
インプラントを埋め入れる本数が多く顎の骨を足す処置を行う場合は治療時間も長くなりますので、静脈内鎮静法という全身麻酔をかけて行ってもらうことをおすすめします。
インプラント治療の手術は痛い?手術後も痛かったりするの?
インプラント治療の手術自体は麻酔をかけて行うものなので、術中の痛みは感じません。「手術中の痛みが怖い」という方は上の項で紹介した静脈内鎮静法を受けられる歯科医院でのインプラント治療を検討しましょう。
手術後に多少の腫れや痛みは出ると思います(ただし、インプラント手術の後は特に問題がないことが多いです)。歯科医院から抗生物質や痛み止めを処方されることが一般的ですので、上手く活用しましょう(抗生物質を処方された場合は耐性菌の問題があるので、全て飲み切りましょう)。
もし、インプラント埋入手術の後に数日間痛みが続く、インプラントがグラグラしている、などの症状があれば、すぐにインプラント治療を受けた歯科医院に連絡しましょう。顎骨壊死や上手くインプラントが結合していないなどの問題が生じている可能性があります。
インプラント治療の手術 まとめ
インプラント治療の手術に関して詳しく解説しました。
インプラントをお口の中に入れることにより、しっかりと物を噛むことができ、入れ歯やブリッジなどの処置のように隣の歯を削ったりするなどの処置が不必要になります。一般的に医療保険が適用にならず高額な費用がかかることや定期的なメンテナンスが必要なので、注意しましょう。
インプラント治療を受ける場合、インプラント治療を受けるための必要な検査をきちんと行ってくれる歯科医院で受けるようにしましょう。クリニックによっては、身体全体がリラックスして無意識に近い状態で治療を受けられる麻酔(静脈内鎮静法)をかけて治療してくれるところもあります。歯科恐怖症などで歯科治療を受けることに抵抗のある方は参考にされてください。
本記事の内容は患者さんのお口の中の状況などによって異なる可能性があります。詳しいことはインプラント治療を受ける予定の歯科医院に直接問い合わせください。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開