インプラント治療って中断しても大丈夫?中断したことによるリスクとは

何か特別な事情があって、インプラント治療を中断していませんか? インプラント治療は、歯がなくなったところに仮歯を入れる期間があります。そこで治療を中断してしまうと、どのような問題が生じるかご存知でしょうか。 この記事では、仮歯の役割、インプラント治療を中断することのリスクや、かかりつけの歯科医院で治療を受けられない場合の対処法などをご紹介します。

更新日:2021/07/28

■目次

  1. 仮歯のままインプラント治療を中断していませんか?
  2. インプラント治療を中断したときに起こるリスクとは
  3. かかりつけの歯医者に通えなくなったらセカンドオピニオンを利用しましょう
  4. まとめ

仮歯のままインプラント治療を中断していませんか?

まずは、インプラント治療の流れを確認しましょう。(手術を2度行なう「2回法」の場合)
1.インプラントを埋入する手術
2.歯肉を被せ、インプラントが顎骨と結合するのを待つ(仮歯装着)
3.歯肉を開き、アバットメントを取り付ける手術
4.周囲の組織が回復したら、人工歯を取り付ける

上記の2番目のように、埋入したインプラントと顎骨が結合するまで、仮歯のまま長期間を過ごす時期が発生します。個人差がありますが、仮歯の状態で過ごす時期は3~6カ月くらいになるでしょう。

そもそも、仮歯を入れるのにはどのような理由があるのでしょうか?

まず挙げられるのは、見た目の問題です。歯が抜けた状態を見られるのは、あまり良い気持ちではありませんよね。インプラントが顎骨に結合するまでの期間、口元を自然な状態に保つためにも仮歯が必要となります。

特に目立ちやすい前歯であればすぐに仮歯が入りますが、奥歯は状態によって仮歯が入らないケースがあります。奥歯にも仮歯を入れたいという場合は、歯科医師にご相談ください。

また、仮歯には噛み合わせや歯並びが悪くなるのを防ぐ役割もあります。歯がないままだと、周囲の歯がそこへ寄ってくるという性質があるため、仮歯で防止するのです。

仮歯にはこのほかにも、細菌が歯肉に感染しようとするのを防ぐ役割もあります。そして、本物の人工歯を取り付ける前に、歯の感触や噛み合わせなどを確認したい時にも役立ちます。

インプラント治療を中断したときに起こるリスクとは

もし仮歯がある程度機能していたとしても、インプラント治療を中断してそのままにしてしまうリスクは大きなものがあります。どんなリスクがあるのか、紹介します。

仮歯が壊れる・外れる
仮歯はあくまで一時的な人工歯であるため、耐久性が高くありません。また、長期間放置していると外れることもあります。

最終的な人工歯が合わない
主にプラスチックでできている仮歯は摩耗や咬耗しやすく、長期間使っていると歯と歯の間に隙間ができてきます。そうすると、隣の歯や向かい合う歯が寄ってきてしまい、噛み合わせが悪くなります。これにより、最終的にはめる人工歯も合わなくなる可能性があります。

細菌感染
仮歯には細菌感染を防ぐ「ふた」の役割もありますが、摩耗や咬耗することによってヒビが入ってしまうと細菌が隙間から侵入しやすくなってしまいます。

インプラントが外れるリスクがある
仮歯の摩耗や咬耗によって噛み合わせが変わると、噛んだときにインプラントに想定以上の力が加わるおそれがあります。そのため、埋入しているインプラントが外れるリスクが考えられます。

見た目が悪くなる
プラスチック製の仮歯は着色しやすく、ステインや細菌の付着によって審美性を損なうことがあります。

かかりつけの歯医者に通えなくなったらセカンドオピニオンを利用しましょう

インプラント治療を中断してそのまま放置してしまうと、インプラント治療を始める前よりもお口の状態が悪化してしまうことがあります。

何らかの事情でずっとかかりつけの歯科医院に行けなくなってしまい、再び通うのは気が重いということもあるでしょう。もし、いつもの歯科医院へ行けなくなったら、ほかの歯科医院でご相談するようにしてください。

また、かかりつけの歯科医院の言うことに納得できない場合、セカンドオピニオンを利用するのも良いでしょう。

ほかの歯科医院でご相談する場合は、診断書や使用しているインプラント器具の種類などを伝えてください。歯科医師としては現状を正しく把握することで、今後の治療方針を立てられるようになります。

まとめ

インプラント治療を仮歯のままで中断してしまうと、さまざまな健康上のリスクを抱えることになります。場合によっては、治療を始める前よりも悪い状態になるかもしれません。

何らかの事情でかかりつけの歯科医院へ通えないとしても、ほかの歯科医院で相談をすることは何も問題ありません。セカンドオピニオンの利用を検討するなど、治療を最後まで受けることを目標にしましょう。
この記事で、あなたのインプラント治療に対する不安が少しでも解消されたら幸いです。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。