歯周再生療法でインプラントや抜歯を回避できる!?

歯周病が進行してしまうと、歯がグラグラして抜歯という選択肢のみを歯科医師に告げられることもあります。しかし、なるべくなら歯を残したいと多くの患者さんが考えるのではないでしょうか。

グラついてしまった歯を再び安定させる方法として、歯周組織再生療法と呼ばれる治療方法があります。歯を支えている歯槽骨や歯根膜などの歯周組織が回復するよう促していくもので、患者さんの状態によってさまざまな治療方法ですがあります。
歯周組織再生療法の詳しい説明のほか、治療に必要となる費用や期間などについて解説します。

更新日:2021/07/16

歯周病を気にする女性

■目次

  1. 歯周組織再生療法とは
  2. 抜歯が必要、インプラント治療が必要と診断されたとしても歯が残せるかも?
  3. 歯周組織再生療法にかかる費用や期間はどのくらい?
  4. まとめ

歯周組織再生療法とは

歯周組織再生療法

歯周病によって吸収された歯槽骨(歯を支えている骨)などの組織は、歯周病が改善したとしても元の形態には戻りません。もし、歯周病によって骨が歯を支えられなくなった場合、抜歯しなければなりませんが、歯槽骨や周囲の組織を回復させて歯を維持させる治療方法があります。それが、歯周組織再生療法です。

抜歯が必要、インプラント治療が必要と診断されたとしても歯が残せるかも?

歯周ポケットの測定

歯周再生療法はいくつかの種類がありますが、基本的には歯周組織が自力で再生するのを促すための治療方法となります。歯周組織再生療法の種類をご紹介します。

・GTR法
破壊された歯周組織は再生しようとする能力があるものの、歯周病によって失われた歯槽骨の部分には歯茎(歯肉)が再生します。

GTR法は、歯周組織(歯根膜や歯槽骨)が再生するためのスペースを確保し、歯肉が入り込まないようにするための再生療法です。歯周ポケットを清掃してから、メンブレンと呼ばれる膜を設置し、空いたスペースに歯肉が入り込まないようにして新しい歯周組織が再生するのを待ちます。

・エムドゲイン
歯周ポケットの歯垢や歯石を除去したうえで、歯周組織の再生を促す「エムドゲイン・ゲル」という薬剤を注入します。歯周組織が成長するのを誘導するのと同時に、歯肉が入り込むを防ぐ役割を果たします。

・リグロス

リグロスと呼ばれる薬液には細胞を増やす成分が入っており、歯周組織の再生を促進する効果があります。やけどや床ずれなどの治療で、同様の成分の薬剤が使用されています。

フラップ手術(歯肉を切って歯垢や歯石を取り除く手術)をした際、リグロスを患部に投与します。歯周組織では血管が作られ、細胞に栄養が送られるようになります。歯槽骨などの歯周組織が回復します。


歯周組織再生療法によって、歯槽骨などの組織が破壊されてしまった歯を残せる可能性があります。しかし、無条件に歯周組織再生療法を実施できるわけではありません。重度の歯周病の場合、歯槽骨がほとんど残っておらず歯茎と歯がくっついている状態(浮遊歯)の場合、歯周組織再生療法適応外になることもあります。まずは、レントゲン検査や歯周ポケットの深さ
などから患者さんの歯周病の状態を検査し、歯周組織再生療法が可能か診断することになります。

歯周組織再生療法にかかる費用や期間はどのくらい?

抜歯後の歯科医師

できれば抜歯を避けたいと考えている患者さんにとって、歯周組織再生療法は画期的といえるでしょう。それでは、歯周組織再生療法の費用、治療期間などはどれくらいになるのでしょうか?

歯周組織再生療法はその種類によって、保険診療と自費診療があります。具体的な費用や治療期間などは歯科医院の方針によって異なりますが、費用面では保険診療で受けられるリグロスが約1万円(検査費、手術費などを除く)と、比較的低くなります。歯科医院によって具体的な金額は異なります。

GTR法やエムドゲインといった自費診療の治療方法は、材料費だけで1回約2万円します。そのほかに検査費、治療費などがかかり、1つの歯で10万円以上かかることもあります。具体的な費用は、歯科医院で確認するとよいでしょう。

歯周組織の再生を促す治療を受けた場合でも、再生には半年~1年ほどかかります。その後も、再生した組織の状態を保つために定期的にメンテナンスを受けます。

リグロスはフラップ手術の際に行なうことになりますが、フラップ手術に移行するまでに治療や検査が必要になるなど、準備期間が2カ月以上かかることがあります。
ほかの歯周組織再生療法と同様、手術後も定期検診などのケアが必要になります。

まとめ

歯周組織再生療法の手術中

歯周組織を再生させるための治療方法があるとはいえ、すべての症例に対応できるわけではありません。また、症状によっては効果が限定的なケースもあります。

患者さんの状態によっては、思うような効果を得られないという診断結果が出るかもしれません。それでも、ご自身の歯を残すことをご希望されるならば検討してみてはいかがでしょうか。歯周組織再生療法を選択するにしても、治療を受けられないにしても、患者さん自身が納得したうえで次のプロセスへ進むことが大切です。

精密検査の結果や治療法で疑問に思うポイントがあれば、歯科医師に聞くようにしましょう。患者さんの理解や協力があって、歯周再生療法について歯科医師との治療検討がスムーズに進みます。

この記事が、歯周病に対するあなたの不安を少しでも解消できれば幸いです。

記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Nature系のジャーナルに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。

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記事監修

歯科医師 古川雄亮 先生
国立大学歯学部卒業後、大学院において歯のエナメル質の形成に関わる遺伝子研究を行い、アジア諸国で口腔衛生に関連する国際歯科活動にも従事した。歯学博士修了後、南米の外来・訪問歯科診療に参加した。 2019年10月10日Natureに研究論文「HIV感染患児における免疫細胞の数と口腔状態との関連性について」を公開。