■目次
■原因その1:インプラント治療後、上顎洞炎を起こしている
鼻の周囲には、鼻腔とつながっている空洞がいくつかあります。その中で、鼻の両脇にある空洞を「上顎洞」といいます。この空間に細菌やウイルスなどが入り込んで炎症を起こすことを「上顎洞炎(じょうがくどうえん)」といい、一般的には副鼻腔炎や蓄膿症とも呼ばれています。
風邪やインフルエンザ、それにアレルギー性鼻炎などを発症すると、上顎洞でも炎症が起きることがあります。こうした鼻を原因とした上顎洞炎を「鼻性上顎洞炎」といいます。
また、上顎洞のすぐ下には、上顎の骨があります。虫歯や歯周病による炎症が上顎洞に達して上顎洞炎を引き起こすケースもあります。このように歯を原因とした上顎洞炎を「歯性上顎洞炎」といいます。歯性上顎洞炎は歯を原因とした炎症なので、歯や歯茎が痛むほか、頭痛や発熱などを伴うことがあります。
インプラント治療では、顎骨にフィクスチャー(人工歯根)を埋め込む手術を行ないます。上顎にフィクスチャーを埋入する際、まれに上顎洞に近い粘膜を傷つけてしまうことがあります。粘膜の傷口が細菌などに感染すると炎症を起こし、上顎洞炎を起こしてしまうおそれがあるのです。
対処法としては、抗生物質で原因となる細菌を減らし抗炎症剤で炎症を緩和させます。症状によっては耳鼻咽頭科などに紹介されることもあり、場合によっては、一度インプラントを取り除くこともあります。
上顎洞炎を放置すると炎症が広がり、中耳炎や気管支炎といった合併症が起きる可能性があるので、早めに相談しましょう。
■原因その2:噛み合わせがずれて頭痛や肩こりを引き起こしている
インプラント治療では、患者さんの骨格などを考慮したうえで最終的な噛み合わせを調整していきます。しかし、治療後に何らかの理由によって噛み合わせが悪くなると、顎骨がずれる顎関節症などを引き起こして頭痛や肩こりに悩まされる可能性もあります。
インプラント治療後に噛み合わせが悪くなる理由のひとつとして、上部構造(人工歯の部分)を固定しているネジが緩んでしまうことが挙げられます。この場合、噛み合わせを確認しながらネジを締めることになります。
顎関節症が原因であれば、スプリントと呼ばれるマウスピースを使った治療で噛み合わせを調整する方法もあります。
こうした治療でも噛み合わせが改善せず、インプラントの埋入した位置などに原因がある場合は、インプラントを取り除き再治療をする可能性もあります。
■原因その3:インプラント周囲炎になっている
インプラント周囲炎とは、インプラントの周りの組織が主に歯周病を原因とする細菌に感染して炎症を起こしている状態です。歯周病にも似ていますが、インプラントそのものは細菌に感染しません。しかし、インプラント周囲炎にかかるとインプラントが動揺し、抜け落ちてしまうことがあります。
インプラント周囲炎は、細菌が多く発生して炎症を起こしている状態です。細菌感染の影響により、頭痛などの症状を引き起こす可能性もあります。
インプラント周囲炎にかかった場合、周囲に付着した歯垢や歯石を除去したり、消毒したりすることにより歯茎を引き締めていきます。すでにインプラント周囲炎が大きく進行している場合は、外科手術によって感染した組織を取り除いたり、インプラントを除去したりすることもあります。
インプラント周囲炎を防ぐためには、細菌が増殖しないよう普段から丁寧に歯磨きをすることや、定期的にメンテナンスを受けることが大切です。
■まとめ
インプラント治療後に頭痛や肩こりに悩まされている場合、いくつかの原因が考えられます。我慢してしまうと、ほかの病気も発症してしまう可能性があるだけではなく、インプラントを除去することになってしまうかもしれません。早めに歯科医師に相談して原因を把握し、対処法を相談しましょう。
この記事で、インプラントに対するあなたの不安が少しでも解消されたら幸いです。
記事監修
歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。