■目次
差し歯・インプラントそれぞれどんなときに適用できるのかを知ろう!
差し歯と聞いて何を思い浮かべますか?差し歯は、虫歯が歯の根っこまで進行してしまった!
しかし、歯の根っこはまだ残せる(使える)というときにする被せ物のことです。
一方インプラントは歯の根っこを残すことが困難になるほど虫歯が進行していて抜歯した場合や、歯周病で歯が抜けてしまったなどの、歯そのものがない場合に適用できる治療です。
差し歯はどんな構造?
虫歯が進行して、歯の神経まで到達すると虫歯の範囲が大きい分、多く歯質を削らないといけなくなります。さらに、虫歯菌が到達した神経も取り除く治療が必要になってきます。少し削る程度ならば、被せ物をして終了しますが、多くの歯質を削り、神経を取り除いたままでは安定させて歯の被せ物(クラウン)を被せることができません。
そのため、神経があった場所へコアと呼ばれる棒のような支台を差し込んで土台を作り、その上から被せ物をします。上の図のように神経があったところへ土台となるコアが差し込まれるために、差し歯と呼ばれるようになりました。
インプラントはどんな構造?
インプラント治療は、歯が無い場所にインプラント体(チタン製のネジのようなもの)を歯の根っこの代わりに顎骨へ埋め込みます。顎骨と埋め込んだインプラント体がしっかり定着するのを待ち、定着したら上から被せ物を被せます。顎骨にインプラント体が定着するまでに上顎で約4~6ヵ月、下顎で約2~4ヵ月程度かかります。
インプラントは周りの歯に負担をかけずに治療できるので、より天然の歯に近い見た目と噛み心地を得られるという長所があります。しかし基本的に保険は適用されず、自費での診療となるために、治療費が入れ歯やブリッジと比較して高額になってしまいます。
差し歯の治療の流れ
(1)初診・カウンセリング
(2)診断や検査
(3)根管の治療(数回の通院)
(4)コアを入れるための歯の形成
(5)コア・仮の被せ物の装着
(6)被せ物(上部構造)の取り付け・噛み合わせ調整
被せ物を作る前に虫歯の浸食により傷んでしまった、または死んでしまった神経の治療を行います。神経を除去し、歯根の先端へ薬を詰めて可能な限り無菌の状態にします。神経の状態や除去する神経の本数により複数回に分けて治療していくので、治療期間は個人差があります。
神経を除去する治療が終わった後、コアと呼ばれる人工の土台を作ります。被せ物ができるまでの間、仮歯をして過ごします。被せ物が完成したら、噛み合わせの調整を行い終了です。この際に合わない場合は技工士の作り直しや再調整などをする場合が発生することもあります。治療期間は目安として1~2ヵ月程度です。
インプラントの治療の流れ
(1)初診・カウンセリング
(2)診断や検査(*CTによるシミュレーション)
(3)インプラント体の埋め入れ(外科手術)
(4)仮歯の取り付け
(5)被せ物(上部構造)の取り付け
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定期メンテナンス
インプラントの治療の流れですが、上記のように少なくとも5回以上の通院が必要になることが多いです(定期検診を除く)。インプラントは健康な身体でなければ治療を進めるのが難しいため、(2)の診断や検査で全身や口腔内での異常が見つかった場合は、別途治療で異常を治してから次のステップへ進みます。そのため、個人により期間が延びてしまう場合があります。
(3)の外科手術後、インプラント体が骨に結合するまでに時間がかかるので、一般的なインプラントの治療期間は目安として約半年です。
また、インプラントは上部構造を取り付けたら治療は終了ですが、歯科医院へ定期的なメンテナンスが非常に重要となってきます。インプラントが緩んでいないか?炎症が起こっていないか?など定期的にチェックすることでトラブルを防ぎます。
インプラントが骨に結合するまでの期間は?
骨にしっかり結合するまで、一定の期間が必要です。術後すぐには傷口が安定しないため、特にインプラントを入れた部位で硬いものを食べることは極力避けましょう。傷口が治癒したら仮歯を装着するので、食事は普段通りのものを食べられます。
また、タバコはインプラントの失敗要因である歯周病を引き起こしたり、顎骨とインプラント体との結合を妨げたりするなど、インプラント治療の予後不良につながるため、喫煙者はタバコを控えるほうがよいでしょう。
差し歯とインプラントの1本あたりの値段は?
差し歯:保険適用内(3割負担)で5,000~10,000円程度で作れます。
保険適用外であれば100,000~150,000円程度と使用する素材によって変わります。
インプラント:保険適用外です。少なくとも、400,000~500,000円程度かかります。
差し歯とインプラントの見た目は違うの?
差し歯:保険適用内のものは、金属の表面にレジンというプラスチックの素材を貼り付けます。周りの歯の色と比べ目立ちやすく、ある程度の年数が経過すると変色してしまい、歯茎との境目が黒ずんできてしまいます。
保険適用外のものは、セラミックやジルコニアなどの素材を使用します。周りの歯の色と合わせやすく、見た目も自然に仕上がります。汚れが付きにくく変色もほとんどしません。
インプラント:人工歯根の上の被せ物は、差し歯の保険適用外のものと同じ素材を使用するため、見た目が自然に仕上がります。
インプラントの被せ物についてはこちらでもご紹介しています→審美歯科ネット
まとめ
差し歯とインプラントとの違い、お分かりいただけたでしょうか。ポイントをまとめると、
・ 構造が違う
・ 治療期間が違う
・ 値段が違う
・ 見た目が違う
それぞれの特徴や違いを理解していただき、自分のお口の状態やどんな治療を希望するかの参考にしてください。後悔することのないよう、インプラントを専門とする歯科医師や得意とする歯科医師としっかり相談し、納得のいく治療法を選択してください。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。